(14話)

忠盛燈籠

ところ 東山区八坂神社境内

平忠盛(伊勢平氏)と言えば熊野や瀬戸内海の強大な水軍を支配したり、興福寺の僧兵

の入京をふせいだり、日宋貿易にも関係したり、もののあわれの平家のなかでは、知勇
をもって知られた武将で。。。。。。。
いつもにぎわっている本殿から少し下がった拝殿の南に、なんの変哲もない燈籠、高さ
三メートル。美しい玉垣にかこまれて、いわくあり気たたなずまい。
駒札の由緒書きによれば、「忠盛燈籠」と呼び、源平の昔から、ここに置かれている。
忠盛は正盛の子で、検非違使、左衛門大将、備前守などを歴任、父とともに藤原忠通に
ついて平家の基盤をつくった武将である。
その夜、白河法皇は忠盛を伴って祇園の御所に向っていた。祇園女御に会うため。
彼女はかつて法皇が祇園あたりを通りかかったとき、見染めた女性である。法皇は当時
中宮を失ったばかり。早速に宮中に召し、祇園社の東南に御所を造営、住まわせて通っ
ていたのだった。
法皇と忠盛が祇園に着いたとき、すでに日は落ちて、そのうえ、初夏の雨が音もなく降り
そそぎ一面に暗さだけがひろがった。
「のう忠盛、いやな晩じゃ」
法皇が、ふっとつぶやいた。
と、そのときだった。北の森にぼうっとあかりがついて浮かび出たのは、真っ赤な顔、か
らだに銀のハリを持った怪物___「ややっ? 忠盛、ぬかるまいぞ!!
法皇ははや、長い大刀を引っこ抜いて身構えている。 忠盛は、 といえば、少しも騒がず
目をすかし、
「法皇、 ここはこの 忠盛めにおまかせを !」
いうや、怪物目がけて、石だたみをけった。
怪物と見えたのは、実は祇園の社僧で、折りからの雨にミノをつけ、燈籠に火を入れよ
うとしていた最中。顔が燈明に照らされて燃えるように染まり、雨にぬれたミノが銀のハ
リのように光っていたのだった。
「ご安心ください。何事も御座いません。 さあ、女御の御所へ」
法皇、忠盛の沈着冷静、しかも何事にも恐れぬ勇気に改めて感服、その信望は益々に
高くなったのだった。
一説によると、法皇から下賜された祇園女の子が平清盛とも言われている。

HOME *** *** NEXT