邪聖レビュー

 邪聖剣ネクロマンサーは影と光が交錯する。そんな素晴らしいゲームを聖と邪に分けてレビューしてみた。


■ 聖(プラス思考)

ネクロマンサーは88年のゲームである。大昔のゲームながら、2000年になろうかという近年のRPGはシナリオと3DCGにウェイトが置かれていて、ゲームをしているというより、動く紙芝居を見ているようなゲームが多い中、ラスボスを倒す主シナリオ、ボスを倒すためのアイテムを集めるという単純明解な副シナリオ、加えて一本道なので道に迷うことはなく、あくまでもシナリオは副産物という主眼で捉えたRPGに仕上がっている。敵との戦闘がたたかう、にげる等簡略にまとめられていてコマンドがシンプル。ROMなので戦闘の読み込みが高速、かつ、下手な3D表示は一切行わないため戦闘シーンは始終とても軽快。魔法のフラッシュ効果と効果音の組み合わせが良くできていて、戦闘が軽快で楽しいのでシナリオを主眼に置いているRPGと違い、経験値稼ぎが苦にならないどころかかえって楽しい。

ゲームが進んでくると、自分が現在いる大陸で最強状態まで極めていても、次の大陸の敵はもっと強いという強さのインフレが激しいことに気づく。適当にレベルを上げて適当にすすめれば適当な強さの敵と適当に戦える今日ありがちな適当を並べつけるようなヌルイゲームとは全く違い、レベルを上げて常に自分を鍛え、次の町で本気で戦闘しないと全滅するというスリリングな展開を次の町に行く毎に楽しめるという、飴と鞭の絶妙なバランスを持っているため飽きることがない。このような自分の強さの変化がレベルアップや武器、防具により顕著に表れるので次のレベルアップが待ち遠しく、次の武器を買うのが楽しい。

パスワード方式を採用しているのも好感が持てる。プレイヤーの意図に反し、勝手に消えてしまうバックアップRAMと違って、紙という半永久媒体に、好きなだけのセーブデータを書き留めておけるのだ。ノートを用意すれば100や200個のセーブデータを半永久的に保存、かつ他のROMカードでも互換性があるので大変便利。今でも昔鍛えたいろいろなパーティを呼び出して遊べるのは、セーブデータが数箇所残っているためである。

後半、ネクロマンサー、あるいはレジェルダーという驚異的な威力の剣を持たない限り戦士系には忍耐を要求されるが、自分が弱いという困難にうち耐えて、ネクロマンサーを手に入れたときの感動。これはとても言葉では言い表せない素晴らしさがある。しかも、この感動はゲームをプレイする毎に何度も味わえるので、クリア後、他のパーティに変えて何度でも遊べる。シナリオが短いのも一役買っている。無暗に長いと2度とやる気は起こらないだろう。パーティの構成もマイストの複数回攻撃、ロミナの箱入り娘、ライム、カオスの強力な魔法、バロンの強力な攻撃力など、パーティの組み合わせにより強烈な個性を肌で感じて楽しめる。

エンディングでの意味ありげなネクロマンサーを掘り返すシーン。とてもあっさりしたものだが、続編はどうなるのか、ネクロマンサーを敵が装備したらどうなるのか、この剣を作った神と悪魔はどうしているのか等いろいろとユーザーの想像力により、エンディング後の展開がユーザーの好みに任されているという、ユーザーを主体にしたエンディングで締めくくっているのが良い。

このようにネクロマンサーは素晴らしき要素が大量にちりばめられた優良なゲームなのである。

■ 邪(マイナス思考)

ネクロマンサーは88年のゲームである。大昔のゲームなので、2000年になろうかという近年のRPGと比べシナリオが手抜きくさいのと古臭い2DCGで、ビジュアル面でも全く楽しくない。血を吹くRPGは今どきでも珍しく価値があるが、血が吹いたからどうだというのだろう。しかも植物や木も赤い血を吹くといういいかげんさ。ビジュアル面はさておき、戦闘はかなり辛い。特に経験値稼ぎが一番辛い。何故なら昔ありがちな戦闘でシナリオの希薄さをごまかしているシステムなので、黙々と作業的経験値稼ぎをすることになるからだ。敵の強さのバランスは悪く、海に行こうものなら瞬殺。海の敵は強めという設定ではあるが、海以外の敵は普通にダメージを与えられるのに海の敵は攻撃が効かないほどの強さで、強め以前に、まともに太刀打ちできないほどかなり強い。このゲームのバランスというものを疑いたくなる。コマンドもたたかう、にげる等しかなく、たたかうで必殺技等が一切なく、画面効果にしても魔法を使うと画面が光るだけという極めてチープな戦闘システムでここまでくるとすでに嫌気がさしてきて止めたくなってくる。

ゲームが進んでくると、自分が現在いる大陸で最強状態まで極めていても、次の大陸の敵はもっと強いという強さのインフレが激しいことに気づく。面倒くさい作業的経験値稼ぎを行ってちょっとレベルを上げてもこの体たらく。敵とのバランスがいいかげんすぎる。敵があまりにも強く、またこの現在地で弱すぎる敵をチマチマいじめて経験値稼ぐ必要があるので面倒くさい。次の町へは逃げるように進んでいくほうがいいという有り様。これが町に行く毎にあるので、ゲームからも逃げたくなってくる。

パスワード方式を採用しているのも嫌気が増強される。ひらがなだけならまだしも、カタカナ、英数字を織り交ぜた、書いた本人でも、何を書いたか分からなくなるほど摩訶不思議な長いパスワード。しかも、この復活の呪文を間違うと恐怖のあまり発狂する。こんなところにまでクトゥルー神話を持ち込むとは素晴らし過ぎて開いた口が塞がらない。パスワードを厳密にチェックするシステムのくせに、適当にランダムな文字を打っているだけでゲームが始ることの方が多いという前代未聞のパスワードシステムには脱帽。

後半、ネクロマンサー、あるいはレジェルダーという驚異的な威力の剣を持たない限り戦士系には忍耐を要求されるが、自分が弱いという困難にうち耐えて、ネクロマンサーを手に入れたときの感動・・・なんてするわけがない。単にゲームバランスがメチャクチャなだけで、ネクロマンサーと通常の武器のあまりの攻撃力の差に今までの苦労を思うと脱力感のほうが強い。ここまで酷いとここでいいかげんに止めたくなるが、やっとまともに戦闘できるようになったので、ここで投げたら惜しいという、満塁で狙ってビーンボールを投げられたような悪夢のシステムから逃れるには相当の勇気がいるので止めるに止められない。クリアしたら速効、売却もしくは焼却の刑にしてやろうと心に誓えてしまう瞬間である。

やっとエンディングまで行けて、この悪夢が終わったと思ったら。これまたチープなエンディングで本当にPCエンジンのエンディングかと疑いたくなる。しかも、エンディングでの意味ありげなネクロマンサーを掘り返すシーン。続編はどうなるのか、ネクロマンサーを敵が装備したらどうなるのか、この剣を作った神と悪魔はどうしているのか等いろいろとユーザーの想像力により、エンディング後の展開がユーザーの好きなように構築できるが、実際ネクロマンサー2というのは出てなく、そしてこれからも出ないと思われる。これで完結させることにより、結末を闇に葬ってシナリオの希薄さを隠しているつもりなのだろう。ここまで付き合ってやった自分に嫌気がさして哀愁が漂ってくるシーンである。

このようにネクロマンサーはマイナスの要素が大量にちりばめられたとんでもない代物なのである。

 

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