釣った魚を放す



 自分で釣った魚を放してやる。
食べることを目的に釣りが成り立っていた昔であれば、考えられないことだったかもしれない。
しかし、最近は魚が少なくなり、どこに行ってもあまり釣れなくなってしまった。
釣った魚を放してやるというのは、最近の渓流釣りではあたりまえになってきている。
釣り人達の間ではキープ派、リリース派に別れてよく議論が行われている。
私はどちらかというとキープ派ではあるが、最近は魚をとることが少なくなった。
それは最近キープするサイズが釣れなくなってきているというのもあるし、
これまでずいぶん釣ってきたのであまり魚をとることに執着しなくなったというのが正直なところである。

 私の知り合いに全く魚をとらない人がいる。
たとえ尺を超えるような大物が釣れたとしても、やはり魚はとらないのである。
これはすばらしい事だとは思うが、何だかもったいないような気がしないでもない。
私としてはやはり食べる楽しみは渓流釣りの楽しみのひとつだと思っているからである。

 一応、私のキープサイズは21cm(7寸)以上である。
私が釣りをして満足できるかどうかは、このサイズが出るかどうかにかかっている。
釣り応えにしても、食べるにしてもうれしいと思う最低ラインだと思う。
それより小さい魚は全て放している。
放してやれば18cmクラスの魚は1年で確実に21cm以上に育つからである。
また来年きた時は同じサイズが釣れるという計算なのである。
ついでに産卵して魚も増えてくれるはずだと思っている。

 しかし、このクラスはなかなか釣れなくなってきているのである。
それは16〜20cmのうちにみんな釣られてしまうので大きくなれないのである。
確かにキープするのはだいたい16cm以上が一般的なサイズである。
だが、はたしてこれはいいのだろうか?
残った15cm以下の小魚は確実に産卵して増えるのだろうか?
魚はどれくらいのサイズになれば産卵するのかは良くわからないが、
最近の魚の減り具合からして16cm以上がかなり残っていないと魚影は保てないような気がする。
 放流のある所で釣るならまだいいが、放流のない上流域でこのような釣り方をされてしまうと、
魚はすぐにいなくなってしまうと感じているのである。

 それでもこのクラスをキープする人達を私は責めることはできない。
なぜなら毎週のように釣りに出かける私と違い、
年に数回しかやらないような人は本当に楽しみにしてきているはずである。
キープサイズが16cm以上ならその人達はキープして当然だと思う。
そして年間でみたらトータルの数は私よりも少ないのではないだろうか?
私としてはキープするなとはとても言えないのである。
 10尾釣れたら10尾、20尾釣れたら20尾と持って帰るような人は最近はずいぶん少なくなったように思う。
多分、16cmというのも守ってくれていると思っている。
ただ釣り人の数が多くなりすぎただけなのだ。

 私は放流のない所では基本的に釣った魚は放すようにしている。
でもそれは全てではない。渓に泊ったり仲間達と集まるイベントの時などにはキープしたりする。
だからそれを自慢できることだと自分自身では思ってはいない。
 その点、放流のある場所であれば21cm以上なら数尾まではしっかりとキープしたりすることもある。
補充がきくし、どうせ放しても他の人に釣られるからと半分あきらめているのである。
それなら「もう少し小さい魚もとっていいのでは?」と考えることもあるがそれはやらない。
なぜなら放流の魚でも放してやることで自然産卵し、新たに放流された魚と合わせて魚影の濃い
いい釣り場に少しでもなってくれればと思っているからである。



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