〈山行報告〉
ここ最近の山行は、持久力が落ちている長男や60才過ぎた会社の山岳部OBと一緒なので、自分のペースで歩くことが
できず、自分のトレーニングにならないことと、自分の体力レベルが把握できず、かなりフラストレーションが溜まっていたので、今回、
単独での御嶽山トレーニングを計画した。ルートは、今の亡き親父に小学生の頃に連れて行ってもらって以来、春夏冬と何度も登った
マイゲレンデの王滝コース。車で標高2180mの田の原まで入れるので、多くの登山者が訪れる。今年は、11月12日以降は
田の原までの道路が閉鎖されるらしい。前日の金曜日、夜8時まで名大にて目一杯、空手練習をした後、風呂も入らずにそのまま
高速道路を飛ばして、中央自動車道の中津川ICから御嶽山登山口の田の原へ。23時40分に着いた時には、駐車場には
車は一台も止まっていなかったが、しばらくすると2台の車がやってきた。満天の星空と晩秋の天の川を肴に、ビールと酎ハイで
至福のひと時を過ごす。午前1時頃、車の中で寝袋に包まり就寝。
翌日、目を覚ますと、知らぬ間に車が10台以上に増えている。前日の練習の疲れが残っており、6時前に一旦目を
覚ますも起きることができず、7時10分頃にようやく起き上がる。相当冷え込んだと見え、車のフロントガラスは凍ってバリバリ。
放射冷却による朝の冷え込みはきついが、大陸からの高気圧の張り出しにより、好天が期待される。御嶽山は、最初のうちは
ガスっていたが、次第に晴れ、中腹に層雲を従えて天高く秋空に映える、まるで絵葉書のような光景が広がる。朝食を摂り、
素早く準備して、7時45分に出発。田の原から見る限り、そんなに雪はないが、先週の猿投山から見た時は、御嶽山の頂上付近には
結構雪があるように見えたので、念のため、アンゼン、ピッケル持参、冬山用のプラスチック登山靴で登ることにする。登り始めると、
普段より呼吸に違和感がある。体の感覚に注意すると、先々週の伊吹山、先週の猿投山より足取りも重い。年末のキリマンジャロ登山の
旅行会社のKさん曰く、『標高2000mぐらいから高度の影響が必ずあるはずなので、早めに高所用の生活(呼吸法など)に切り替える
こと』。Kさんの言っていたのは、これだと思わず納得してしまった。8合目付近で層雲の上に出ると、背後には中央アルプスの
絶景が広がり、その背後に南アルプスが聳え、盟主の北岳が雪をまとった姿を現した。9合目の急登を登り切ると、王滝頂上に着く。
ここまでは登山道には雪はないが、剣が峰を見ると所々雪が付いている。王滝頂上からは風が強く、気温2℃にしては
体感温度が低い。毛の下着にポロシャツを着て、冬山用のヤッケを着て丁度いい。いつものことであるが、頂上直下にある旭館の
左側は雪がべったり付いており、慣れない人は戸惑う。最後の階段も雪が付いているが、まだアイゼンがいるほど全面を覆っていない。
剣が峰3067mには10人ほどの人で賑わっていた。ほとんどが私よりも年配で、かなりお年の方も見えた。北側には乗鞍岳、槍穂高が
聳え、眼下の二ノ池方面は雪がべったり着いており、二ノ池は凍っている。その南に八ヶ岳、更に中央・南アルプスと続き、その背後に
富士山がすっかり雪化粧して顔を覗かせている。10月22日の茨城県出張の折りに新幹線から見た時は、まだ雪は全くなかったのに、
さすが日本一の山だ。時節相応の顔をしている。既に11時近いのと、北側斜面は雪がべったりのため、当初の計画の飛騨頂上は
断念して、摩利支天山2959mの往復までとする。
剣が峰からはピッケルを出して、ほどよく締まった雪の斜面を二ノ池を目指して下る。20分ぐらいで二ノ池に着く。
暑くはないが日差しは強烈で、雪面からの照り返しで眩しい。ここから更に下ると、賽ノ河原と呼ばれる広い鞍部に出る。
ここは名の通りまるで三途の川の河原ようで、晴れているからまだいいが、それでも少し不気味な雰囲気が漂う。剣が峰を振り返ると、
田の原から見た姿とは違ってすっかり冬山の様相である。ここから少し登ると、白竜小屋があり、ここからトラバースして飛騨頂上に
向かうルートと、摩利支天山に向かうルートに分かれる。この辺りは南側斜面なので雪はほとんどない。摩利支天頂上へは、
5分ぐらい登ったところにある鳥居から往復する道がある。所々、トラバースで雪が付いているが、傾斜はあまりないので
大したことはない。分岐から20分で摩利支天山頂上に着くが、何もない。地図上では三角点があるはずであるが、どこにあるのか
よく分からなかった。
何もない頂上だが、摩利支天に向かう尾根から見る三ノ池、飛騨頂上とその向こうの槍穂高の眺めは素晴らしかった。
名残惜しみつつ、摩利支天を後にする。次第に風が弱くなり、ポカポカ陽気である。晩秋なのに、まるで春山のように陽光に
溢れていて、そのくせ上空まで乾燥しているので、雲一つなく天高く真っ青な秋空が広がる。日頃のしがらみを忘れ、幸せな気分に
満たされる。賽の河原から剣が峰までの登り返しが、実は今回のトレーニングの狙い。一旦2830mの賽の河原まで降りてまた登るのは、
意外とこたえて良いトレーニングになった。王滝頂上で一本取ってから、田の原まで1ピッチで下山。特に飛ばした覚えもなく、
普通に歩いたにしては、コースタイム8:15のところを、休憩を含めた行動時間8時間で行けたので、ペースもまずまずであった
ようだ。予定通り4時前に下山、温泉はまたの機会とし、一路、名古屋への帰途に就く。
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