2001.10.8

NJKF CHALLENGE TO MUAYTHAI 10



千島克彦 対 金井秀行(小国)

  3R判定負け(3者とも28-30)

戦前から、デビュー前としては空前といっていい「噂」が飛び交っていた千島。「キックじじい放談」を口火として、当HPとしても、あおりにあおらしてもらった。「グローブ空手王者」という客観的な勲章も手伝って、期待感は更に煽られた。当日、千島を見に来たお客さんも、きっといたに違いない。

「プレッシャーを感じていた」という千島だが、自らホームページを公開しているように、根は目立ちたがり屋だ。それが証拠に、デビュー戦にも関わらず、「日本陸軍」の格好をして入場。これで「注目されすぎて……」などとは言わせない。初めて現実の千島を見たキックファンたちの期待は、ピークに達していた。幻想が膨らみすぎてはじけとびそうだったことだろう。

だが、ゴングがなると、別の意味で「幻想」は崩れてしまった。

私は、千島を必要以上に煽った張本人の一人だが、決して根拠無く煽ったわけではない。「グローブ空手」での動きは、我々の想像を遙かに超える素晴らしいものだったし、その後のオーエンジャイでもいい試合をしていた。超速太郎戦など見事だった。「楠本からダウン」云々はともかく、デビュー戦としては並以上のものを見せてくれると確信していた。

しか〜し、開始早々、千島の動きが重い。ミドルを軸に軽快にポンポン攻めるのが彼の持ち味なのだが、先手はいつも相手の金井選手。ガードを下げたところにパンチももらっており、ヒヤヒヤの序盤だった。ただ、1R後半からは、ジャブが当たりだす。これが当たれば、千島の距離が作れる。「2Rからは大丈夫だろう」と思った。

その2R。そろそろ明確に攻めに行きたい千島。だが、中盤だったろうか、ガードを下げたところを左フックを食らいダウン。もともと噛み合わなかった歯車が、さらに狂うことになる。

もともと千島は、相手を一撃でなぎ倒すハードヒッターではない。テンポのいい出入りやカウンターのミドルキックで相手を翻弄し、後半手数で追い込むタイプだ。倒せる武器は、グローブ空手で何度もダウンを奪ったバックブローがあるが、これも相手が打ってきてこそ決まる技。守る相手を強引になぎ倒す技ではない。

ダウンを奪われ、焦る千島。大振りが目立ち始め、1R後半にいい感じで決まっていたジャブは皆無になった。3Rに入ってもペースは変わらない。技術的には間違いなく上回っていたと思うが、狂った歯車では有効な攻撃は奪えない。首相撲からの膝蹴りは有効であったが、負けてる最終ラウンドで使う技ではない。結局、最後までちぐはぐのまま終了。

千島の不調に原因がないわけではない。だが、本人が黙っているので、黙っていよう。ま、実力で敗れたことに大差はない。屈辱と恥辱に耐え、本当の新星になる日を待とう。

キャリー宇佐美 対 目黒勇気(小国)

  3R判定ドロー(28-28、28-29,28-28)

あの感動の初勝利からどれくらいが経っただろうか? 再びCassスポーツクラブにキャリー宇佐美がやってきた。前回のヤングファイトでは、その歓喜の涙で主役の座を勝ち得たキャリー。二興行連続の主役を狙ったキャリーだが、その前に強敵が立ちはだかった。

目黒勇気

前回だか前々回だかのNJKF興行では、そのゾンビぶりをいかんなく発揮。「メジャーデビュー」を果たした目黒。しかし、その濃いいキャラクターは、以前から狭く知られていた。オーエンジャイではキャリーとも直接対戦。キャリーも「いつか目黒とはやるだろう」と、常にチェックを怠らなかったという。

キャリー宇佐美 対 目黒勇気

実は、これはアントニオ猪木対ジャイアント馬場に匹敵する、夢のカードであったのである。

そんな夢の対戦のゴングが鳴った。雄叫びをあげて突っ込んでくる目黒。実に多彩な攻撃を仕掛けてくる目黒。離れても組んでも、キャリーの上を行く。「目黒くんうまくなったなぁ」というのが私の感想。

しかし、「入れ込んだ」状態で試合をすれば、必ずその反動が来る。1R終盤には、早くも目黒の息が荒くなってきた。スタミナには自信のあるキャリー。じわじわと反撃を開始する。組んだ状態でも負けなくなってきた。そして、それをはじき飛ばしてのパンチも入り出す。ローもいい感じで入ってきた。

そして2Rのどんくらいだったか、キャリーのはなったパンチで目黒が転倒。すると、そこで「ダウン!」のコール。北星側からしたらちょっとニヤリのダウンだったが、ダウンはダウンだ。キャリーの猛攻に勢いがつく。

しかし、そこはゾンビ目黒。キャリーの攻撃が激しさを増せば、目黒の反撃も激しさを増す。起きあがり小坊師のようなシーソーゲームも残り1分。ダウンのポイントを考えるとキャリーの勝利は確実……と思ったが、ゾンビ目黒は我々の想像の上をいった。起死回生の左ハイキックがヒット、キャリーまさかのダウン!

その後の1分間。私が試合前形容した、まさに「かくも美しき泥試合」とも言うべき、ハートとハートの闘いが繰り広げられた。

死闘の結果はドロー。

だが、またしてもMIPは、キャリーと目黒が手にすることになった。絵になるなぁ、この二人。間違いなく再戦になるだろう。魂と魂のぶつかり合いが大好きな、延藤広報がこのゴールデンカードを放ってはおかないだろう。だが、小国ジム側としても、次回の自主興行の目玉にとっておきたいはずだ。今後、この黄金カードを巡って、小国ジムサイドとNJKFの駆け引きが行われると思われる。

キャリーの最終章は、まだまだ先である。


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