スーパードンキーコング

恐ろしいほど風の強い、嵐の夜のこと

「こんな日に限って、嵐になるなんて……ツイてないなぁ。」
ドンキーコングにバナナ倉庫の見張りを言いつけられた、ディディーコングは、恨めしく思っていました。激しい雨に風、おまけに稲光が光ったと思ったら、今度は雷鳴がとどろく。

でも、バナナのことを思えば、こんな見張りさえ平気です。カリウムとビタミンAが豊富なバナナ。「あぁ……、甘くていい香りのする、おいしいバナナ……。」


しかし、悪名高いクレムリンたちがそこまで来ていたのです。クランプ・クレムリンの大群はドンキーのバナナをねらっていました。そして、この嵐の夜、ついにバナナ・ドロボー計画を実行にうつしたのです。稲光に浮かび上がった、爬虫類の牙と爪、そして眼がディディーコングをとらえました。ディディーも得意の横トンボをきって応戦しましたが、なにしろ相手は大群のクレムリンたち。

さすがのカレもついにつかまり、タルに閉じこめられ、ジャングルの茂みに放り込まれてしまいました。
クランプたちはたくさんの荷車にバナナを一本残らず積み込んで、意気揚々と帰っていきました。積みすぎて、転げ落ちたバナナをそこかしこに残しながら……。


翌朝、ドンキーコングは、動転して彼の名を呼ぶ声で目が覚めました。

「静かにしてくれよ、朝っぱらから」と言いながら、樹の上の家から降りてきました。

日差しに目がくらんでいると、「バシーッ!」彼を襲った素早い一撃。ぼーっとしながら、あたりを見ると、年老いた祖父クランキーコングが不機嫌そうに見下ろしていました。クランキーは若かった頃、マリオと闘った元祖ドンキーコングです。
「イッテーなぁ、ちくしょー」
ドンキーが文句を言いかけると、クランキーは「バナナ倉庫に行ってみるがよい」と言い放ちました。

「バッ、バナナが!」

夕べまでそこにあった、黄金色に輝くバナナの山がすっかりなくなっていたのです。そして洞窟の床に残された、たくさんのブーツの足跡。それじゃあディディーは……「ディディーもおらんじゃろう。」クランキーは笑いながら言いました。
「お前が自分の責任を人に押しつけた結果がこれだ。この役立たずのろくでなしめ。わしらの若いころは……」
ドンキーは茫然と立ちつくし、クランキーの言うことなど、耳に入っていませんでした。
「ディディーが……いなくなった……。あのチビ助、いったい……。それにバナナは……」
突然、ドンキーは我に返りました。
「そうだ。こいつはクレムリンのしわざだ。よ〜し、島中追い回して、とられたバナナを一本残らず取り返してやる!」ドンキーは怒りに燃え、吐き捨てるように言いました。
「チビ助ディディーをさがして、バナナの山を見つけだすというのか?」とクランキーはせせら笑いました。
「マヌケなおまえなんぞにやられるクレムリンがいるもんかい。ワシが若かった頃はマリオのヤロウをギッタギッタの……」
「じいさんの説教につきあっている暇はないヒマはない。ディディーはつかまり、オレのバナナは盗まれたんだ。クレムリンのヤツラ、ギッタンギッタンのメッチャクッチャにしてやる……」

言い終らない内にドンキーは、疾風のように駆け出しました。

盗まれたバナナを取り戻すのです!

「まあ、お姫さまを助けるというわけじゃあないが、何とかやってくれることじゃろう。」

ドンキーがジャングルに消えると、クランキーは笑いながら言いました。「若い衆にわしの手助けが必要かもしれんな。」


「しかし、今時の若いもんは……年長者を尊敬するというコトを知らんようじゃ。」

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