(116話)

尼ヶ池身代わり地蔵

ところ            中京区壬生天池町

発祥は京都で大阪、滋賀等で幼年期過した者には京の夏の風物詩地蔵盆である旧市内の町内
にはお地蔵さんある、地蔵菩薩は中近世以降子供の守り神として信仰されるようになった。ひろ
く知られた伝説によれば、地蔵菩薩が、親より先になくなった子供が賽の河原で苦しんでいるのを
救うという、このことから地蔵祭においては特に子供が地蔵の前に詣り、その加護を祈る習わしに
なっている。
このお地蔵さんは。肩口からクビをバッサリ切りおとされてない、地蔵盆などでこどもたちにかこま
れた、あの親しみ深いお顔がないのが。石の祠には、小さなからだだけが深く沈んでいて、つめ
たい空間をポッカリあけている。そして、その前に、こんどはからだのないクビだけのお地蔵さん
と、また、クビのないお地蔵さんが二体。三条通りから南に入り組んだ路地の奥。かって華やかさ
を誇った跡の、この地に、往時から伝えられるお地蔵というには、あまりにも痛々しい。
平安京朱雀院美しい女官がいた。後宮につかえる身分で、教養も深く、そのうえ信心に厚く、庭内
にまつられた時姫弁才天と地蔵尊にお参りするのが日課、願い事があればまいり、かなえられれ
ば参り、ほとんど欠けることがなかった。
院内では、何時しか評判になり、この美しい女官に思いを寄せる男性は少なくなかった。とりわけ
二人の男性は熱心だった。一人は貴族、一人は身分の低い下級官吏だった。
女官は二人の思いに困惑してしまった。「どちらと結ばれても、一人が傷つく。いっそお地蔵さんが
選んでくだされば------」
そんな彼女の悩みを知らなかったのは下級官吏。「しょせん身分の違うライバル。いくら信心厚い
女性といっても、勝負は決まっている。あんな貴族の妻になるのなら、その前に‥‥
男は女官を殺そうと考えた。そして、ある晩、彼は、朱雀院に忍び入った。彼女はスヤスヤと眠って
いた。
窓からこぼれいる月明かりが美しい寝顔を白く照らしていた。彼はやにわにかくし持った刀を抜く
と、一気にクビをかいた。
「カチン!」「??!」
コロコロと、枕元にころがったのは、血に染まったクビでなくお地蔵さんのクビではないか。女官の信
心に、地蔵尊が身代わりになったのだった。下級官吏は、浅はかな自らの心を悔いて、彼女を諦め
たという。
お地蔵さんは、いま朱雀院跡の妙心寺派福田寺にまつられている。小祠前の二体のお地蔵さんは、
こんな伝説を知ってだれかがおまつりしたのであろう。美しい女官の伝説を知ってか、知らずにかい
まも、小祠前にはお線香とお灯明の絶えることがない。
 
尼ヶ池は,平安京朱雀院の苑地の旧跡と伝える。また竹村俊則『新撰京都名所図会』巻4「尼ヶ池址」
の項には「壬生寺縁起」を引き,壬生寺地蔵尊にこの池の水を汲んで供えた女性の話を記し,この話
が壬生狂言の演目である「桶取」の原話であると記す。ただし現行本「壬生寺縁起」(続群書類聚27)
には見あたらない。碑に壬生寺貫首北川智海の名が出るのは壬生狂言との縁であろう。
「現代史跡に碑が立っている」

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