2002.12.22

NJKF/PITジム主催興行



この日は、初めてのPITジム主催興行。

昔は、北星主催興行なんてのが後楽園ホールで行われたりしてたんだが、今は夢のような話。自主興行できるジムなんてごく少数だろう。そんななかPITジムが興行を主催するという。いったいどんな興行なのか。

会場はバトルスフィア。プロレス会場として使われることがあるらしいが、わしは聞いたことがない。しかも、綾瀬からそう遠くないところにあるという。へ〜どんなところなんだろ??……と思いながら、キャリー宇佐美のストロベリーカーで会場へ向かった。

着くと、そこにあったのは、「格闘空間」と看板がかかった「倉庫」。なんでも倉庫跡を買い取って、格闘技会場にしたそうな。こんな辺鄙な地域に、なんと物好きな! 誰がいったい何の目的で作ったのか、興味津々だ。


これが格闘空間だ!

だが、キック界としては、安く使える会場が多くあるのは悪いことじゃない。良い前例となるためにも、注目の興行だ。

倉庫……じゃなかった、会場入り口付近には、酒や食事を売っている屋台らしきものも。中へ入ると、こんな感じ。→

そして、興行はまず、チャモアペット先生のワイクーから始まる。準備「OK!」と
いうチャモ様。しかし、なぜかTシャツを着たままだ。どうやら、腹部を隠したいら
しい。しかし、今日はチャンピオンベルトも持参していた。それをつければ、まあ多少はごまかせる。無理矢理Tシャツを脱がし、いざリングへ。ワイクーを披露した。
続いて試合開始。

古川拓郎 vs 今村幸徳(小国)

3R判定勝ち(判定3ー0) 
(29ー30、28ー30、28ー30

北星ジムの若手では、郡を抜いた練習熱心さを見せる古川。センスがあるとは言えないが、着実に練習をこなし、オーエンジャイでぶちのめされながらプロのリングまではい上がってきた。

だがプロのリングは甘くない。正直、「デビューは来年春くらいのほうが良いのでは?」と思っていた。しかしそこは北星ジム。本人も知らないうちに、というかプロテスト合格すら知らされないうちに試合が組まれていた。あぁ恐ろしや。

それから1か月。オーバーワーク気味に練習を重ねてきた古川。やれることはすべてやって、プロデビューのリングに上がった。

立ち上がり、ミドルキックを中心に攻める古川だが、相手の技術のほうが若干上。カウンターのパンチをいくつかもらう。だが、すぐにやり返す気持ちの強さを見せ、このラウンドはイーブンで切り抜ける。

2R。徐々に古川のローがあたり出す。もともとローは下手くそな古川。試合1週間くらい前に、ちょこっとローのミットを持ってやったのだが、そのとき教えたことをそのまま実践している。いやあ見事なもんだ。そして、首相撲からのヒジ打ちも、見事に決まる。いつ、そんなことできるようになったんだ?

そして、3R。相手選手も必死で反撃するが、古川も気持ちでは負けない。さらにロー、パンチ、ヒジをヒットさせ、判定で完勝を収めた。

正直、セコンドもびっくり。古川の現在の実力、デビュー戦であることなどを考えれば、100点満点をあげてもいいような内容。特に気持ちの面では120点。今後に期待大だ!

ガッツちしまつ vs 山崎優(PIT)

判定3ー0
(29ー28、30ー27、30ー27)

古川の少し先の道を進んでいるガッツちしまつ。グローブ空手優勝、デビュー戦惨敗のあと、悲願のプロ初勝利……とジェットコースターのようなキリアだ。今回は、内容も伴った二勝目を期待した。

出だしは順調だった。両手を前に出し、押し込んでローを打ってくる山崎に対し、ちしまつはミドルで迎撃。相手がひるむや積極的にパンチも仕掛け、1R終盤に右ストレートをヒット。強烈に決まった一撃で、山崎は甚大なダメージを受ける。KOのチャンスにちしまつも積極的に仕掛けるが、ここは凌がれ第1ラウンド終了。

そして2R。ちしまつの技術面での優位は変わらない。ときおりハイキックを混ぜ、変幻自在(ちょっと誉めすぎだが)の攻撃を見せる。KO勝利は時間の問題と思われた。

だが、そこから我々セコンド陣は信じがたい光景を目にすることになる。

2R中盤、秒数にすれば試合開始わずか約300秒。日ごろ鍛えに鍛えているはずのキックボクサーにとってはあり得ない、スタミナ切れを起こしたのだ。それも、誰の目にもわかる、明かなガス欠。

こうなったらどうしようもない。技術も気持ちもへったくれもない。ガソリンが切れたら、どんな高級車も走らない。ただ、相手の攻撃を凌ぐためだけに、残りの約4分を闘うことになった。

結果は勝った。

「勝負ごとなんて勝てばいいんだ」とは、私も同感である。だが、この勝利は、あまりに酷い。2R! 2Rすよ、2R中盤、300秒。それでガソリン切れた選手に「おめでとう」とは口が裂けても言えない。

体調が悪かったわけではない。本人は「どうしてだろう?」とクビをひねるが、周りはひねらない。その程度の練習しかやっていないし、そういう生活しかしていない。必然のガス欠だ。

性格の悪い男ではない。むしろ好漢である。マジメがどうかといわれたらマジメだろう。だが、彼の「頑張っている」は、中学生が運動会の徒競走に向けて頑張っているレベルのもので、プロキックボクサーの「頑張っている」ではない。

以前、彼には言ったことがあるが、大人は笑いながら冷たく人を見限る。今回は、チャモアペットトレーナーも、楠本野崎石毛もセコンドについたが、次は……わかんないよ。

石黒竜也(東京北星)vs 宮原勇輝(藤)

1RKO(34秒、右ハイキック)

この試合は観ないで帰るつもりだった。この大バカ野郎は、試合三日前に「朝まで呑んじゃいましたよぉ〜」と悪びれず言っていた。こんなキックをめたヤツのセコンドなどしたくない。事実、楠本勝也はさっさと帰ってしまった。私もとっとと帰るはずだった。

だが。。。古川が素晴らしい勝利を収めてしまった。祝勝会をするなら、それに付き合ってあげたい。仕方ないから、残ることにした。

石黒の試合は、対戦相手のキャンセルによって、流れたはずだった。それが、藤ジム側が「大丈夫だから」と送り込んできたのがこの選手。なんとデビュー戦だ。曰く「魔裟斗以上の逸材」だとか。石黒の話によると「キック歴1か月半」だとか(伝聞の話なのでホントのところは知らない)。

もちろんこの選手に罪はないが、まあ、北星としてはなめられたものだ。いくら石黒とは言え、この試合には勝って欲しい。

しかし、セコンドにはつかず、リングサイドで観戦した。チャモ様もセコンドにはつかず、隣で観戦した。

1R。例のごとく、ドーッとつっかける石黒。相手も応じる。打ち合いだ。相手選手、たしかに素材は良いようだ。一発一発にパワーがある。しかし、キックボクサーとしての総合力を考えると、「石黒のほうが全然上だな」と開始30秒で思った。

そしてその4秒後。石黒のハイキック一閃。相手選手は、硬直しながらマットに崩れ落ちた。危険な倒れ方だった。

見事な勝利だ………が、その直後、石黒は相手選手を踏んづけやがった(困)

「コラ! イシグロ!!」

事務局のおばちゃんに怒られている。完全に目をつけられている。役員席にいた玉城会長は居心地が悪そうだ。

これで4戦全勝(3KO)の石黒。次は5回戦なのだろうか。悪童キャラは、それなりにウケるだろう。でも、いつか必ず落とし穴がある。実力的にも、今のままで5回戦も通用するとは思えない。

わからせるためには、一度負けた方がいいと思ったのだが……

とはいえ、3戦全勝の北星ジム。翌日一時帰国するチャモアペット先生のプチ壮行会も兼ねて、祝勝会が行われた。


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