〈山行報告〉
年末のキリマンジャロ登山に向けて、最後の山行トレーニングとして、11/3に引続き、再度の御嶽山を計画した。
コースは前回と同じく王滝ルートだが、田の原までの道路は閉鎖、スキー場のゴンドラも動いていない(12/8〜営業)ので、御岳
スキー場(1680m)からゴンドラ終点(2240m)までの560mを追加で登ることになる。標高差約1400mを登って降りるということで、
本番アタック日の1000m登って2000m下るというキリマンジャロ登山トレーニングに丁度良い。また、万が一、キリマンジャロ頂上付近に
積雪があった時のための雪上歩行トレーニングも兼ねている。スキー場が営業してからでは、ゲレンデを登るのはスキーヤーとの
衝突事故が心配なので、やるとしたらスキー場営業1週間前のここしかない。前日の11/30は、夜8時まで名大道場にて2時間の空手
練習で汗を流した後、そのまま高速を飛ばして御岳スキー場に向かう。大陸からの高気圧が張り出し、好天が期待される。23時10分、
満天の星空の御岳スキーに到着、一杯やって空手練習で疲れた身体にエネルギー充填、明日の英気を養う。
目を覚ますと6時45分、車の荷台に寝ていてあわてて飛び起きるも、あまりの寒さにシュラフからすぐに出られない。
しかし、この寒さこそが絶好の登山日和の証拠、晴れたため放射冷却により冷え込んだということだ。車の後ろから覗き見ると、
中央アルプスがばっちり、前方には御嶽山の雄姿が・・。スキー場の営業前のためか、私の他は登山者だけでなく観光客の車も
一台も止まっていない。あちこちでスノーマシンが稼動しているが、地肌が見えている部分が多く、本当に来週からオープンできるのか
なと他人事ながら心配になる。11月19日から21日の寒波の後、暖かい日が続いたため、折角積もった雪が融けてしまったようだ。
朝食のお握りを食べていると、中央アルプスから日が昇る。日の出にせかされるように準備を急ぎ、7時半に出発、スキー場を登り
始める。1ピッチ登ると、乗鞍岳と穂高連峰が樹林の向こうに雄姿を現す。
思ったよりゲレンデの登りはきつく且つ長く、特に最後のゴンドラ終点直下の登りは、本日の登りで一番体力を消耗した。
登山道なら普通ジグザクを切ってあるが、ゲレンデなので直登できるため、かえって負荷が大きい。大変良いトレーニングになった。
麓から2ピッチ近くかかって、やっとの思いでゴンドラ終点に辿り着くと、あとは少し下ると田の原だ。1ヶ月ぶりの御嶽山は、
さすがに前回来た時より雪は多いが、べったりとは付いておらず、やはり南斜面のため融けてしまったのか予想したより少ない。
田の原から緩やかに登る雪の登山道を行く。やがて樹林帯に入り、ところどころ吹き溜まりで、ずぼっと嵌るところがあり歩きにくい。
トレースは、比較的新しいものが付いており、昨日誰か登ったようだ。『赤っぱげ』を過ぎると樹林が切れ始め、やがて稜線に出る。
振り返ると、田の原は遥か下、その上に中央アルプスが広がる。稜線の方が雪は少なく、8合目付近はあまり雪がない。
頭上に王滝頂上山荘が白く輝き、抜けるような青空とのコントラストが映える。この時期にしては暖かいためか、雪質は柔らかく、
歩きにくい。9合目から雪が増えたのと、傾斜が急になったためアイゼンを装着。しかし、雪が腐っているため、アイゼンがすぐ
ダンゴになってしまい、往生する。王滝頂上に近づくと、次第に雪がクラストし始め、アイゼンが効き出した。05年末に同じ御嶽山を
登って以来のアイゼンの感触はとても心地よい。スキー場での登りで思いの外、体力を消耗していたのか、王滝頂上山荘直下の急登を
喘ぎつつ登ると、やっとのことで王滝頂上に出た。この時期の王滝頂上では、いつも強烈な北風が吹き付けて来るが、移動性高気圧の
圏内に覆われているためか、珍しく風も穏やかで寒さを感じない。神社の鳥居の向こうに、雪化粧した剣が峰が気高く青空に
聳えている。
剣が峰の左側の噴火口からは噴煙が吹き出ており、西風により頂上方面にたなびく。王滝辺りまで硫黄臭が漂い、
御嶽山が近年(1979年)噴火した活火山であることを思い起こさせる。いつもの事ながら、頂上のすぐ下にある旭館の登りは南斜面
と言えども吹き溜まりになっているためか、雪がたっぷりと付いている。その上の頂上直下の階段も完全に埋まっており、左右の
手すりが少し出ているだけである。ハの字歩行で登り詰めると、誰一人いない私だけの頂上である。段々とガスが出てきて、
遠くの山々の眺望は拝めなくなってしまったが、凍った二ノ池の向こうには1ヶ月前に登った摩利支天山、来し方には、谷風により
ガスが湧き上がる王滝頂上が見える。結局、最後まで誰一人出会うこともなく、独り占めとなった御嶽山頂上での贅沢なひと時を十分に
堪能して、剣が峰を後にする。下りでは、気温が上がって腐った雪のため、随所で深くはまり時間と体力を消耗しながら、なんとか
暗くなる前の16時に御岳スキー場に下山。とても充実した思いで帰途に着く。
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