重星と連星


 星の中には、肉眼でも二つの星が接近して見えるものがあるが、望遠鏡で見てはじめて二つに分かれるものがある。このように二つ以上の恒星が接近して見えるものを重星という。二つの星の場合を二重星といい、三個、四個と数が増えるに従って三重星、四重星と呼び、 一般には多重星といっている。

 北斗七星の柄の先から二番目のミザールは2等星で、5等星のアルコルがついていて、昔は視力の検査に使われたと「北斗七星と北極星」(20回)に述べたが、ミザールとアルコルは、地球から見てたまたま同じ方向に見えるだけであって、地球から二つの星までの距離は異なっている。このような重星を見かけの重星とか、光学的重星と呼んでいる。

 見かけの重星に対して、引力によって共通の重心の周りをお互いに公転している重星を連星という。重星の中で、望遠鏡などによって二個の恒星に分離して見えるものを「実視連星」といい、一般には明るい方を主星、暗い方を伴星と呼んでいる。恒星の中で連星となっているものは多い。例えば、太陽から17光年の範囲内には太陽を含めて60個の恒星があるが、そのうち28個が連星または多重連星である。そのほかに、新星型変光星やX線星なども、大部分が連星であると考えられている。

 三個以上の恒星が軌道運動をしているものを、この個数に応じて三重連星、四重連星などと呼び、多重連星と呼ぶこともある。ふたご座のカストルは、六重連星である。もしも太陽系で木星や土星の質量が大きくなってその中心部分で核融合反応が起こっていれば、太陽、木星、土星の三重連星ということになり、地球は三つの恒星に照らさられ、公転の軌道は複雑になったであろう。

 実視連星では、見かけの軌道のゆがみから、軌道面の視線方向に対する傾斜角が決定できるので、そこまでの距離がわかれば、二つの星の離角を軌道長半径の実距離に換算することができ、二つの星の質量が計算できる。

 連星には、分光連星と呼ばれているものもある。二つの星が接近していて望遠鏡では分離して見えなくても、分光器によるスペクトル吸収線から検出されるものである。おとめ座のスピカや、ぎょしや座のカペラがその例である。北極星は実視連星であるが、その主星はさらに分光連星となっている。

 このほかに、食連星というのもあり、二つの星が軌道運動をしながらお互いに相手を隠しあうもので、食変光星と呼ばれることもある。この場合の食は、日食や月食の食と同じく蝕の代用で、一つの天体が背面に他の天体を隠す現象をいう。

 分光連星と食連星の周期は、数日以下の短いものが多いのに対して、実視連星の周期は長いものが多い。全天一明るいシリウス(大犬座)は、周期が50年で、マイナス1.5等星と10等星の連星系を構成している。(1997.10.5)