2003.4.29

NJKF 小国ジム主催興行



古川拓郎 対 小川信治(G-1)
3R判定ドロー

わずか3週間前、ウィラサクレック興行で試合をした古川。非公式戦とはいえ、ルールはまったく同じ。ヒジで1RTKO勝ちをおさめたものの、臑を負傷。100%の練習ができない状態で、この試合に挑んだ。

それでも「痛い、かゆい」は言わない古川。熱戦に期待したが、相手は強敵だ。G-1の小川は、これまで「ミシマ」のリングネームでプロ2戦。オーエンジャイではキャリー宇佐美を失神KO病院送りにしているほか、タイ人とも互角の戦いを繰り広げている。こと攻撃力に関しては、下手なランカー以上の逸材と言って良い。試合後、石毛慎也が「6ー4で勝てないと思っていた。半年早かった」と語っていたが、まったく同感である。

序盤は、予想通り、小川の攻撃力が爆発した。左構えからの左ミドルとパンチの攻撃が古川を襲う。早くも左目を腫らす古川。

しかし、北星の先輩陣が唯一認めている練習をしている古川。まったくひるまず、ミドル/ローを中心に反撃する。あっという間に、形勢を互角に戻す。

1R終了。Gー1サイドを見ると、小川は明らかに疲れている。詳細は明らかではないが、ウエルターからライトに体重を下げてきた小川。げっそりした頬を見る限り、減量が相当きつかったと見受けられる。「絶対、勝てる!諦めずに攻めろ!」との指示を出す。

疲れている小川を、練習で培ったスタミナを武器に休みなく攻め立てる古川。形勢は明らかに古川へ。ローで相手をくの字にし、ヒザで悶絶させる。「KOできるんじゃないか?」とすら思えそうな展開。しかし、小川の攻撃力は驚異的。一発のパンチで展開をまた元に戻す。

まったく休み無く続く一進一退の攻防に、場内も緊迫する。そのままの展開で試合終了。「勝った…かな?」と思ったが、1ー0でのドロー(1名は古川の勝利を指示)。無念のドローとなった。

試合後、控え室で号泣する古川。同室だった小国ジム勢も、てっきり負けたと思い込んでいた程の落ち込みぶり。半年前であれば、まったく相手にならなかった相手に対してのこの好試合。落ち込む必要はないと思うが、それだけ古川の視線は高いのだろう。

勝利はつかなかったが、関係者からも絶賛された古川の闘いぶり。某選手から「野崎さんが誉めるなんて珍しいですね」と言われたが、ずっと見てきた身としては、この日の古川は誉めざるをえない。修斗の礎がある石黒ほどの快進撃はのぞめないだろうが、カメのようにコツコツとランカーにのぼりつめることを確信している。

●その他の試合

メインの河原塚対孫悟空丸山戦。ドローに終わったが、最高の試合だった。何が最高かって、河原塚の闘いぶりが最高だった。デビュー前から知っているが、才能は抜群。しかし、悪い意味でディフェンシブなムエタイスタイルになってしまい、結果を出せずにここまで来た。しかし、この日は一転。持ち前のテクニックをアグレッシブに活かした、攻撃的なスタイルに大変身。孫悟空丸山を翻弄した。

しかし、結果はドロー。現状のNJKF(というかキック全体)の判定基準だといた仕方ないが、この試合がドローでは「キック」ボクシングの看板倒れ。いくら蹴っても、パンチでラッシュされたらすべてチャラなんて、良いとは思わない。そもそも「ダメージ重視」というが、ローやヒザのダメージは目に見えない。「顔に出さなければ」ダメージじゃないのだろうか? 選手はダメージを見せない演技者なのだ。表情や印象で判断するのはおかしい。

選手に「どの技をもらうのが一番嫌か?」をアンケートしてみると良い。パンチではないはずだ。ローや、ヒザをまともにもらうのがどれだけ嫌なことか。ちなみに、私が現役時代、通算で「効いたパンチ、痛かったパンチ」をもらったのは、片手で足りる。アドレナリン出ているから、ちょっとやそっとのパンチは何ともないんである。

よく「全体を通してみれば、明らかに●●が勝っていたが、10ー9をつけるようなラウンドがなかった」というレフェリーのコメントを聞くが、全体として「どっちが勝ったか?」を決めるのが、本来の判定の趣旨だろう。

ベストな選択とは思えないが、現実的には「0.5ポイント」をつけるべきだと思う。そのほうが、「事実上の勝者」と「結果としての勝者」が異なる試合は少なくなると思う。もちろん、当ててるだけの攻撃や、守るだけのテクニックを評価するわけではない。

どうだろう?

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