(82話)

夜泣きの泉     

ところ     京都市東山区三十三間堂廻り町655

蓮華王院の話である、何処からか現れた白ひげを蓄えた老僧の教えにより、東山から傾斜があった場
所に、井戸を掘った。この井戸に言い伝えられた不思議な霊泉の話である。元の場所ではないが、今
も境内に在る。
「貴賎汲めども尽きず、汲まずとも溢れず」と言う霊泉であったというが、今は枯れた井戸になってし
まった。
伝え聞くものに責任はないと、居直っての話であり、「夜泣きの泉」の話として伝わっている。
蓮華王院の話であるから、当然この御方が主役であろう。千一体の千手観音菩薩を、お堂に安置しな
がらも、後白河法皇は、地蔵信仰も盛んに、毎朝夕の御参りは欠かさなかったらしい。死後に天皇よ
り贈られる、諡(おくりな)の大師号で出てくるのは、少々如何わしいのであるが、慈覚大師円仁作
の地蔵菩薩に、である。
幼少の守仁親王が夜泣きをするのであるが、夜泣きを病としているところ、よほど激しい夜泣きであ
ったのであろう。親王の御付は困り果て、法皇が地蔵菩薩に夜泣き止みの願をかけたら、地蔵尊曰く、
蓮華王院の東にある霊泉を与えよ・・・・・・。
法皇が此れに従ったら、即効、夜泣きはその夜から治まった。
奥の事が世に広まる筈もないが、市井の人々は、この地蔵菩薩を、夜泣き地蔵、霊泉を夜泣きの泉と
呼んだと云い、同じ病を持つ親たちは、地蔵尊に祈願して、霊泉を汲んだという。現在の三十三間堂
辺りは、冷泉があり、ある程度の深さには、塩が出たらしい。
木曽義仲が法住寺殿を襲撃した際、不動明王が身代わりとなって、後白河法皇を救ったとする伝承が有り、
「身代わり不動」の通称で知られる寺も近くにある  『平家物語巻八』

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