(17話)

道成寺の鐘

ところ 左京区岩倉幡枝町妙満寺内

京都国際会議所の北東に位置する妙満寺にあるこの霊鐘。 歌舞伎や長唄で名高い
道成寺物語といえば「鐘」___。だが、この鐘が、京都にあることはあまり知られ
ていないようだ。
怨念の権化となった清姫が安珍ともども焼いた鐘は、妙満寺の寺宝として本堂内の
奥深く伝えられ、ところどころに残した緑青に無気味な物語を秘めている。
今から千数百年前、奥州白河に安珍というたいそう色好みな男がいた。家業は大工
だが、本業はそちのけの女狂い。見るに見かねた父安兵衛もついにはあいそうつか
し勘当。安珍もまた村を逃げ出すはめとなった。
ところが、さすがは??安珍。行きがけの駄賃とばかりに宿場の女郎をそそのかして、
いきな道行き。しかし、それが運のつき、たちまち白河の関で追ってにつかまり、安珍
は袋だたきにあった。
そこへたまたま道りかかったのは、白河の老山伏鎮頭。
「バカなことを。。。。。 本業に身を入れて、仏の助けを。。。。」
鎮頭は”人の道”を説きあかした。さすがはの安珍も罪を悔い。?仏門にはいった。
そこで、熊野へ罪ほろぼしの旅にでかけたのだった。
そんな途中だった。安珍が一夜を過ごした宿の娘、清姫がその美僧ぶりに一目ぼれ
まだ十三歳とわいえ、一度夫を持ったことのある清姫、たちまち安珍にときめ込んでしまった
安珍も、この妖女にかかって発心のざんげ生活もぐらつきがち。
熊野参りをすませて帰ってくる」と、やっとの思いでにげだした。
やがて約束の日がきた。しかし、安珍は清姫のもとには帰らなかった。嫉妬に狂って
夜叉になった清姫、日高川の激流を抜き手を切って泳ぎ渡り、安珍を追った。夢中で
逃げる安珍は六十二段の石段を一気にかけ上がり道成寺へ。
「気違い女に追われている。どこかにかくまって欲しい」
寺僧はとっさの機転で、安珍を鐘堂に導き、梵鐘の中にかくまった。そこへとびこんで
きた髪は乱れ全身ずぶぬれの妖女清姫。一山三百人の寺僧たちは境内へ逃げ出してし
まった。狂った清姫、必死に寺内をさがしまわつた。すると鐘の中からうめき声___
「さては。。。。」
清姫、あたりの枯れ草、枯れ枝を鐘の廻りに積み上げ、火をつけた。鐘は真っ赤に焼け
ただれ、安珍は灰と化してしまった。清姫もまた川に身投げをした。。。。
 
おなじみの話しだが、これには後日談がある。四百数十年たって寺では二代目の鐘を
つくったが、この鐘も安珍、清姫の怨念がこもり、音韻悪く、近隣に悪疫が流行、死者が
続出した。このため怨念解脱のため経力第一の法華経をたよりに妙満寺に納められた
と言う。 寺では毎年4月12日に鐘供養を営んでいる。
妙満寺は頭本法華経宗総本山。室町六条から京都市役所の北側から昭和四十三年に
また現代の地に移された。

HOME *** *** NEXT