リンクの冒険

リンクはガノンとの激しい戦闘の末、ついにガノンを倒し、トライフォースを取り戻し、ゼルダ姫を救い出しました。

しかし、本当にすべてが終わったのでしょうか。

それから季節が何度かめぐりました。



ハイラルは荒廃の一途をたどる一方でした。ガノンの邪悪な心の残した力が、ハイラルの秩序をすっかり乱していたのです。そのうえ、ガノンが倒されたあとも、その一部の手下たちはハイラルに残り、ガノン復活の機会をうかがっていました。

復活の鍵、それはガノンを倒した者――――リンクの血でした。リンクをいけにえにし、その血を灰になったガノンにふりかけることにより、ガノンは復活するのです。

いっぽうリンクは、この小王国に残り、ハイラルの復興に力を貸していましたが、状況はよくありませんでした。

そんなある日、16歳の誕生日を迎えたリンクの左手の甲に、不思議なあざが浮き出てきたのです。そのあざは、まるで王国の紋章のようでした。気になったリンクは、ゼルダ姫の乳母である、インパの元に出かけました。あざを見たインパは、驚き、あわてふためきましたが、冷静さを取り戻すと、リンクを北の城に連れていきました。

北の城には、開かずの扉というものがあり、その開け方を知っているのは、代々王家に仕えるインパの家系を継ぐ者だけでした。インパはリンクの左手をとると、その扉に手の甲を押し当てました。

するとどうでしょう。錠前のはずれる音がして、扉がきしみながらゆっくりと開いていくではありませんか。そして、その部屋の中央には、大きな祭壇があり、そこには美しい女性が横たわっていたのです。

「あのおかたが、初代ゼルダ姫じゃよ」

インパはおちついた口調で話しはじめました。

「リンク、おまえにハイラルに伝わる『ゼルダの伝説』を語らねばならない時がきたようじゃ。

昔、まだハイラルが1つの国だったころ、偉大なる王がトライフォースを使って、ハイラルの秩序を保っておったそうじゃ。しかし王もまた人の子、寿命尽きて亡くなられた。そして、この国の王子が次の国王となり、そのすべてを受け継ぐはずだったのじゃが、トライフォースだけは不完全にしか受け継ぐことができなかったのじゃ。

王子はその足りないものを求めて、ありとあらゆる所を探したが、なかなか見つからなかった。

そんな時、王の側近の魔術師が思わぬ知らせをもってきたのじゃ。

魔術師は、どうやら王は死ぬ前に、この王子の妹の初代ゼルダ姫だけにトライフォースについての何かをしゃべったというのじゃ。さっそく王子はゼルダ姫を問い詰めたのじゃが、姫は決して口を割ろうとしなかった。いっこうに聞き出すことのできない王子にかわり、今度は魔術師が、しゃべらないのなら永遠に眠り続ける魔法をかけるとおどかしたが、それでも姫は、しゃべろうとはしなかったのじゃ。

業を煮やした魔術師は、本当に魔法をかけようとし、おどろいた王子は、呪文を唱えるのをやめさせようとしたが、魔術師は王子をはじきとばし、さらに呪文を唱え続け、そしてとうとう呪文を全部唱え終えてしまったのじゃ。ゼルダ姫は、その場に崩れ落ち、いつ覚めるともない眠りに入ってしまった。と同時に、魔術師もその場に倒れ、絶命していたそうじゃ。

王子は大いに嘆き悲しみ、ゼルダ姫をこの部屋に置いたのじゃ。いつかきっとよみがえることを願ってな。

そして、この悲劇を二度と忘れぬようにと、代々王家に生まれる女の子には、必ず『ゼルダ』と名づけるように命じなさったのじゃ。」

インパは、ゼルダ姫の眠る祭壇の横の台の上より、やはり同じ紋章のある1本の巻物と、6つの小さなクリスタルを取り、リンクに手渡しました。

「リンク、それは偉大なる王が、きたるべき時のために用意しておいたものを、私の一族が代々伝えてきたものじゃ。古代の文字で書き記してあるので今では誰も読めぬが、紋章を持つそなたなら、読むこともできよう。それにはトライフォースを完全なものとする鍵が隠されているという。さあ、読むがいい」

リンクは半信半疑で、巻物に目を通しました。するとどうでしょう。今まで見たこともない文字なのに、まるで文字のほうから語りかけてくるように読むことができるのです。

その巻物には、こんなことが書かれてありました。

『後世のトライフォースを操るものよ。そなたにトライフォースの秘密を伝えよう。トライフォースには、3枚の種類がある。すなわち”力”、”知恵”、そして”勇気”。この3枚のトライフォースを合わせた時、トライフォースはその最大限の力を発揮するのだ。

3枚のうち、”力”と”知恵”の2枚は王国に残すから受け取るがよい。しかし”勇気”のトライフォースは理由あって私が隠した。

トライフォースは誰でも使えるというわけではない。悪しき心を持たぬしっかりとした人格も必要だが、生まれながらの特殊な素質も必要なのだ。残念ながら私のの生きている間に、そのような人物を見つけることはできなかった。それで私はハイラル全土に魔法をかけることにしたのだ。素質を持った人間が道を誤らずに育ち、さまざまな経験を積み、ある年齢に達した時、紋章が現れるようにな。

しかし、もしそれまでに、他の誰かがトライフォースを使えばどうなるだろうか。使い方を誤れば、さまざまな悪を産み出す。

”勇気”のトライフォースは、ハイラルで一番大きい島の”死の谷(デス・バレー)”にある大神殿に隠してある。しかし、そこに入るには、まずハイラルにある6つの神殿で、守護神と戦い、”結界”を解かねばならぬ。これらの守護神は、私が神殿に外敵が侵入するのを防ぐために作ったものだ。そして守護神を倒したら、その奥の石像の額にクリスタルをはめこむのだ。6つの神殿のすべての石像にクリスタルをはめ終わった時”死の谷(デス・バレー)”に張られた”結界”は解け、大神殿に入ることができるようになる。そこでそなたは、最後の守護神と戦うことになる。その守護神を倒してはじめて、トライフォースを手にすることができるのだ。

恐れることなかれ、そなたならきっとトライフォースを得ることができよう。そしてハイラルの希望の光となることを願う』

巻物を読み終わり、ゆっくりと顔を上げるリンクにインパは嘆願した。

「初代ゼルダ姫にかけられた魔法も、トライフォースを使えばきっと解けるはずじゃ。

リンク、お願いじゃ。トライフォースを完全なものにし、姫を救っておくれ。そして、平和なハイラルを取り戻しておくれ」

リンクは無言でうなずくと、祭壇のほうを一目見て部屋を後にしました。

そしてリンクは一人旅立っていきました。左手にマジカルソード、右手にはマジカルシールドを持って。

いっぽうそのころ、ガノンの手下たちは魔界より新たな仲間を呼び寄せ、ガノン復活にむけて動きはじめようとしていたのです……。

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