人称代名詞

[3-2-2000]

代名詞とは?

名詞の代わりに置かれ、文の中でその名詞と同じ役割を果たす語を代名詞といいます。代名詞が使われるのは、「代名詞がどの名詞の代わりをしているのか」が文脈上明らかな場合(あるいはそれが問題にならない場合)に限られます。逆にこの条件が満たされる場合、名詞は頻繁に代名詞に置き換えられます。

特に注意しなければならないのが、日本語と違って、フランス語では名詞を省略しないということです。日本語では、既知の名詞はほとんど省かれてしまいますが、フランス語の場合、例外的な場合を除いて省かれることはなく、全て代名詞に置き換えられます。フランス語で省いてしまうことのないよう注意して下さい。

人称代名詞

人称代名詞とは、人称によって分類される代名詞のことです。

人称とは、言葉を発する人(または文章を書く人)から見た分類で、話し手書き手自身を一人称、話を聞く人(話をする相手)文を読む人(文を書く相手)を二人称、その他の、直接話を聞いたり読んだりしていない人事を三人称とします。物や事は、擬人化された場合を除いては常に三人称です。

また、基準はあくまで話し手書き手なので、例えば二人で会話をしている場合、話す人が交代すれば、それに従って人称も変化します。

他にも代名詞には、不定代名詞、指示代名詞、などがあります。これらについては別の機会に解説するつもりです。

主語人称代名詞

以下の表を見て下さい。


単数 複数
一人称 je nous
二人称 tu
vous
vous
三人称(男性) il ils
三人称(女性) elle elles

もうお馴染みですよね。

vousは単数にも複数にも使われます。二人称複数と言えばvousを指しますが、これは便宜上そう呼んでいるだけで、vous が必ずしも複数であるとは限りません。

主語人称代名詞の用法には、実は、思いもしないような絡繰りがあったりするのですが、これは別の機会に解説したいと思います。

動詞の前に置かれる代名詞

とりあえず語順に関して解説をします。

平叙文、命令法否定形の場合の語順


┌--------------------┐
                    
   me               
          ┌----------------┐
   te                     
             le           
   se               lui   
             la               +  y  +  en  +  動詞
  nous              leur  
             les          
  vous                    
          └----------------┘
   se               
                    
└--------------------┘

動詞の前に置かれる代名詞には、いくつかの制限事項があります。上の表は、その制限を図式的に示したものです。

まず、全般的な注意として、

そして、個々の代名詞の組み合わせに関して、以下のような制限があります。

以上は、代名詞の間での語順の説明です。

動詞との位置関係も少々複雑です。否定形の時、複合時制受動態の時、語順は

ne + 代名詞 + 動詞 + pas
Je ne t'aime pas.
(ne) + 代名詞 + 時制受動態の助動詞 + (pas) + 過去分詞
Je (ne) t'ai (pas) dit cela.

となり、代名詞は常に動詞助動詞の前に来ます。時制の助動詞とは、複合過去などを作るavoiretre 、受動形の助動詞は etre です。それ以外のpouvoir などの助動詞を伴うときは、

(ne) + 助動詞 + (pas) + 代名詞 + 本動詞(不定形)
Je (ne) peux (pas) t'aimer.

となり、その助動詞が複合形に置かれる場合は、

(ne) + 助動詞の助動詞 + (pas) + 助動詞の過去分詞 + 代名詞 + 本動詞(不定形)
Je (n')ai (pas) pu te voir.

となります。規則が分かりましたか? 時制や受動態の助動詞は、動詞の活用の一部であり、それらをまとめて本動詞とすると、代名詞は常に本動詞の前に置かれる、と説明できます。ne...pas は常に、先頭にある、単純時制の形に活用した語と(、もしあれば)その前ある代名詞を挟む位置に置かれます。

なお、近接未来、近接過去形では、語順は以下の様になります。

M.X va le voir.
Je viens de le voir.

allervenir de は時制の助動詞のように感じられますが、代名詞がその後ろに置かれるところを見ると、文法的には、「・・・するところ」、「・・・したところ」という意味を表す動詞表現、と考える方が適切と思われます。近接未来近接過去は、実は、非常に難しい存在なんです(^^;

ついでですので、近接未来近接過去形の疑問形、単純複合倒置形を示します。こんな解説、ここ以外では多分・・・、お目にかかれないと思いますよ♪(そんな物使わない、という話もあるが) 最終的には、語順と用法とを分けて解説するつもりですが、いつになるやら・・・(^^;

M.X va le voir.
M.X va-t-il le voir?

Ou M.X va-t-il le voir?
Ou va le voir M.X?

M.X vient de le dire.
M.X vient-il de le dire?

A qui M.X vient-il de le dire?
A qui vient de le dire M.X?

命令法肯定形での語順

もう一つ語順で大切なのが、命令法肯定形においての語順です。代名詞が1つだけの時は、

動詞 -moi
-toi
-le
-la
-lui
-nous
-vous
-les
-leur
-y
-en

となります。難しいのが代名詞が2つ使われる場合です(3つ以上を同時には使いません)。以下、全ての組み合わせを示します。まずは yen を含まない場合です。

動詞 -le
-la
-les
-moi
-toi
-lui
-nous
-vous
-leur

一般的に

動詞 - 直接目的補語 - 間接目的補語

と説明されますが、上の表にない、動詞-nous-leur といった組み合わせは使われないので注意して下さい。組み合わせは、平叙文の肯定形の時と同じです。

次に、yen を含む場合です。

動詞 -m'y
-t'y
-l'y
-nous-y
-vous-y
-les-y
-leur-y

-m'en
-t'en
-l'en
-lui-en
-nous-en
-vous-en
-les-en
-leur-en

DISCOTEXT 1を入手したので検索した結果、以前説明していた -y-moi-y-toi の組み合わせが検索できず、その逆の-m'y-t'y が見つかりました。何と朝倉にも -m'/-t' + y/en と載っていました。ということで訂正ですm(__)m

と書いたのですが、どうやらどちらもあり得るようです。文法的には -m'y-t'y が正統らしいのですが、一般的には -y-moi-y-toi が好まれるようです。なんと朝倉の y の項目を見ても、 m'y, t'y は稀、と書いてありました (;_;)。ということで、申し訳ないのですが再度訂正です。en に関してはそのままで変更はありません。m(__)m

以上です。細かいことですが、trait d'union (-) を忘れないようにして下さい。最近は無くてもよくなったらしいですが (^^;

否定形の時の語順は、平叙文の肯定形の時と同じです。


補足

同時に使えない代名詞を同時に使わなければならない場合、片方の、前置詞が付いている代名詞を強勢形にして、動詞の後ろに持っていきます。例えば、

*On me te presente. *On me lui presente.

とは言えないので、それぞれ、

On te presente a moi. On me presente a lui.
On me presente a toi.

とします。その他、3つの代名詞を同時には使えないので、その場合もどれかを名詞にするか、前置詞付きの物を強勢形にして後ろに回すかして対応して下さい。

非強勢形

人称代名詞が非強勢形で使われるのは、上の2つの場合のみです。最後に、人称代名詞の非強勢形について解説します。非強勢形の人称代名詞は、以下のようなときに用いられます。

強調

文中のある要素を繰り返して、強調する用法です。

Moi, je viens.
Il te voit, toi.
Je te le donne, a toi.

注意:最初の例文で、主語 je は必要です。luileur の場合は、強勢人称代名詞をそのまま主語にすることができます。

Lui n'a rien fait. (Lui, il n'a rien fait.)

前置詞の後ろで用いられるとき

Je vais au cinema avec elle.
Elle n'aime que moi.
Je suis plus beau que lui.
Elle ne voit plus ni lui ni moi.

属辞として

C'est toi?

その他の用法

その他、色々な表現の中で使われます。

Lui parti, la reunion fut plus gaie.
Voila ce qu'il a dit. Eux, de se moquer.
Lui, avoir fait cela!


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