ドラゴンスレイヤー英雄伝説U
STORY 英雄伝説Tより |
はるかなる昔、いや、もしかしたら遠い未来のことかも知れない。青く美しい海にかこまれたイセルハーサと呼ばれる世界があった。世界のほぼ中央に位置するファーレーン王国はロンウォール島とサースアイ島から成っていた。決して裕福な国とは言えなかったが、心優しきアスエル王の統治のもと、人々は平和な日々を過ごしていた。 ところがある晩、どこからともなく現れたモンスターたちが群れをなし、ルディアの城を襲った。兵士たちは懸命な攻防を試み、混戦状態は日の出までつづいた。ようやくモンスターを追い払い安堵したのもつかの間、ファーレーンには深い悲しみが待っていた。混乱のさなかで国王アスエルが何者かに殺害されていたのである。 それがアクダムの計略だと知る者は誰もいなかった。国王の側近を務めていたアクダムは謎の存在と手を結び、モンスターを操りイセルハーサ全土を手中に治めるくわだてを実行にうつしたのだ。 この時、世継ぎのセリオス王子はわずか六歳―――――。アクダムは悪しき計略どおり摂政を名乗り、王子が十六歳の誕生日を迎えて王位継承の儀式を終えるまでファーレーンの政務を行うことを宣言した。 幼いセリオスはルディアの城を離れサースアイ島のエルアスタの町で養育されることになった。 十年後―――――。セリオスがいよいよ戴冠式を二ヶ月に控えた日、アクダムの真意は明らかになった。エルアスタの町をモンスターが襲ったのだ。教育係のライアスらの決死の庇護でただ一人モンスターの襲撃から逃れたセリオスだが、ルディアの城で待っていたのは、野望の牙をさらけ出したアクダムの姿だった。アクダムは唯一の王位継承者であるセリオスを地下牢に閉じ込め、ファーレーン王国の王座を奪った。 地下牢のセリオスを救出にきた者がいた。リュナンは圧政に対抗するレジスタンスのメンバーだった。ルディアの城を脱出したセリオスは、レジスタンスたちとともに行動することになった。 セリオスはレジスタンスたちと協力してアクダムの手からルディアの城を奪還することに成功した。 だが、ファーレーンから逃れたアクダムが、悪の力をたくわえて、災いの種をまこうとしているのは確実だった。 セリオスのまわりにはかけがえのない仲間たちがつどった。呪文使いの遊び人、ロー。大盗賊の孫、ゲイル。レジスタンスの女闘士ソニア。リュナンは兄たちの悪政を憂うラヌーラの第三王子エリオンだった。誤解やいさかいもあったが、それに打ち勝つだけの友情を胸にアクダムの野望をはばむ旅に出た。 アクダムを追う旅の中で、世界の歴史に関わる幾つかの謎があることを知った。竜の卵。そして、ヨシュア…。セリオスたちは「竜の祭」の司祭バーバラや、カウルの村のシンシアから謎の断片を聞くことができた。 バズヌーンの城でアクダムを追いつめた。邪悪な呪文を駆使するアクダムの攻撃にも、もう、怯むことはなかった。壮絶な死闘の末、セリオスはついに父の仇アクダムを倒した。 しかし、セリオスたちの旅はそれで終ったわけではなかった。太古のイセルハーサを破壊し尽くしたとされる悪神アグニージャが復活を遂げていた。 ある者は「赤き竜」と呼び、また、ある者は「破壊神」と呼んだ。かつて、その業火で世界を一度滅ぼした悪神アグニージャ―――――。 アグニージャの前に立つ四人に、世界の運命を託された。見知らぬ旅人に優しくしてくれた人々、モンスターの犠牲になった仲間たち。様々な人たちの顔が浮かんでは消えた。 セリオス、リュナン、ソニア、ゲイル…。英雄たちの活躍で悪神アグニージャは敗れイセルハーサの世界に平和な日々が戻った。 ともに旅した仲間たちはそれぞれの国に帰り新しい世界の復興につとめた。 セリオスはソルディス王国のディーナと結婚し、父アスエルの跡を継ぎファーレーン王国の王となった。 やがてセリオスとディーナの間には待望の王子が誕生した。王子はアトラスと名付けられた。 月日は瞬くように流れ英雄たちが悪神アグニージャを倒してからはや、二十年がたった―――――。 輝く金の髪と、利発な瞳…。そして、なによりも、父譲りのまっすぐな心。悪を知らないまなざしは、いつも民たちをみつめ、やがて王となる使命に燃えている。人々はアトラス王子を愛し、王子は人々を愛した。ファーレーン王国は、セリオス王という大きな太陽と、アトラス王子という小さな太陽に護られて、ますます栄えた。 そんなある日、イセルハーサ全土を、大地震が襲った。古い建造物が倒壊しに深刻な被害が及んだ。突然の災害に、始めのうちは混乱があったが、人々は力をあわせて復旧に励んだ。 町々は、間もなく元通りになった。……かのように、見えた。 そう、誰も知らなかったのだ。新たな災いが、降りかかろうとしていることを…… |