[複式催眠鏡」 お宝発見!14年6月増刊号第52巻





今回は、おもしろ道具のページで紹介していた「複式催眠球」です。

説明書によれば、農商務省特許局実用新案登録済とあり、
誰でも此の球を使用すれば
催眠術をかけることができるというものです。

東京市芝區琴平町三番地 複式催眠球製作販売所
精神研究會 電話新橋一八七五番 振替東京二三五一番とも書いてあります。

なにか胡散臭い感じのするところが、「おもしろい道具」と思ったのです。

今回、
岐阜県博物館の南本さんからお話を頂き、

下記の特別展
『奇なるものへの挑戦』に展示されることとなりました。

展示は終了しています。

 
岐阜県博物館
  特別展
 奇なるものへの挑戦 
 明治大正/異端の科学  2014 7/4(金)〜8/31(日)
http://www.gifu-kenpaku.jp/
 
明治大正期心霊学や催眠術が千里眼ブーム
まきおこし、精神療法・霊術が
大流行しました。
超常現象に挑んだ郷土の先人の足跡から知られざる
近代史をひも解きます。

あらためて、調べて見たところ、製作した『精神研究会』
当時の時代背景などが解ってきてうれしく思います。

この
「複式催眠球」の前に「催眠擬視球」という、球が一つのものがあったようです。

明治40年5月30日大日本催眠術協会発行の「新式簡明催眠術教科書中巻」 
古屋鉄石 著 
「催眠術療法」 一名催眠術自宅療法に載っている広告には、
催眠術家必携『催眠擬視球』分譲所 大日本催眠術協会商務部

1. 此の球は殊
(こと)催眠術専用の具にして、美麗高尚なるを以て
  患者が
医師の聴診器に対する観念の如く、被術者が施術者催眠擬視球
  
接すれば
信仰心治療上の効果著しこと

1.球は
金属製なるを以て壊はるゝ處なく、一個儒むれば遠く
子孫ふるを得ること、

  今般数個を製出して壱個
六拾銭(送料供)にて希望者に分譲す
  
品切後は次回の製出期まで久しく需めに應すること能はざるにより。
  希望者は此際
至急申込まざれば品切れとなるべし



長いので多少省略していますが、以上のような内容で、通信販売をしていたようです。

ようするに、これは催眠術の道具で、お医者さんが聴診器診察するような感じで、
この道具を使うと、「催眠を施すときの信頼感が増しますよ」ということらしい。

そして、金属製なので壊れることなく、子孫まで使えるもので、
今回は数に限りがあるので、
1個60銭送料は無料お分けします。
また、生産が間に合わないので
至急申し込みをしないと品切れとなりますよ。とも云う

この、3年後に新製品が発表されます。
「壊れることなく、子孫まで使える」と思って買ってしまった人は、「失敗した!」と思ったでしょうね・・・


明治43年12月30日、精神研究会発行の氣合術獨習法」古屋鉄石著述の広告欄には、
上記画像の『複式催眠球』(発売準備中)(実用新案登録出願中)と次の様に出ている。
          複式催 眠 球 (発売準備中)

            定價壹個金八拾銭    小包送料内地金拾貮銭
  従来の催眠擬視球を多年使用し実験研究しつありし中に図らずも壹個の金玉よりか、
  貮個の金玉を使用する方が効果大なることを発見せり、之れ其理由は人には二個の眼
  あり二個の眼にて一物を見るより、二個の眼にて二個の球を各々別々に見る方思想を集
  むる手段として最も妙なることを彼双眼鏡の理によりて覚り、爰に複式催眠球なるものを
  発明し実験したるに、実に予想外の大々的効果を得たり、依て今般特許局長に向て実用
  新案の登録を受け、使用法書添へて発売せんとす。
  登録許可は有志の士は幸に一本を需めて実験の上批評あらんことを 
    因に云ふ此球は実用新案登録出願中なるを以て模造を厳禁す

          複式催 眠 球 (実用新案登録出願中

以上のように、古屋鉄石氏は大げさな宣伝が得意であったようで、詳しい事情はわからないが、
いつの間にか「大日本催眠術協会
精神研究会に変わっている。 

新型
『催眠擬視球』、『複式催眠球』発売の準備中であるという!・・

新型
『複式催眠球』は、従来の催眠擬視球多年使用し実験研究してきた中で、
一つの金球を二つの金球にした
発明により、予想外の大々的効果を上げ、
そこで、
特許局に実用新案登録出願をして発売しようと思う。と云うのである。
失礼かもしれませんが、多年といってもたった3年でしょう。」
発明というより改良でしょう。」

今も100年前も、通販の広告はあまり変っていないようですね・・・・


 
それでは、上の画像『複式催眠球』いつ頃の物かということになりますが・・・

私の
『複式催眠球』に付いている説明書
「詳しいことは、拙著『高等催眠学』を・・・」とあります。
古屋鉄石著『高等催眠学講義録』が発行されたのが大正元年9月30日とするとそれ以降ということになる。

つまり、 私の『複式催眠球』は、大正時代の初期のものと推測できます。

以上の二つの広告見ても、やはり
胡散臭い感じはしますよね・・・・・

それでも、科学的に解明しようと真剣に取り組んだ研究者もいたようです。

現代でも科学的に解明されていない謎や不思議な現象は少なくありません。


興味をもたれた方は、
岐阜県博物館特別展を訪れてみてはいかがでしょうか・・・


岐阜県博物館特別展は終了しています。

参考資料
国立国会図書館 
近代デジタルライブラリー
古屋鉄石著 催眠術獨稽古 附動物催眠法
新式簡明 催眠術教科書 中巻 催眠治療法 一名、催眠術自宅療法 古屋鉄石著
気合術獨習法 東京 精神研究会 古屋鉄石著
古屋鉄石著 高等催眠学講義録 第貮巻 東京 精神研究会
精神研究会 複式催眠球製作所 農商務省特許局実用新案登録済 複式催眠球使用法