2001.9.8

NJKF CHALLENGE TO MUAYTHAI 9



野崎勇治 対 高野洋一(神武館)

  5R判定勝ち(50-48.50-50.49-48)

ビデオを鑑賞した上で、試合展開を振り返っておきたい(あんまり振り返りたくないのだが)。

勝たなきゃいけない理由はいっぱいあった。トーナメントということ。現実的に考えて、トーナメントの敗者にチャンスは与えられないだろうし、与えられても享受する気にはなれないということ。連敗は避けたいということ。NJKFとK-Uとの交流戦であること。

あと、ファーキャウ体制で初勝利をもたらしたいこともあった。ファーキャウが練習を見てくれるようになってから、練習の質は確実に上がった。しかし、前回、私も楠本さんも結果が出せなかった。新トレーナーとして、これは辛いことだろう。今後、継続してしごいてもらいたい意味からも、どうしても勝利を得たかった。

普段、作戦というのはほとんど立てないようにしているのだが、「打ち合いでは勝つ見込みは薄い」「一番確実に勝てるのは接近戦」という意識は強く持っていた。そこにファーキャウからの「序盤は左ミドルとジャブのみ。右は蹴るな。中に入って首相撲。4,5R勝負」というアドバイスを受け、まあほぼ戦略が固った状態で試合することになった。

ビデオで観ても、とりあえず戦略通りの試合はしているようだ。

1R、ジャブとミドル、前蹴りでペースを握ろうとするが、うまくヒットしない。戦前から感じていたことだが、高野選手、ただのファイターではなく、距離感が非常にいい。いわゆる「アウトボクシング」をさせてもらえない。「このままだといつかパンチをもらうな」と判断し、自分から接近戦に持ち込むことにした。

首相撲の展開では圧倒的に優位に立てると思っていたのだが、結構対応されたのが第一の誤算。思うように的確なヒジ・ヒザを入れられず、少し焦る。そして、高野選手は離れ際にハイキックを狙ってくる。これは全部見えていたが、印象は良くない。が、「とにかく2Rまでは我慢しよう」と地道に組んでプレッシャーをかける。

3R。「もういいだろう」と左右ローを攻撃に組み入れる。結構、これが何発もヒットした。結構重いローが入っている。ちょっと効かせていたかもしれない。ここでローで畳み込みたかったが、相手もすぐに修正してきた。ローの蹴り足をとられる場面が何度か続いた。ならば、と押し込んでローを打とうとするが、相手も必死で押し返してくる。この力が非常に強くてびっくりした。押し合いでこれだけのプレッシャーを感じたのは初めてだった。これが第二の誤算。

私は相手を押して攻撃したい、相手は押し返してくる。自然ともつれて首相撲の展開にならざるをえない。自分ではあまり記憶がないのだが、後半の首相撲は、私が意図的にしかけているのはなく、仕方なくそうなっているようだ。結局、「組んだ後どれだけ優位に立てるか」の勝負になった。

その展開になったら、まあ一日の長がある。4R後半は明らかにヒザで優勢になる。このラウンドは確実にとったと思う。

5R。どういうつもりで闘ったのか、よく覚えていない。声をあげながらパンチで前進する高野。パンチで応戦する気はない、でも下がるわけにはいかない私。結局、もみあいへしあいが最後まで続いて、タイムアップ。最後は気力でおされていたと思う。

そして、試合後、なんか思うような試合ができずイヤになって、リングに座り込む私。最低だ! 後輩だったら「ちゃんとしろ!」とぶん殴っているところだ。これがこの試合、最大の反省点。どうしようもない。

さて、この試合NKBトーナメントということで、引き分けの場合だったら延長がある。延長を想定してイスに座って判定を待つ。内心「もう延長は勘弁してくれ!」という気持ちだった。延長してたら、たぶん負けてただろう。気持ちが切れていた。

しかし、結果は2対0の判定勝利。内容はともかく、この判定は妥当かな、とは思った。確実にとったのは4R。「48」がついたのは、3Rのローの攻勢だろう。私に「マイナス1」をつけたのは、5Rかな? ま、判定はどうでもいいや。倒さなきゃと思うし、倒せたはずだ。こことあそことあれを直さなきゃ、と思った。

ビデオを見ると、セコンドの他に、ヌアトラニーも大声をあげて声援を送ってくれていた。実はヌアトラニー、試合の前々日、1時間近くに渡って、入念なマッサージをしてくれていた。こんなビデオの中の名選手にそこまでしてもらって、とても感謝・感激している。

とりあえず、自分は「ド下手くそ」だということがよくわかった。特にヒザ。あの相手の首相撲を崩せないとは、自分に大いに失望した。そんな身分では何も言えないが、今後もNKB優勝ではなく、優勝後を想定してレベルアップしたい。目標はあくまで強いムエタイと勝負してみたいということ。優勝したら組まれるというタイ国強豪戦、今やったらホントに殺されてしまう。優勝してから意識を切り替えても襲い。そこを想定してレベルアップを図れば、NKBトーナメント対策にはおつりが来るだろう。

ドンパチの打ち合いを期待して来場してくれた方には、申し訳ない試合内容だった。だが、現状でこの試合をものにするには、あの方法が最良であり、精一杯であった。

現状から脱皮して、いつか強いタイ人をコテンパンにぶちのめしたい。

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