2000.11.26 後楽園ホール

NJKF Millenium Wars 10



松浦信次 対 青葉 繁(仙台青葉)

5RKO勝ち

 一応この観戦記、普遍性を持たそうと思って先輩も敬称略で書いているが、さすがに松浦さんを呼び捨ては心苦しい。というわけで、敬称有りで。

 この試合が決まった直後、私は玉城会長に「松浦は次で辞める」と聞いていた。「え〜!! せっかく調子が上がってきたのになんで???」と疑問に思っていたが、真相はこういうことだった。

 当初、組まれたカードは大谷戦。そして勝者が青葉とタイトルマッチというレールが敷かれていた。これが松浦さんには納得がいかなかった。いずれも先のウエルターリーグで勝っている相手。なのに、また一からやり直させられては、気持ちが燃えない。ただでさえ、引退を撤回してまで戻って来た身。こんな試合をやるために復帰したんじゃないし、「ウエルターリーグは何だったんだ?」ってことにもなる。一応、NJKFではトップの成績を残し、現王者をKOしたのだから。

 ところが、大谷が負傷のためこの試合をキャンセル。いきなり青葉とタイトルマッチという展開になった。松浦さんにとって「タイトルマッチだったら話は別」となった。モチベーションはあくまで、「青葉とのリマッチ」じゃなく、「タイトルマッチ」だったそうだ。

 話は突然変わるが、松浦さんの実像は「真面目一辺倒」に見える見かけとは、かなり異なる。昔はかなり悪かったらしいし、脳天気というか呑気というか、かなりお茶目である。そして、この日もやってくれた。当日の朝の計量場所を間違えたのである。NJKFの事務所で計量だったはずが、後楽園に行ってしまったらしいのだ。「あの会長にしてこの選手あり」ってとこか(笑)。

 おまけに7時を過ぎても後楽園に現れない。他ジムの人は「まだ来てないんすか?」と心配しているのだが、北星勢は誰も心配していない。松浦さんをよく知るウィラサクレックジムの方も、「松っちゃんノンキだからなぁ」と呆れ顔。

 そうこうするうちに、何事もなかったかのように現れた松浦さん。後で考えれば試合までかなり余裕があったのだが、「電車が止まることもあるかもしれない」などと考えて早めに会場に入る私などからしてみると、この余裕はうらやましい。着くなり「いやあ、計量の場所まちがえちゃってさぁ、誰もいないんで焦ったよ〜。試合明日だっけ〜って思っちゃったよ」と嬉しそうに語る松浦さんは、やはりお茶目だった。

 しかし、そんな松浦さんも試合が差し迫れば、キリリと締まった二枚目モードに転換する。「辞めちゃうんですか?」との質問には「わかんねえ」と笑っていたが、たぶん負けたら辞めたんじゃないんだろうか。

 そんな覚悟を決めてのリングイン。
 そして青葉繁も「らしく」勇壮にリングイン。
 ついでに私もチーフセコンドとしてリングイン。

 タイトルマッチ宣言の途中、おもむろに松浦さんがつぶやいた。「気合い入ってる」。一瞬なんのことかと思ったが、すぐに対戦相手の青葉繁のことだとわかった。一般に「気持ちに波がある」と報道される青葉。そんな青葉が「気合いモード」だと松浦さんは判断した。この日で5度目の対決。相手の状態は、一目見ればわかるのだろう。

 1R、両者見合う展開。松浦さんはジャブとロー。青葉は左フックから、右ローへつなげる。そう、オランダ仕込みの対角線コンビネーション。オランダ目白ジムで修行してきたという青葉。以前よりもガードが高くなったような気がした。ローの打ち合いがしばらく続くが、ときおりパンチが当たると、松浦さんはすぐラッシュをかける。現役復帰後、人が変わったようにアグレッシブになった松浦信次はこの日も健在だ!

 3R、明らかにローで松浦さんが優勢になる。ローを効かせ、パンチでラッシュをかける。このラウンドは完璧にとった。

 そして勝負になるであろう4R。だが、攻め疲れか、明らかに動きが落ちる松浦さん。青葉が息を吹き返してきた。「ちょっとやばいな」と思ったそのとき、松浦さんのカウンターがヒット。青葉ダウン。畳みかけて攻めるが、青葉持ちこたえる。

 最終5R。ポイントでは完全にリードしている。以前までの松浦さんなら、ここで守りに入る。それだけの技術はあるし、実際スタミナは底をつきかけている。しかし、攻めた。最後の気力を振り絞り、再度ダウンを奪う。青葉もさすが。死力をふりしぼって立ち上がってくる。そこへ、出た! 得意のストレートのダブル……というより、4回続けた(なんて言うんだ?)。結局、最後はレフェリーが試合を止めた。

 1998年7月以来の王座返り咲き。視線の先は……K−1中量級!? 小野瀬との再戦!? いずれにしても、そう何年も続けれられる身ではない。NJKFには、ぜひ松浦さんに「消化試合」をさせることなく、有意義なマッチメークをお願いしたい。

 試合後の控え室、

野 崎「いやあ、最後のラウンド守りに入ると思ったんすけど、
    行きましたねえ!!」
楠 本「ボクも守ると思いましたよ」
松 浦「いやあ、疲れちゃったからよ〜、
    休みたかったんだけどよ〜、
    パンチ出したら当たっちゃったんだよ。
    倒れたら、行くしかねえじゃん。あ〜疲れた」

 リングと別人だ、このお方(笑)

 

【その他の試合】
 この日の裏メイン、「ハンサム侍」こと松本浩幸(八王子FSG)のNJKFお披露目試合。トランクスには、大きく「罪」の一文字。意図は謎だ。左のお尻には、魂のリングネーム「ハンサム侍」の文字が。

 相手の外山選手は、なかなかのハードパンチャー。「スロースターター」というハンサムいきなりピンチ! しかし、「オーエンジャイのおかげで試合中慌てなくなった」と泣かせるセリフを吐いたハンサム。落ち着いてローを返す。

 私の後ろで試合を観ていた石毛慎也、ハンサムに対し「なんでジャブしか出さねえんだよ」と毒舌モードに入っているが、石毛先輩そりゃ違いまっせ。相手の外山選手はかなり前足に重心が乗っている。パンチにローを合わせる判断は的確。しかも相手はフック系のパンチが危険。前半はジャブとストレートを見せて、ローでいいと思う。

 ハンサムは、石毛派ではなく野崎派だったようで(笑)、ジャブとローで攻める。そして1R終了間際、ジャブというより左ストレートがカウンターでヒット。ダウンを奪う。

 2Rに入ってもハンサム、慌てて打ち合いには行かず、上下に攻撃を散らす。そして、パンチも効いてフラフラ、ガードが下がった相手に対し、左ハイキックがガチンコヒット!! 担架・病院送りの壮絶KO勝ちをおさめた。まさに理詰めの攻撃! ハンサムは知性派でもあった!?

 ハンサムに続きたい若手キックボクサーよ! オーエンジャイに集え!


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