探偵 神宮寺三郎 横浜港連続殺人事件

そして、電話のベルは鳴った……。

 ある日、新宿・淀橋署の熊野参造のもとを二人の男が訪れた。一人は横浜・加賀山署刑事課長、伊勢崎伸。連れの男は日之出仁、中米航路の貨物船航海士として半年に及ぶ勤務を終え、帰国したばかりだという。
 日之出の話しによれば、バラカ共和国横浜領事館に勤務する、彼の婚約者エバ・クリスティーナが数日前より行方不明になっているとのこと。さらに、彼の心に不安な影を色濃くさせているのが、彼女と同じく領事館に勤務するイリス・ハートが、二日前に横浜の港で水死体となって発見されたことだ。
 イリスの死因は溺死ということだが、二人の女性への加賀山署の捜査には、意外にも外交官特権という難問が立ちふさがり、伊勢崎らの捜査は、最初から暗礁に乗り上げてしまっていた。
 思うにまかせぬ捜査に苛立つ伊勢崎は、警察学校の先輩・熊野に相談を持ちこんだのだった。警察の力を持ってしても困難な事件…。
 しばらく思いをめぐらした熊野は受話器を取り上げ、神宮寺三郎の事務所へダイアルを回した…。

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