北斗七星と北極星


 大都会に住んでいたのでは、はじめから星を眺める気になれないかも知れないが、星がよく見えるところに住んでいる者にとっては、北斗七星は馴染みの深い星であろう。

 春の南の夜空は寂しいのであるが、北の方を眺めると、北斗七星が横に広がっている。北斗七星は、六つの2等星と真ん中の一つの3等星で構成されているので、ひしゃくを伏せた形が容易に見てとれる。その桝の部分の端の線を北へ伸ばすと、五倍のところに北極星があるので、北斗七星は北極星を探すのに便利である。この北斗星から北極星を探す方法は、中学生の時に学校で教えられた記憶が残っている。

 17世紀の初めに、ドイツのバイエルが星座の星に明るさの順にギリシャのアルファベット(α・アルファ、β・ベータ、γ・ガンマ、δ・デルタ、・ε・エプシロン、ζ・ゼータ、η・エータ、、、、、)をつけ、それでも足りないときはローマ字のアルファベット(a、b、c....)をつけることを創始し、現在でもそれが行われている。北斗七星は、桝の端の星からギリシャ語のアルファベットの順に符号がつけられている。

そのほかに、アラビア人が熊の体の部分によって名づけた名が使われている。ひしゃくの柄の先から二番目の星には、帯を意味するミザールという名前が付けられている。この星には、すぐ側に5等星のアルコル(馬の乗り手)がある。2等星のミザールを馬と見立てて、アルコルをその乗り手と眺めたのであろう。よい目の持ち主は、高校生のときに近視となった筆者には不可能なのであるが、ミザールとアルコルを見分けることでがきるので、視力の検査に使うことができる。この二重星を望遠鏡で眺めると、ミザールの側に薄緑色の星があり、この二つの星は互いに回りあっている連星である。

 わが国では、北斗七星をひしゃくに見立てているが、西洋ではひしゃくの桝の部分は大熊の胴に、ひしゃくの柄は大熊の尾になぞられていることからわかるように、北斗七星を含む大熊座は大きな星座である。大熊の対になるのは小熊であるが、小熊座は北極星を含む星座で七つの星で構成されており、北斗七星を小さくしたひしゃくの形をしている。小熊座には、2等星が二つ、3等星が一つで、そのほかは小さな星なので、暗いところでないと七つの星を確認するのは難しい。北極星は小熊の尾の先端にある。

 北極星は、真北にあって動かないといわれているが、正確にいうと、天の北極(地球の自転軸を天空へのばしたところ)から、角度で約一度ほど離れている。カメラを北極星に向けて放置した写真を撮ると、北極星は丸い円を描くから、中心から少しずれていることがわかる。

 筆者が天体観測所にいるのは、土曜と日曜である。従って、天体写真を撮れる機会は、毎週二度あることになる。何とか北斗七星の写真を撮りたいと、五週間狙っていたのであるが、ついに天候に恵まれなかった。天体写真は、運がよいかどうかに左右され、準備して待つほかはないのである。(1997.6.29)