Part10 2002.3.3
vs 狩野卓(上州松井)判定1-0(49-49、49-48、49-49)
延長判定で勝者扱い、トーナメント次戦へ
「狩野はこの試合で、勝っても負けても辞めるみたいですよ」
試合前、石毛からそんな話を聞かされた。石毛は本人と直接しゃべったようだから、信憑性は高い情報だろう。
はっきり言って、無茶苦茶むかついた。
これはトーナメントである。望むと望まざるとは別として、みんな上位進出を目指してやっている。「勝っても‥‥」とはどういうことだい! と腹が立ったのだ。それでなくても、2年近くも試合をしていなくてランキング1位にいられて迷惑なのだ(彼のせいではないが‥‥)。試合相手を特別に意識したことはないのだが、この試合ばかりは「負けるわけにはいかない」そう思った。彼が休んでいた2年間、自分は闘い続けてきた。それを見せたかったのだ。
だが、試合を始めて、そんな邪念はふっとんだ。スタミナも闘志も技術も、狩野卓はすごかった。本物だった。そんな対戦相手に満足したし、試合にも満足した。
決着が付いたリング上で、狩野卓がいった。
「これで辞めるから」
そのときには、もうわだかまりがなかった。「ご苦労さん」という感じだった。ただし、キックボクサーの「引退」ほど信用できないものはないんだけど‥‥。
上州松井ジムの松井会長がやけに判定(延長の?)に怒っていたが、それだけ愛弟子の最後に勝たせたかったのだろう。怒ってはいたが、松井会長は「狩野の分まで頑張ってくれ」と言ってくれた。頑張らねば。
前回の高野戦。お客さんにはすまない試合をした。今度の試合は概ね好評のようで一安心。残念ながら引き分けだったが、面白い試合ができたみたいなので、良しとしよう。
さて、この試合を前に、30歳になった。
年齢で自分の可能性を狭めるようなことをするつもりはない。だが、やはり、30なのである。減量中や試合前、ときには試合中、「こんなしんどいことはこれでやめてやる!」とよく思う。試合をやるごとに、10回はやめたいと思う。だが、試合が終わると、「またやりたいな」と思ってしまう。
なんでだろう?
キックを始めたとき、試合をするということは頭になかった。だが、2か月でオーエンジャイに出て、1RKO勝ちした。
プロにはなれると思わなかった。でも、プロテスト、受かってしまった。楽だった。
「プロで勝てるのかな?」と思っていたが、デビュー戦、1RKO勝ちだった。楽勝だった。
「5回戦は難しいだろう」と思っていたが、今や4位だ。
「タイ人には殺されるだろう」と思っていたが、そこそこやれた。いや、十分勝てる力関係だった。それでも勝てなかったのは、「勝てる」と思ってなかったからだろう。もったいないことした。
高いと思った階段を登って上から見下ろしたとき、「キックやってよかったな」と思う。そういう快感が、モチベーションかな。
そして、NKB初代ライト級チャンピオン。十分なれると思っている。「俺が一番!」とか言うつもりはないが、権利はあると思う。謙虚になりすぎる必要もあるまい。「なれる」と思っているから、NKB王者は「モチベーション」ではない。
それよりもその後である。
NKB獲ったら、タイのランカークラスとの試合が組まれるという。「勝てねえよぉ〜」と思う。「死にたくねえよぉ〜」と思う。だから、やってみたい。だから、それがモチベーション。
数ヶ月後、「タイのランカーなんか大したことねえよ」と言ってる自分に会いたい。
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