〈山行報告〉
昨年から計画していた長男との槍ヶ岳山行を、いよいよ実行に移す。長男と行った昨年の仮想槍ヶ岳としての鈴鹿の鎌ヶ岳
鎌尾根、今年6月の人工壁でのスポーツクライミングは、今回のためのものだ。長男が人ごみとタバコの煙を極端に嫌うので、ルートは
上高地を避けて新穂高温泉から飛騨沢を詰めることにする。行程は、通常、前夜発1泊2日のところを、テントデビューの長男のため
余裕を持って2泊3日とする。今年はラニーニャの影響で梅雨明けが早いと見ていたが、いまだに梅雨明けの気配はなく、西から来る
低気圧に伴い停滞前線が北陸から関東北部に居座るようである。従って北アルプスは曇か雨の予報。晴れ男の長男の運を信じて出発。
7/21 高山市街地で少し道に迷って、新穂高温泉に着いたのはもう昼近い。自分の車でここに来るのは初めてで、
バス停の人に聞いて深山荘近くにある無料駐車場に止めて、出発。時々小雨が舞うので、カッパを着るが暑い。長男と色々と喋りながら
歩く。テントに加えて、予備水3リットルが肩にずっしり来るが、猿投山でのボッカトレの成果か、足取りは軽い。奥穂高岳への
登山道分岐の白出沢出合までは、歩きやすい林道が続く。その先は、車が通れない登山道。小雨で濡れて滑りやすい
石の道を行くと、岳人の聖地、滝谷の出合に辿り着く。雨のため水量が多く、ゴウゴウと飛沫を上げて流れる沢に架かる橋を渡る。
私は平気の平左だが、長男はびびったようだ。程なくして、槍平小屋に到着、テントを張る。一汗かいた後のビールは堪えられず、
下界から担いだ500ml缶を2本とも空けてしまった。
7/22 朝起きると、ガスは切れている。晴れることを期待して登り始める。左手に、残雪の残る抜戸岳〜笠ヶ岳の
山腹が見えるが、稜線は雲の中。上から2、3の中年登山パティーが下りてくる。段々ガスってきて眺望がきかないが、
樹林帯を抜けるとハクサンイチゲ、イワカガミ、ミヤマダイコンソウ等の高山植物の間を登る、とても気持ちのいいルートだ。
例年より残雪が多く、コースの一部は少し雪渓を横切る。最後、一踏ん張りで、テント場の間を通って槍ヶ岳山荘に到着。
まだ岩が濡れていなかったので行けると判断して、槍ヶ岳頂上を目指す。およそ頂上までの距離の1/4のところで、長男が恐怖心の
あまり、岩に上半身がへばりつき、進退窮まって動けなくなってしまったので、安全第一として引返すことにする。いくら手取り足取り
注意して、上体を岩から離すように言っても、身体が言うことをきかないらしいので、無理と判断した。また、基本的な3点確保の
姿勢ができていない人間を担ぎ上げても、下山時に雨で岩が濡れたらスリップ必須、一巻の終わりなので仕方がない。テントまで
戻るのをサポートしたが、その後、私一人で登っても全く面白くないので、本日の行動はここまでする。やがて降ってきた雨の音を
聞きながら、美味いビール・焼酎を飲みつつ、長男と日頃できない四方山話で楽しく時間を過ごす。
7/23 岩に囲まれて風がしのげる場所を選んだにも拘わらず、一晩中、雨と風でテントが揺れて、長男はテントが
飛ぶかと思ったそうだ。これまた、冬山経験者の私には平気の平左だが、長男にはよい経験になったようだ。小雨と風の飛騨沢を、
膝痛と靴擦れに苦しむ長男を労わって、ゆっくりと新穂高温泉に下り、露天風呂にて3日間の汗を流す。
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