山域 南アルプス 〈山行報告〉

白根お池小屋のすぐ横にある白根御池
8/12
昨年の北海道トムラウシ山に引続き、今年の夏も会社の山岳部の合宿に参加。今回は、南アルプスの北岳から農鳥岳への縦走である。 私には、99年の塩見岳以来、7年ぶりの南アルプス、北岳に至っては、学生時代の84年の聖岳〜北岳の縦走以来、なんと 22年ぶり3回目の登頂となる。すぐ隣の甲斐駒ケ岳は4回登っているのに、北岳は不思議と登った回数が少ない。 前夜の19時半に刈谷を出発、一宮でNさんをピックアップしてから、中央自動車道に入り、双葉JCTから白根ICで下りる。 高速は、名神高速の小牧JCT付近と一宮周辺が渋滞していた他は、中央自動車道の流れは順調で、到着が予定より少し遅れた程度。 下りてすぐの道の駅『しらね』にて仮眠後、芦安市営駐車場へ向う。当初の計画では7:40のバスに乗り、初日は白根お池の予定 であったが、朝一の5:10のバスに乗り、肩ノ小屋まで行くことに予定を変更する。1時間で広河原に着くと、既に沢山の登山者で にぎわっている。一部の人は、ここからマイクロバスに乗り換えて、北沢峠に向っていた。6時半、我々は、北岳に向けて出発。 天気は曇、上空に寒気が入っているので、午後から雷が心配だ。

北岳にしか咲かないキタダケトリカブト 可憐なクルマユリ
野呂川に掛かる吊橋を渡ると、大樺沢から八本歯コル方面の稜線が見える。大樺沢は事前情報通り、かなり雪渓が残っている。 広河原山荘の横を通り、大樺沢沿いに登っていく。30分ほどで、そのまま大樺沢を詰めるルートと別れ、白根お池に向う急登に 入る。寝不足気味のためか、パーティーの歩みは重いが、ヒメシャジンの青紫の可憐な花が心を慰める。9時丁度、白根お池小屋に 着いた。北岳頂上方面はガスっているが、八本歯コルが間近に迫り、正面には鳳凰三山が見えている。段々晴れてきて、暑い。 小屋の横には、白根御池という小さな池がある。ここからは、通称『草スベリ』というお花畑の急斜面をジグザグに登っていく。 キク科の黄色い花(タカネコウリンカ?)が沢山咲いており、タカネナデシコ、ハクサンフウロのピンクの花、毒々しい紫の キタダケトリカブト、などの花が目を楽しませる。頂上方面も晴れてきたが、北岳バットレスを横から見るのも、なかなかの迫力だ。 右俣コース分岐からは、富士山、甲斐駒ケ岳、仙丈岳まで見え出した。
北岳肩ノ小屋から北岳を望む 鋸岳から甲斐駒ケ岳の稜線

12時半過ぎに北岳肩ノ小屋に到着。テントを張って、しばらくすると心配したとおり雷が鳴り出し、物凄い雷雨となった。 早めに到着できてラッキーと、思わず一同、胸を撫で下ろす。下界から担ぎ上げたビールで、明日への健闘を誓って乾杯。 夕方には雨も上がって、再び北岳が姿を現した。正面に地蔵岳のシンボルのオベリスクが、くっきりと見える。甲斐駒ケ岳から 鋸岳への稜線もかっこいい。皆眠いので、20時に就寝。私は車を運転した疲れか、一日中眠くて仕方がなかったので、 ぐっすりと眠ることができた

8/13
3時起床。ガスで何も見えない。本日の行動予定は、北岳、間ノ岳を越えて農鳥小屋まで。ガスの中、北岳頂上を目指して出発。 1ピッチ弱で、標高日本第2位の北岳山頂に到着、10名のメンバーと熱い握手を交す。周りは何も見えないが、とても幸せな 気分だ。気温は5℃で、半袖Tシャツでは少し寒いが、やせ我慢。相変わらずガスっているが、頭上が明るくなってきて、ガスが 晴れそうな気配がある。頂上でゆっくりした後、北岳山荘へ下りる。途中の八本歯コルへの分岐にて、本日下山するMさんと 別れる。ガスの一部が晴れてきて、下の方に北岳山荘が見える。北岳山荘に着くと、さすがに人が多くて、とてもにぎやか。 次第にガスが切れて、遂に富士山が姿を現した。これから向う中白峰、間ノ岳も、夏空の下、3000m級の稜線上に続いている。

22年ぶり3度目の北岳頂上にて イワギキョウが至るところに咲いていた
この辺りは高山植物の宝庫だ。今回は時期が遅くて枯れているものが多かったが純白の花を咲かせるハクサンイチゲ、 青紫のイワギキョウ、ピンクのタカネシシオガマ、黄色のミヤマダイコンソウ、など色とりどりで楽しい。中白峰を登る途中から 振り返る北岳は、さすが南アルプス連峰の盟主としてふさわしい威容で大変素晴らしい。私が翌日の下山に使う予定である北岳の トラバースルートが見えているが、八本歯コルに至るルートは北岳南面に付けられており、かなり急峻な斜面のトラバースのようだ。 翌日、実際通過してみるととこの観察は的中して、高度感あふれる(!?)凄いルートであった。
北岳の威容を振り返る ピンクのタカネシオガマ
間ノ岳に近づくと、ガスの中に入ってしまい何も見えなくなった。ふと前方を見上げると、雷鳥がいる。目をこらすと、 一匹だけでなく、2匹の子供を従えており、とても可愛らしい。北アルプスでは何度も雷鳥を見たことがあるが、南アルプスでは 私にとって初めてのことだ。間ノ岳ピークに着くと、丁度うまいことにガスが晴れた。ここからの北岳もカッコいい。これで、今年は 日本のNo.1、2、4を同じ年の夏に登ったことになる。間ノ岳を後にして、本日のキャンプ地である農鳥小屋へ。 間ノ岳の下りは結構急で、明日また登り返すことを思うと、めげるどころか逆にファイトが湧いてくる。
南アルプスで初めて雷鳥に出会う 農鳥小屋から望む雲が湧く農鳥岳
農鳥小屋に着いてから、翌日大門沢へは行かない私とKさんの2人で、空荷で農鳥岳ピストンに向う。Kさんから、 コースタイム1時間半に対して、『目標タイム1時間』と指示が出る。そんなに格別に急ぐつもりもないが、休むことなく 着実に足を進める。農鳥岳の登りの途中から振り返る間ノ岳の姿も、どっしりと落ち着いていて実にいい。最高点の西農鳥岳から 三角点のある農鳥岳の間が、ちょっとした岩場があり重荷だと嫌らしいが、空荷なので何ということもなく通過する。目標より 5分早く着いた農鳥岳頂上からは、今まで見えなかった南部の、塩見岳、荒川三山が見える。間ノ岳までの稜線に比べ、 農鳥岳まで足を延ばす人は少ないのか、静かな頂上であった。ほどなく農鳥小屋に引き返し、雲湧き上がる農鳥岳の姿を肴に、 贅沢な夏のひと時をメンバーと語らいながら過ごす。

8/14
いよいよ私にとって最終日。本隊は農鳥岳で、私は間ノ岳にて、それぞれご来光を拝むべく、2時に起床。天気は快晴、 冬の星座オリオンが天高く輝く。3時半、本隊と互いの健闘を祈り、固い握手をして別れる。10分ほど登ったところで、 熊ノ平分岐。ここで更に南アルプス南部を一人目指すKさんとも別れ、単身、間ノ岳に向う。ルートは、紛らわしい踏み跡が 多く、暗いと大変分かりにくい。何度かペンキ印を見失い、その度に元の道に引返す。一箇所、どうしてもペンキ印が見つからず、 3回往復したところがあった。一人が心細くなるのは、こんな時だ。間ノ岳頂上に近づくとともに次第に明るくなってきて、 もう道を迷うこともなくなった。『足が速いか、太陽が昇るのが早いか』、一歩一歩着実に踏みしめ、ピークでのご来光を目指す。

間ノ岳頂上にて一人スナップ 鳳凰三山の右側から昇る朝日
傾斜が緩やかになると、一頑張りで間ノ岳。迷いながらも、農鳥小屋から1時間10分で登ってしまい、日の出まで十分に時間がある。 本日一番乗りの、誰もいないピークで360°の贅沢な眺望を楽しみながら、ご来光を待つ。後から登ってくるヘッドライトが 2つあったが、一向に近づいてくる気配がない。多分、私と同じように暗闇でのルート探しに苦戦しているのだろう。 ご来光を待っている間に上半身Tシャツ1枚の身体が冷え切ってしまい、毛のシャツと合羽を着込む。持参の温度計は3℃を 示している。寒いはずだ。間ノ岳のご来光独り占めか、と思っていたら、5時少し前に北岳山荘から単独行の人が、息を切らして 登ってきて、間に合ったと喜んでいた。5時5分頃、鳳凰三山の少し右から日が昇る。富士山ではご来光を逃したが、 日本四位の間ノ岳で無事拝むことができて、とても幸せ、感謝感謝。2週間前に登った富士山は勿論のこと、農鳥岳、荒川三山、 赤石岳、聖岳、塩見岳、仙丈岳、鋸岳、甲斐駒ケ岳、北岳、鳳凰三山、と続く山並みは朝日を受けて輝いている。名残惜しみつつ、 間ノ岳を後にして、北岳山荘へ向う。ここから、一気に人が増える。後から後から登ってくる人たちとすれ違う。6:10に着いた 北岳山荘は、まだこれから出発という人も多い。下から登ってくる人とのハシゴの順番待ちが予想される八本歯コル付近の 通過を考えると、混雑する前に出発できたことは幸いだった。
朝日の中に霞む富士山 北岳トラバースルートから振返って望む間ノ岳
八本歯コルへは最短ルートであるトラバースルートを使ったが、これが思ったより遥かに難所。平均60°ぐらいの急斜面に つけられたルートは、足元は奈落の底が見えるようで、一歩踏み外すとお陀仏の、手摺付きのハシゴの連続。ハシゴとハシゴの間の 斜面には、可憐な高山植物が咲いているのだが、ゆっくり楽しむ余裕がない。高度感は、大キレット、不帰ノ剣とも勝るとも 劣らないスリルで誠に肝が冷える。よくこんなところへ来るなと思ってしまった中高年の人たちを抜いて、八本歯のコルへ。 ここからの下りも、ハシゴは続く。北岳バットレスを見ながら、スリル満点の下り。下から登ってくる人とはまだ出会わない。 30分程下って、ハシゴも終り、ジグザグの斜面の下りに入る頃から、予想通り次から次へと登ってくる登山者とすれ違い、 時間をロスする。大樺沢は雪渓が残っているが、左岸にしっかりした夏道がでており、雪渓を歩くことはない。登ってくる登山者 とのすれ違いに消耗して、ようやく広河原山荘に辿り着くと、思わず一本。涼しげな野呂川の流れと正面の高嶺・赤薙沢ノ頭の 稜線を肴に、生ビールを乾いた喉に流し込む。
大迫力の北岳バットレス 大樺沢に残る雪渓
9:55 広河原バス停着、10時半発のバスに乗り込むも、つい寝過ごしていまい、気付いた頃には芦安を10分くらい通り過ぎていた。 反対方向のバスに拾ってもらい、市営駐車場への分岐で下してもらった。汗をかきかき約10分ぐらい林道を歩き、やっとのことで 芦安市営駐車場に辿り着いた。風呂で充実した3日間の垢を流し、帰途に着く  

山名 北岳〜農鳥岳
山行日 06年8月11日(金)〜
 8月14日(月)
メンバー 私、他9名

 

 

行動記録

 
8/11(金) 晴
19:30 刈谷発
0:40 道の駅しらね
 
8/12(土) 曇
3:45 起床
4:15 発
4:40 芦安市営駐車場
5:10 バス発
6:10 広河原
6:20 発
7:30 1900m
7:40 発
9:00 白根お池
9:20 発
10:10 2450m
10:30 発
11:15 2700m
11:30 発
12:35 肩ノ小屋
 
8/13(日) 霧→晴
3:00 起床
4:50 発
5:30 北岳
5:55 発
6:25 八本歯コル分岐
7:05 北岳山荘
7:30 発
8:20 中白峰
8:40 発
9:30 間ノ岳
9:50 発
10:35 農鳥小屋
11:10 発
12:05 農鳥岳
12:50 農鳥小屋
 
8/14(月) 快晴
2:00 起床
3:30 発
3:40 熊ノ平分岐
4:40 間ノ岳
5:05 ご来光
5:15 発
6:10 北岳山荘
6:20 発
7:10 八本歯のコル
7:15 発
8:15 肩ノ小屋分岐
8:25 発
9:40 広河原小屋
9:50 発
9:55 バス停
10:30 バス発
乗過ごして引返す
12:35 芦安市営駐車場
13:40 発
17:30 自宅着


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