2000.4.20 後楽園ホール

日本キック連盟興行


松浦信次 対 小野瀬邦英(渡辺)

2RKO負け

 松浦信次の全盛期っていつなんだろうか? 我々の世代(野崎、石毛、井上など)が北星ジムの一員となって以来、「すごい試合」には巡りあっていない。練習で、オーエンジャイで、その強さ巧さは十二分に承知しているものの、後楽園ホールで強い松浦信次を観たことがない。3回戦時代に新田明臣を右ストレートでKOで下した試合、伊達秀樹を同じく右ストレートで1RKOした試合を観たのは、ビデオでだ。タイトル獲得した船木鷹虎戦あたりにようやく我々はジムに入ってきたのだ。そんな我々にとって、今回観た松浦信次は初めて目にした、まちがいなく「かっこよく、強い松浦さん!」だった。

 試合前、松浦は「前に出てくるところを前蹴りだけでもいいのでないか(パンチには徹底的に付き合わないという意味で)」と思っていたという。しかし、序盤思ったより小野瀬選手が前に出てこず(と本人は思ったらしい)、「だったらパンチ出すか」と出したパンチが当たってしまった。しかも効いている。足がガクガクしている相手を観たら、打ち合いに行くのが本能。これには小野瀬選手も「ああ来るとは思いませんでした」と松浦に言っていたので、かなり面食らったらしい。
 もともと、松浦の主武器は右ストレート。戦前の作戦はどこへやら、壮絶なパンチの打ち合いとなった。

 しかし、パンチでの打ち合いはやはり小野瀬選手の土俵だったのか、カウンターの左ストレートをもらい唐突にダウン。やっぱダメなのか、との諦めムードが漂う。しかし立ち上がった松浦は「来いよ!」とばかりに小野瀬選手に手招き。凄い形相でさらなる打ち合いに挑んだ。「こんな松浦さん観たことがない!」。

 ダウン以外は互角と言っていい内容で、1Rは終えた。そして2R。松浦の左縦ヒジが小野瀬選手を捉える。かなりの流血。おそらくドクターチェックをしていればその場で終わっていたであろう深い傷だ。松浦も「早くチェックしろよ!」と思ったらしい。「大谷とやったときアピールばっかしてかっこわるかったからよ〜、なんか恥ずかしくてアピールできなかったんだよなぁ」とは本人の弁。ともあれ、チェックは入らない。血ダラダラなのに。
 フィニッシュを焦った松浦は、力任せの打ち合い。これはスタミナを使う。ラウンドの後半には小野瀬が盛り返す。そして得意のボディーの連発!! ダウンした松浦は10カウントで立ち上がれず、フィニッシュ! 打ち合いでのスタミナの差が出たか。

 主役はもちろん小野瀬選手であることに異論はない。NJKFウエルター勢相手に2連勝。試合前のリップサービス。入場の派手な演出。そして打ち合って、必ず倒しての勝ちを狙う姿勢。まさしくプロ。これは北星好み。はっきり言って凄い!!

 しかし、松浦信次を応援する立場の人間にとって、敗れた松浦も負けず劣らず輝いていた。そう思うのは身びいきだろうか。これからもっともっと強い松浦信次が観られるかもしれない、そんな期待を抱かせてくれる一戦だった。

【雑記】
 1Rダウンを奪われて帰ってきた松浦さんにセコンドについた延藤さんがしたアドバイスに、みんな絶句。なんと「カメラの前でガッツのある顔をしろ」。。。

 試合後、松浦さんも「試合中にカメラ目線なんてできねえよ」、我々セコンドも「カメラの位置なんて目に入りませんよ」と言ったのだが、延藤さんは「俺はテレビカメラの前でわざと大技したよ」とサラリ。「そのほうがインパクトあるだろ」だそうです。とことんプロだ、この人。

 これ観てる他のジムの選手の方。試合中にカメラの位置気にしますか?

 

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