2000.10.21 名古屋市公会堂

NJKF Millenium Wars 9



楠本勝也 対 関博司(名古屋JKF)

5R判定勝ち(50-47、49-47、50-47)

 前回、NJKF史に残るような激闘を演じた両者。今回も、名勝負確率・単勝1・1倍の予想通り。前回にも増した凄まじい打撃戦を展開した。

 1年半ぶり対戦の両者。しかし、その間、パワーバランスには若干の変化が見られた。楠本に敗戦後、村上信次、杉本金太郎、ヨッキョウと、強豪を一方的にしりぞけてきた関。それに対して、楠本はパッとしない試合を繰り返し、中島とのタイトルマッチでもいいところなく敗戦。この日のパンフでも、「関やや有利か」と記されるほど、立場は逆転していた。楠本にとっては、まさに剣が峰に立たされた一戦。自腹を切って、前日に名古屋入りしたほどの入れ込みを見せた。

 試合は、ゴング後から関がつっかける。得意のパンチからローのコンビネーションが、楠本を襲う。楠本も真っ向応戦。右ストレート、ローを軸に、関を押し返す。楠本が揺れれば、関が吹っ飛ぶ。会場、1Rからヒートアップ。そして「たぶんヒジだと思うんだけど」(楠本)という攻撃で、関の目尻が切れる。かなり深い傷だが、ドクターチェックは入らない。しかし、これで流れが変わった。

 焦ってパンチを振り回してきた関を、楠本は前蹴り、ミドルも交え冷静にさばく。機を見た打ち合いも楠本が押す場面が多くなってきた。本人はもっと「打ち合いたかった」と語るが、同時に「勝たなきゃダメだというのもわかっていた」。一方の目からも出血し、もう行くしかない関に対し、引くところと押すところに差をつけ、攻撃を上下散らしていく楠本。そして、「流れの中で無意識に出た」という右ハイキックが関をとらえ、ダウンを奪う。さらに焦って前に出る関。打ち合いたい衝動をこらえ、さらに攻撃を散らす楠本。しかし、逃げているわけではなく、場内のボルテージは上がったまま。そのまま、ゴング。

 初めてキックを観に来たお客さんも、東京からかけつけたマニアも、垂らしたよだれが止まらないであろう好勝負が終わった。

 進退が問われた一戦を、お釣りがくるほどの好ファイトで制した楠本。この日の試合を観て、タイの王宮前広場での興行の出場選手を決めるとしていたNJKF。純粋にこの日の試合内容のみで選ばれるのだとしたら、楠本が選ばれるのは確実であろう。もしそうならなかったら、ソンチャイさんが寝ていたか、何か別の判断基準があったかのどちらかだろう。

 100人が100人、この日のMVPには楠本勝也を挙げるはずだ。

【雑 感】
 名古屋JKF、初の主催興行となった本興行。名古屋市公会堂の4階ホールにて行われた。

会場全景

 キックの会場としてはかなり狭い。大物タイ人を招聘したこともあって「ペイできるんかいな?」とも思ったが、客席は満員。自由席6000円という、多少高めの料金設定だったこともあり、興行的には成功だったのでは?

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