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天体望遠鏡には、屈折望遠鏡と反射望遠鏡がある。屈折望遠鏡では、対物レンズの中を光が通過する。これに対して反射望遠鏡では、反射鏡の表面で光を反射させるので、光が鏡の中を通過することはない。したがって反射鏡の材質は何でもよいことになるが、気温の変化に対して膨脹率が少ないものがよい。鏡面が凹面になっているので、素材の厚さが中心と外周では異なるために、温度変化によって鏡画が相似形に変化しないので焦点が乱れるからである。 反射鏡が初めて製作されたころは、金属を素材としていたという。真鍮は磨いた当座は光っているが、すぐに曇るので銀メッキされるようになった。銀メッキも劣化するので、今日ではアルミ・メッキをして、その上にシリコン・コーティングをしている。岡山天体物理観測所の1.88メートル(日本最大)の反射鏡は、コーティングはせずに、毎年梅雨時にメッキをしているという。アマチュア天文家は、そんなぜい沢は許されないので、 10年間はもつというシリコン・コーティングでメッキの寿命を延ばしているわけである。 英語では、屈折望遠鏡の対物レンズをレンズ(lens)、反射鏡は反射鏡は鏡(mirror)と区別しているが、わが国では反射鏡もレンズと呼ばれることがある。 世界で最初に望遠鏡で星を観測したのは、イタリアのガリレオ・ガリレイ(1564-1642)で、そのときの望遠鏡は屈折望遠鏡であった。そして、天の川が星の集団であることや、木星の四つの衛星(ガリレオ衛星という)、金星の満ち欠けなどを発見した。反射望遠鏡を最初に組み立てたのは、万有引力で有名なアイザック・ニュートン(1642-1727)である。 屈折望遠鏡と反射望遠鏡には、天体観測をする場合にそれぞれ長短があるが、アマチュアが研磨できるのは反射鏡である。屈折望遠鏡の対物レンズでは、色収差を除くために性質の異なる二種のガラス(普通はフリント・ガラスとクラウン・ガラス)を用いるので、四面を磨かなければならないのに対して、反射鏡では一面だけを磨けばよい。しかも、反射鏡の研磨では、フーコー・テストという操作が簡単なのに精度のよい鏡を磨けるテスト法があるので、素人でも挑戦できる。フーコー(レオン、1819-1868)というのは人名で、地球の自転を実証した「フーコーの振り子]で有名な天文学者である。 レンズは、大きくなるとひずみのないガラスを鋳造するのが難しい上に、望遠鏡のレンズとして用いるときに自重によるゆがみが出るのを防げないので、世界最大でも102センチの屈折望遠鏡(米国のヤーキス天文台)しか建設されなかった。それ以上の巨大な望遠鏡は反射鏡を用いており、 1929年に建設された米国のパロマ山の口径が200インチ(約五メートル)の望遠鏡も反射望遠鏡である。わが国が四〇〇億円の予算でハワイのマウナケア山頂(標高4200メートル)に建設中のスバル望遠鏡も、口径8.2メートルの反射鏡を用いている。(1997.4.6) |