1999.10.1 後楽園ホール

NJKF achievement 8


楠本勝也 対 杉本金太郎(キング)

5R判定勝ち(50-47、50-47、50-47)

 中島稔倫との王座決定戦で惜しくもベルトを取り損ね、今日が出直しの楠本。前日は珍しく眠れなかったのだという。わくわくするような強豪との対戦より、「負けられない」試合のほうが緊張するものなのだろう。
 相手は杉本金太郎。粘りが信条の選手だ。前回、中島にまさにその「粘り」にしてやられただけに、嫌な緊張感が控え室を包んでいた。

 試合は、静かな立ち上がりとなった。杉本の左ミドルに楠本もミドルを返す。いつもの重いローではなく、左ロー、左ミドル、右ミドルなど、多彩な蹴り技でリズムをつかみにかかる。試合を支配しているのは常に楠本だが、相手を効かせるような攻撃はない。
 中盤以降、徐々に楠本が右ロー、パンチで攻勢に出る。しかし、百戦錬磨の杉本は、パンチをもらってもけっして連打は許さない。ますます力み出す楠本。「この展開は……まさに中島戦と同じ展開」、セコンドも、客席も、楠本自身も嫌な気がしたらしい。

 そうして迎えた5R。蹴りを散らすという意識がようやく報われる。開始直後に何気無く出したハイキックが杉本をとらえ、ダウン! 試合後「やっぱ無意識で出した攻撃のほうが倒せるんですね」と楠本自身が語ったほど、力みの抜けた唐突な一発だった。ちなみにハイキックでダウンを奪ったのは初めてのことだそうだ。

 ダウン後、まだ足がふらつき気味の杉本に、ようやく「らしい」ラッシュを仕掛ける楠本。あと一歩のところまで追い詰めたが、結局とらえきれなかった。

 控え室で記者団に向って「次はワンチャンノーイあたりと」と、往年のムエタイ名選手の名前をあげていた楠本。「その前に……」そして「その後は……」と思っている人は多いのではないか。


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