臺湾出張記3

(1998/11/8〜1998/11/11)


はじめに

過去2回の台湾出張を含めた色々な経緯を踏まえ、我々の支店と台湾現地法人で協力してビジネスをやっていこうということになり、双方のトップが台湾で会談することになった。私の所属する組織のトップ(仮にY様としておこう)は台湾へ行かれるのは初めてのため、随行員として筆者直属の課長と、現法への顔つなぎ役兼現地ガイドとして筆者がお供することになった。お偉い方との海外出張は久しぶりなので結構緊張する。行くまでの準備がこれまた大変である。現地の観光地を下調べしたり、出張の口実として現法社長名義のこちらのトップへの招聘状を作成したり、現地のロータリークラブ会合に出席して旗を交換しなければならないとおっしゃるので、ロータリークラブに連絡してその段取りをしたりと、普通のSEとしては慣れない総務業務に慌しく日々は流れて行ったのであった。

1998/11/8 Sun.

日曜だというのに、朝7時半に福岡空港に集合する。それというのもY様が観光がしたいとおっしゃるので、日曜の午前中に台北入りする必要があったからである。観光先として、恐る恐る自分の希望でもある故宮博物院をご提案申し上げたところ、あっさり承諾頂いたのでその点はよかったのだが、我が社の出張制度として休日の移動は勤務扱いにならないので、日曜の早朝出発にもかかわらず全くの只働きである。いくら観光とは言え偉い方の随行なんだから、ちょっとは考慮してもらいたいものである。偉い方の随行なのでビジネスクラスで行けることがせめてもの慰めだが、これさえも帰国後に「何故あいつらも一緒なんだ」と暗にお叱りを頂いたらしい。念のために弁解しておくと、系列旅行会社経由でエコノミーと同額でこの席を獲得したので、経費的には贅沢はしていないのだが。例によってビジネスクラス専用の特別待合室で搭乗を待つ間、筆者が旅程をご説明申し上げる。実はY様は次の週にもラスベガスで開催されるComdex Fall見学に行かれる予定で、総務の方からも「アジアの電脳立国である台湾の情報関連産業を見学して、流れ良くComdexへ行って頂きたい。」という意向を聞いていた。そこで台湾のPC産業の活発なことをアピールし、是非八徳路へ行って肌で実感しましょうと熱心にお勧めしたのだが、「俺は若い頃随分そういうデータ端末をいじりまわしてうんざりなんだ、そんなの見たくもないよ」とおっしゃる。じゃぁComdex行きも若い技術者に譲ってくださいよ、それに秒進分歩のPCの世界では、あなたの若い頃と比べたら飛躍的に進歩してますよ、と言いたかったが、ぐっとこらえる。硬い話題はお気に召さないのかなと思ったので、今度は「台湾ではメジャーな日本のポップスや洋楽のアルバムが\1,000円〜\2,000円程度で買えるんですよ」と柔らかい話題で水を向けると、「音楽には興味ない」とそっけなく、取り付く島もない。何だか話題の掴み所がなくてシュンとしてしまった。実は先日から風邪を引いていたので、その点をさりげなくアピールしたのだが、そんなことは全く意に介されていないということが後に分かる。そんなこんなで不安をはらんだまま機は飛び立ち、無事台北中正空港に到着して入国審査を済ます。いつものようにタクシーを飛ばしてホテルへ到着しチェックインすると、3回目の筆者はDBに登録してあるのでさっさと手続きが終わり、しかも他のお二方よりちょっと広い部屋のようだった。役得役得。早速着替えて、本日の目玉である故宮博物院へタクシーで向かう。日曜ということでひどい渋滞をやっとのことで抜けて故宮博物院の玄関前に到着すると、降りるより早く競い合うようにしてタクシーに乗り込もうとする人達がいる。どうやら帰りのタクシーの確保は非常に困難なようである。入り口でチケットを買いカメラを預けて中に入る。カメラ持ちこみ禁止とはちょっとがっかり。中に入るとY様が「それぞれ自分のペースで見たいだろうから、ここからは分かれて4時半にまたここで集合しよう」とおっしゃってくださったので、ありがたいとばかりに課長と二人で別行動することにした。一気に肩が軽くなったような気がして展示を順番に見て廻るが、さすが世界3大美術館の一つ(あと2つはルーブルとエルミタージュ)といわれるだけあって、内容が充実している。古くは先史時代の亀甲文字の彫られた甲羅や骨の実物から、明清時代の色鮮やかな焼き物まで、質量共に圧倒される感覚である。ここでもご多分に漏れず日本人の団体観光客が何グループも来ており、それぞれにガイドがついて日本語で説明しているので、それを聞きながら見て廻った。特に印象に残ったものをいくつか揚げよう。緑色と白色の微妙に混じった翡翠の天然石を、もとの色をうまく活かして加工した白菜の置物(^^ゞ、徳の高いお坊さんの頭蓋骨をお椀状に切りとって皮を貼った太鼓、佐藤栄作元首相の奥さんが寄贈したという大きな唐三彩の仁王像、見事な書画や掛け軸、象牙を細かく彫って加工した一刀彫りの数々。特に象牙の彫り物は、塔の中に塔が入っていたり、玉の中に玉が七重に入っていて、しかもそれぞれが独立して動く入れ子状になっており、親子3代で作ったものだと言って自慢していた。確かにどれも形にゆがみがないばかりか装飾も繊細で、御簾の部分などもまるで本当に糸を織り合わせて作ったように細い何本もの筋で表現されていて実際に向こう側が見えるのである。でも、親子3代ということは百年くらいかかっているわけで、時間を掛ければこれくらいのことはできるんじゃないだろうかという気がする。現代ではちょっと考えられない呑気さである。でもこれを作っている間、その人達はどうやって食べて行っていたのだろう?象牙細工の所でY様とばったり会い、そのまま4Fの喫茶へ行ってお茶を飲む。お茶はちょっとしか入っていなのに一人\1,000円とべらぼうに高く、明らかに観光客目当てのぼったくりである。その上「まずいからよしてください」と止めるのに、課長が干したフルーツをお茶請けにと買ってしまった。案の定、一口食べてまずいと言って残してしまわれたが、Y様は意外とお気に入りのようであった。趣味で焼き物をされているY様は、展示してあった焼き物類がひどくお気に入りのようで、焼き物に関する薀蓄を述べられたり、売店で焼き物を物色したりとご満悦の様子であった。私が飲茶用のかわいい茶器が気に入って、「こういうの欲しいですね」と口を滑らせたばっかりに、行く先々の冷やかしで入った店で「おい、茶器があるぞ」と旅の間中言われつづけたのには困ったが。その後、お土産屋で思い思いの記念品(筆者は水墨画を掛け軸風にプリントしたポスターと、水墨画のマウスパッドを購入した)を買って、表へ出て記念撮影をした。これで世界3大美術館のうちルーブル美術館と故宮博物院を制覇したわけだが、流石に残りのエルミタージュはロシアにあるので、そうそう行く機会はないだろうなぁ。

<故宮博物院前での記念撮影>

すっかり疲れてホテルへ帰ることになり、私は正規の場所でタクシーを捕まえたかったのだが、例によってY様はマイペースで「そんなの待ってたらいつになるか分からんぞ」とどんどん先へ進まれ、敷地前にたむろしているいかにも怪しいタクシーの集団のところへ行かれる。最初応対に来た運転手が「ここのお茶はまずかったろう?俺がうまいお茶屋を知っているから連れて行ってやるよ」というのを「ホテルへまっすぐ帰る」ときっぱり断ると、別の運転手が「じゃぁ、俺が乗せていこう」と名乗り出た。ところがこいつもとんでもない曲者で、「今日は休日渋滞で市内からここまで来るのに1時間以上かかった。お客さん達を降ろしたら、あそこに戻るのにまた渋滞の列に並ばなきゃならない」とか「台湾は車が高いのでタクシー屋をやるのにも元手がかかる」と愚痴をこぼしたり、「台湾で床屋といったら、普通に散髪するところばかりじゃなくて若い女性が風俗サービスしてくれるところなんだよ。」と言いながら、わざわざ遠回りしてそういった界隈へ連れて行き、20km/hくらいののろのろ運転で解説して廻る。助手席の筆者は、そんなこととっくに知っとるわいといらいらしながら話をやめさせるタイミングを伺っていたのだが、後ろのお二方が大喜びで合いの手を入れられるもんだから、結局そのままずるずると行きの2倍以上の時間と料金を取られてやっとホテルへたどり着いた。因みにこのぼったくられた交通費は、仕事とは関係ないので丸々筆者の自腹である。とほほ(;_;)。ホテルへ帰って近所へ食事に出ることにするが、Y様がその前に名税店へ行きたいとおっしゃるので、晶華酒店(グランドフォルモサリージェント)地下の免税店へお連れするが結局何にも買われなかった。その足で、近所にある前回も行った24時間営業の点心の店へお連れしてやっと夕食となった。頼んだメニューは前回とほぼ同じものだが、老酒の熱燗がいたくお気に入りのようで、くいくい飲まれていた。筆者も流石に渡航3回目で、日本に居るときも中国語教室に通ったりラジオ講座を聞いているので、注文にもだいぶ慣れてきた。食事も無事終わり、きっちり3等分に割り勘してホテルまで戻り、「やれやれやっとゆっくりできる。明日からの仕事に備えて、サウナに入ってしっかり寝て風邪を治そう」とほっと一安心したところ、ホテルの玄関前で時計を見たY様がやおら「何だまだ8時じゃないか。焼き物の店へ行こう」とおっしゃる。勘弁してくれよと思ったが、土地感のない二人だけ置いて「じゃぁ私は失礼します」といえる雰囲気でもなかったので、しぶしぶ地図を見てなるべく近くの焼き物屋数件へ案内する。前回述べたように当然8時過ぎともなるとどの店も店じまいをしようとしている所だが、それを強引に開けさせて店内を物色した上に結局何も買わないのである。日本人観光客が海外で評判悪いのが何か分かるような気がしてきた。そのまま当てもなくホテルの界隈をうろうろするのを、後ろから黙って力なく付いて行っていると「何だ、元気がないな」とおっしゃるので、ここぞとばかり「風邪引いてて調子悪いんですよ」と応えたところ、「そうか」の一言で終わり、またコンビニやまだ開いている土産物屋を物色しながらの放浪のたびが続く。女子高生じゃないんだから、何でも取り巻き連れて団体行動ってのは止めて、どこか行きたきゃ一人で行けばいいのに。何かあっても自由行動中の自己責任だもんね。果てしない放浪が終わってやっとホテルへ帰りつき、キーを受けとってあぁこれでやっと休めると思ったのを裏切るかのように、「そう言えば地下に売店があったなぁ」と余計なことを思い出される。最後のとどめを刺された気分である。しぶしぶ売店にもお供すると、改装前の閉店セールということで、全品半額とのことである。しきりに印鑑を作るよう勧める店員を相手に迷っておられるY様を横目にぼーっとしていると、あるものが目に飛び込んできた。昼間故宮博物院で目撃し欲しくても高くて買えなかった、青龍刀を模したペーパーナイフが、なんと半額なのである。思わず買ってしまったが、疲れて麻痺した頭で買い物をするものではない。後で開けてみたら刃先はつぶれているし、箱は一回壊れたのをボンドで修理した跡があるし、何よりもそれから1回も使っていないのである。確かに記念にはなるけど。そんなこんなで結局部屋にたどり着いたのは23時前で、とうとうサウナにも行けなかった。本来なら休日であるはずなのに、とんでもない一日であった。管理者とかになるとずっとこんな感じで、だんだん仕事とプライベートの境界がなくなって行くのだろうなぁ。あぁやだやだ。

1998/11/9 Mon.

昨日の疲れと風邪も抜けきらないまま、朝ロビーに集合して我が社の現地法人を訪問する。筆者は面倒なのでホテルのレストランで朝食を摂ったのだが、Y様は早起きして近所を散歩した上にホテルの前の喫茶でモーニングを食べられたそうである。本当は麺類が食べたかったので、看板に「麺」の文字があるその店へ入ったのだが、パンしか無かったといって怒っておられた。あとでその店を見ると、看板に「麺包」とある。麺は麺でも麺包(みぇんぱお)と書いてパンのことなんですよと説明してあげる。伊達に中国語を勉強しているわけではない。少しは見なおしていただけただろうか。それはさておき、現地法人へ到着すると、早速社長以下スタッフの皆様と挨拶を交わして、それぞれの組織の紹介、ビジネス連携などについて議論を行う。その中で、現法社長が前回の工事がうまく行ったからと筆者のことを気に入っていただき、しきりに筆者を台湾にくれとおっしゃって、Y様も拒否していなかったのが気が気ではなかった。近所の台湾料理店で昼食を摂り、午後はY様と現法のOさん、それに筆者で、あるお客様への営業訪問である。課長には留守番している間に他のお客様へのアポ調整をお願いした。営業はさくっと終わり、3時半には事務所へ帰って今日の現法での打ち合せ内容および営業訪問の議事録作成にとりかかる。Y様が閑そうにしておられるので、書棚の所にお連れして台湾経済の動向や日系企業の資料をお見せするが、取り出されたのは「地球の歩き方−台湾」であった。まぁ、基本的には本人の自由だけど、いつものようにお偉いさんが現法に遊びに来たと思われるのはやっぱり対面上非常にまずいんではなかろうか。と、そんなことを考えながらCASSIOPEIA(今回は滞在日数が短く荷物も少なくしたかったので、VAIOはお留守番である)で一生懸命議事録を打っていると、「地球の歩き方−台湾」を熟読されていたY様が、やおら「おっ、足つぼマッサージがいいと書いてあるぞ。はい予約」と、筆者へ電話を突き出される。「え?議事録書かなきゃいけないんですけど、今すぐですか?」とお尋ねすると、「そんなものは書かんででいい。俺が許可する」とおっしゃる。いや、あなたが許可しても、議事録残さないと後で仕事にならないからと思ったが、業務命令なので仕方がない。しぶしぶ本に紹介されているマッサージ店に電話を掛けると、2件目の店で16:30からの予約がとれたので、3人で逃げるように現法の事務所を辞した。遊び半分で来ていることが見え見えである。日本から来る偉い方々のアテンドを現法が嫌がるのもよく分かったので、なるべく迷惑を掛けないように自分たちで解決しようと決意した。マッサージ店は幸いホテルの近くだったので、一旦ホテルでスーツからラフな格好に着替えて向かうが、一足違いで先客が入ってしまい30分おきに一人ずつしか出来ないという。つまりお二人に先に入っていただくと、私の順番は17:30からである。これ幸いとばかりに18時にホテルで集合することにして、お二方をそこに残して八徳路へ向かった。いつものように徒歩で向かうが、往復40分かかるので正味20分弱しか店を見て廻る閑が無く、また前回から目立って変わった商品も無いようなので、殆ど駆け足で見るだけに終わってしまった。あぁ、そういえばいつもと違うルートで行ったので、インターネットカフェを1軒見つけたが。マッサージ屋へ戻ると、中年のおばさんが片言の日本語で奥へ案内してくれ、うつ伏せでベッドに寝てマッサージをしてくれた。確かに足の裏などを強く押したときは痛かったが、全体としてまぁこんなもんかなという印象の普通のマッサージであった。値段がNT$600(\2,500)と安いので仕方ないが。マッサージを終えて定刻にホテルへ戻ると、だいぶ遅れてお二人がお見えになった。聞けば色々な焼き物の店を物色して南のほうへ行っていたとのこと。3人揃った所で夕食をどうするかの相談が始まるが、「梅子(めいつー)は明日連れて行くから避けてくれ」とOさんに情報を頂いていたので、オーソドックスな所で青葉をお勧めする。しかし、Y様が地球の歩き方に載っていた海鮮料理の店、海覇王(はいぱーわん)へ行きたいとおっしゃるので、鶴の一声でそこに決まった。因みに海覇王がある方向は、今お二人が歩いて行ってこられた方向で、もう一度同じ所を歩くのは嫌だということでMRT(高架鉄道)で行くことになった。新光三越近くの地下にある駅から乗りこむと、途中から地上に出て高架上を走って行く。私自身も乗るのは始めてであるが、駅も車内も非常にきれいであった。海覇王は丸テーブルに椅子の、普通の中華料理店と言う感じであったが、客の姿があまり無く逆に小姐の姿が不釣合いに多い。ちょっと物怖じしてしまったがここまで来てしまったものは仕方ないと入ってみると、メニューにも値段が書いてなくますます不安をあおる。慎重に一品ずつ値段を聞きながらオーダーするが結構高くつきそうである。いつものように台湾麦酒(たいわんぴーちょう)を頼むと、小姐がしきりに「らま、らま」と勧める。良く聞いてみると「生ビール」のことであった。何となく危険な香りがしたので、筆者が「試しに1本」と言っていると、横からY様が「3人いるから3本」と言われあっさり3本オーダーすることになってしまった。後で後悔する事になるとも知らずに。食事の内容のほうは、大体いつもと同じような台湾料理の数々を頼んだのだが、少しは贅沢しようと言うことで一人一匹づつ蟹を注文した。これは味噌がたっぷり入っていてなかなかおいしく、Y様は甲羅に老酒を入れてすすりながらご満悦のご様子であった。シュウマイなどの4個盛り合わせのものは、「飲まない人に上げよう」と私に2つ勧めていただいたのでありがたく頂戴した。結構おなか一杯になった上に蟹まで頼んでしまったので会計が怖かったのだが、思ったほどの高額ではなく一人NT$680(\3,000弱)であったのでほっと胸をなでおろす。後で計算してみた所、どうも店側が計算違いをしていたようであるが。帰りは今朝から「麺が食べたい」とおっしゃるY様に従って、麺の食べられる店を探しながらホテルまで歩く。結局今朝行かれた喫茶店が、夜は麺も扱っているらしいと言うことで私が偵察に差し向けられ、店員に「有没有麺(ようめいようみぇん)」と聞くと「有」と応えたのでそこで食べることになった。夜も遅かったので、どうも厨房の火を落としていたらしかったので悪かったなぁ。麺は脂っこい牛のアバラ肉の載った排骨麺であり、私は夜遅いことや前回の失敗を考えておなかの為にちょっとだけ食べて残した。驚いたことに、一応喫茶店なので中華麺にコーヒーがついているのである。私はむしろこっちのほうを喜んで飲み干したのだが、お二人はこんな濃いのを飲んだら寝れなくなると一口飲まれただけであった。パンの持ち帰り販売もあったので、明日の朝食用にとパンとヨーグルトを買ってホテルへ帰った。今日は間に合いそうだったのでサウナへ行って汗を流しているとY様も入ってこられた。当初ホテルのマッサージを受けるとおっしゃっていたのだが、高いので外のマッサージへ行くとおっしゃる。またかと思ったが、「湯上がりで外に出ると風邪が悪化するので」等と適当に相槌を打っていると、流石に乗り気でないと分かったのか「課長を誘って行こう」と先にサウナを上がられた。やれやれ。部屋に戻ると、寝たいのを我慢してコンビニで買ったミネラルウォーターを飲みながら今日の議事録を作成した。結局こういうところにしわ寄せが来るんだよなぁ。とほほ。

1998/11/10 Tue.

朝課長からの電話で起こされる。急遽予定を変更して、Y様を郊外の観光地である淡水にお連れするので別行動になるとおっしゃるのである。先日より私がぶつぶつ不満を言っていたので、一人にさせてやろうというありがたいお心遣いである。早速午前中の訪問先である某日系企業へ出向き営業活動をした後、一旦ホテルへ帰って議事録を作成して計画を練る。午後の予定まで昼食を含めて2時間強ほどある。ということでY様をお連れする観光地候補の一つとしてOさんに教えていただいた中正祈念堂へ下見も兼ねて向かう。天気がいいので、途中ちょっと浮気をして台北駅南の高層ビル新光三越摩天楼の展望台に昇ってみると、四方に台北市の町並みが眺望でき、今まで行ったことのある場所などの位置関係がよく分かった。

<新光三越摩天楼の展望台から見た台湾総督府(中央右)>

時間が無いので展望台を早々に降り、ついでに地下のCDショップで目当てのCDを買う。今回は来る前から目的を決めてきたので短時間で目的のものだけを探し出す。お目当てはLuna SeaのShineとB'zのPleasureである。本当はLarc en Cielのアルバムかシングルも欲しかったのだが一枚も置いてなかった。まだ認知度が低いのだろうか。ちなみにLuna Seaの現地名は月之海合唱団である。実に分かりやすいなぁ。ちゃんと日本語の歌詞カードが入っていて、外付けで北京語の解説ブックレット付きである。半年後くらいにTVでLuna Seaのアジアツアーや現地での人気ぶりを報じるTV番組を数本見たが、その人気はすさまじく、コスプレする人や歌詞をちゃんと歌いたいために日本語を勉強する若者もいるそうな。いやはやすごいぞ日本文化。駆け足でCD屋を後にして目的地である中正祈念堂へ行く。ここは建国の父蒋介石を祭ってあり、大きなお堂の中にはこれまた大きな蒋介石の銅像とスローガンが掲げられており、衛兵が微動だにせず脇に立って警備をしていた。建物と周りの雰囲気や、小学校の課外授業らしき一団が来ていることなどからも、とても大事にされていて国民に敬われていると言う印象を受けた。

<中正祈念堂の門>

<中正祈念堂>

<蒋介石像>

午後の予定も迫ってきたのでタクシーでホテルへ戻り、近所で買ったモスバーガーのハンバーガーを掻き込む。残念ながらモスバーガーはあまりおいしくなかった。何故かべとべとのホットチリソースであり、モスの命であるレタスもよれよれで、シャキシャキ感がまるで無かったのである。ホテルでY様および課長と合流して現法へ向かい、そこからS部長とMさんの案内で中華電信へ向かう。午後の予定は中華電信の局内ノード見学である。実は朝電話で起こされたときに寝ぼけてしまい、課長には先方への訪問時間を現法への集合時間と取り違えて30分遅くお伝えしてしまっていたのである。途中でそれに気付いたがもう後の祭、とにかく会社のバンをバンバン飛ばしてもらって30分遅れで中華電信へ到着した。S部長が先方にかなり謝っておられるので肩身が狭い。後で私もS部長とMさんに謝ったが、悪い事をしてしまったなぁ。いやぁ失敗失敗。とりあえず見学も無事終わり、事務所へ帰って一息ついて、今夜は社長とのトップ同士の会食である。店は梅子(めいつー)なのでメニューの内容は前回とほぼ同じだが、やはりガンを飛ばし会って乾杯する恒例の行事と何故か自衛隊の話でかなり盛りあがってしまった。詳しい内容は差し障りがあるので省略させていただく。一つだけ記録に残しておかねばなるまい。「台湾麦酒には生もあるんですね、昨夜は生を飲みましたよ」とおっしゃるY様に、S社長は「生は虫がいるから飲んじゃいけません。台湾の人は生は飲まないんですよ。」と告げられた時のしーんとした雰囲気が何とも言えずおかしかった。だから一本にしとけば良かったのに。今夜は流石に乾杯攻撃が聞いたのか、再外出のお誘いは無く素直にホテルに帰って帰国準備をすることができた。ほっと一安心。

<会食の記念写真:虐げられた姿が今回の旅を象徴している>

1998/11/11 Wed.

午前中は課長と筆者でこれまた日系企業の営業訪問である。Y様は昼前くらいまでお休みになられて、我々が手配した迎えの車に乗って来来大飯店(ライライシェラトンホテル)のロータリー会合へご出席である。営業活動も昼前に終わったので一旦ホテルへ帰るが、前回いつも長蛇の列が出来ていたホテルの近所のエッグタルト屋が今日は空いている。そこで、日本へのお土産用に2個入りパックを買った。お土産と言ってもなま物に近いので、結局この日家に着くなり家内と1つずつ食べたが。ホテルで着替えて先にチェックアウトを済ませ、荷物を預けて昼食を食べに外へ出る。我々にはY様をお迎えに上がるという重要な使命があったので、とにかくロータリー会場である来来大飯店(ライライシェラトンホテル)のある南のほうがいいということで、麺好きのY様の為に調べておいた、南のほうの中正祈念堂の先にある牛肉麺(にゅーろーみぇん)の店へ行く。現法のOさんに聞いた住所を頼りに地図を探して行くと大通りからちょっと入った路地にその店「永康牛肉麺」はあった。いかにも大衆的なラーメン屋と言う感じで活気があり、のんびり選んでいる閑も無いようなので一番オーソドックスな牛肉麺をオーダーする。出てきたのを見てびっくり。唐辛子たっぷりの真っ赤なスープに麺が入って、牛肉の角煮がたっぷり乗っているのである。2人で汗をかきかき食べる。辛いけれどもおいしい。

<辛くておいしい牛肉麺>

あまりの辛さにすっかりのどが乾いてしまったので、いつもEvianを持ち歩いている筆者は店を出るなり一気に飲み干す。さらに帰る道々発見したセブンイレブンで課長と筆者で一本ずつEvianを追加購入する。中正祈念堂にも寄りたかったが、時間が無いので外からちょっと見るだけにとどめ、足早にロータリー会場へお迎えに向かう。結構長い距離を歩いたので、行く道々改めて町並みを見て清潔だなぁと2人で話し合った。交差点の角角にごみ箱が置いてあり、歩道上には殆どごみが落ちていない。まめに掃除しているのだろうか。そもそも歩きながら煙草を吸っている姿を見かけないので、吸殻も殆ど落ちていない。これも大陸とは大違いである。ロータリー会場である来来大飯店(ライライシェラトンホテル)でY様をピックアップし、老爺大酒店へ戻って荷物を引き取り、いつものように空港専用タクシーで中正国際空港へ向かった。われわれ二人がラフな格好なのを見て、ロータリー出席時のスーツのままのY様は不平を言っておられたが、まぁ立場が立場だし我々下々と同じレベルで考えられてもね。帰りの便では隣に座ったおじさんが非常にうるさく、聞いてもいないのに色々と自分の経歴や仕事の内容を話しかけてきて、こっちのことも聞こうとするのでちょっと困ったが、まぁ適当に相槌を打っている間に短く贅沢な空の旅は終わって無事福岡空港へ到着した。入国審査も何事もなくパスし、無事そこでお開きとなってそれぞれ家路に着いた。しかし、改めて読み返してみると今回は不満ばっかり書いているなぁ。一応弁解しておくと、単に自分のペースで行動できなかったのを不満に思っているのではなくて、やはり仕事で行っている以上、もう少し貪欲に仕事のことを優先して、たまたま時間が開いたら観光をするというスタンスであるべきだと思うのだ。どうも、どちらかと言うと「折角行ったんだから色々観光しないと損」という考えが先にあって、仕事が二の次になっているような印象を受けるのだが、だからこそ偉い方のアテンドをどこの海外事務所も嫌がるのではないだろうか。すっかり愚痴っぽくなってしまったのでこの辺で。

あ、そうそう、一応締めくくりをしなければ。

普段だったら口もきけないような偉い方のお供で海外まで行き、ご案内してまわることができて非常に光栄な体験でした。

上記内容はあくまでも親しみを込めたしゃれです。関係者の方はこれを読んで本気でお怒りにならないように。

Fin.


Written by Y1K