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全国消防職員協議会(全消協)とは、どんな組織ですか? |
全消協は、各地域の市町村消防(局)本部の消防職員で自主的に結成された協議会や研究会の全国的ネットワークとして1977年8月に結成された組織です。結成時には36組織2,500人でしたが、いまや120組織を越え、加盟人員も8,000人となりました(1995年4月1日現在)。全国消防長会や全国消防協会と違って、消防職員自らの自主組織ですから、他からの指示や干渉で組織の活動や運営を阻害されるものではありません。 私たちの目的は、消防職員の生活と権利の向上、明るく働きがいのある職場づくりと、各地の自主組織との交流や消防行政の研究・改善、団結権の獲得をめざし、民主的かつ合法的な活動を展開していくことです。 全消協に結集している仲間の職場では、全国の仲間との相互交流などで学んだことを生かし、それぞれの職場で処遇や職場環境の改善などに大きな成果を挙げています。 |
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全消協の活動は、法律違反になりませんか? |
全消協の活動は法律違反ではありません。全消協は、地方公務員法第52条第5項で消防職員の団結権が禁止されていることは憲法違反であると確信して運動を続けています。しかし、現実に団結禁止規定が存在していることも事実ですから、地方公務員法第52条第5項に違反しないような組織形態と活動方針の下に運動をすすめています。 すなわち、地方公務員法第52条第5項では勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、当局と交渉する団体を結成することが禁止されているのであって、労働条件の維持改善を目的としても当局と交渉しない、「協議」する団体を組織することは否定されていません。 全消協は、同じ自治体職場で働く自治労の仲間の積極的な支援を受けながら、消防職員の自主組織の連合体として運動の輪を拡げています。 |
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消防職員協議会はなぜ必要なのですか? |
消防職場は階級制度により、上意下達の職員管理が行われています。こうしたことから、前近代的な職場環境にあるところが多く存在しています。 消防職員の労働条件や勤務条件、また賃金の決まり方がおかしい、年休が満足にとれない、職員数が足りない、署長や職制の指示が不合理だ、危険な仕事なのに安全確保が考慮されない・・・・・・などの疑問や不満についても、みんなで語り合えずに上司の命令に泣き寝入りするという状態は終わりにする時代なのです。 消防職員は座して待つだけでなく、民主的な消防行政の確立と労働条件の向上を考え、行動を起こすために、全国の消防職場に消防職員自らが組織し、民主的に運営される協議会の結成を呼びかけます。そして、全消協への結集を期待します。 |
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どうしたら消防職員協議会を結成できますか? |
みんなで自主組織(消防職員協議会)をつくろう、とまず考えている人が、何人でもよいから集まって相談するのが第一です。そして、その集まりの輪を拡げて、「自主組織結成発起人会」のようなものをつくって、職員に自主組織の必要性、目的などを知らせ、組織をつくることへの賛同を求めます。具体的な方法として、職場での話し合いやアンケートをとってみるのも有効です。 多くの賛同者が得られたら、発起人を中心として、各職場ごとに準備委員を選出し、準備委員会をつくります。そこで、規約・活動方法・役員、他組織(全消協・自治労など)との連携などについて準備委員会が中心となって原案を作成し、職場ごとの意見を聞いてまとめ、結成大会を開くわけです。 このような組織をつくるとき、上司の命令が絶対とされ、わが身を顧みない滅私奉公が美徳とされている消防職場では、いろいろな困難に直面することがあります。 上司から妨害されたり、職員内部でためらいが起きたり、「消防に組合などとんでもない」と外部から圧力がかかったりすることがあるかもしれません。 しかし、自主組織の結成は合法的です。さらに、消防を充実させるのに必要な職員の人間性を高めることにもつながりますから、いささかもひるむことはありません。組織をつくろうとする職員がしっかり団結していれば、いろいろな困難は遠のいていきます。 すでに全国各地で、消防職員の自主組織(消防職員協議会)がつくられ、消防行政の改善、民主的運営を求めて活動しています。組織をつくるにあたっては、関係する市町村の職員組合なり、近隣に結成されている消防職員協議会、全消協あるいは自治労に相談してください。大きな力添えが得られるでしょう。 |
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憲法で保障された団結権が、なぜ消防職員には認められないのですか? |
憲法第28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と、基本的人権である労働基本権を団結権も含めて認めています。消防職員も労働者であるからには、当然この憲法による団結権の保障を受ける立場にあります。 ところが、地方公務員法第52条第5項は、「警察職員及び消防職員は、職員の勤務条件の維持改善を図ることを目的とし、かつ、地方公共団体の当局と交渉する団体を結成し、又はこれに加入してはならない」と規定し、消防職員の団結権を否認しています。その理由として、消防職員の職務が公共性の強いものであること、厳しい上命下服の服務規律確保が要請されることが挙げられています。 しかし、職務の公共性が強いという点では、ストライキ(争議権)についての一定の制約が許される根拠になり得ても、団結権までも否定する論拠にはなりません。また、消防の職場では、厳しい服務規律が要求されるとしても、それが職員に団結権を認めることとは決して両立しないものではありません。 日本政府が1965年に批准したILO87号条約(結社の自由及び団結権の保障に関する条約)は、労働者の団結権を保障するとともに、この保障の例外を「軍隊及び警察」のみに限定しています。 したがって、消防職員の団結権を否定する地方公務員法第52条第5項は、憲法第28条上の問題であるとともに、条約の遵守義務を定めた憲法第98条第2項にも違背する規定であるといえます。 消防職員の団結権禁止はILO87号条約違反だとする批判に対して、日本政府は、消防については団結権保障の例外とされる「警察と同視すべき若干の職務」にあたるという弁明に終始してきました。 しかし、ILOでは、日本政府の弁解を認めず、1973年の条約勧告適用専門家委員会報告において「消防職員の職務が軍隊及び警察に関する本条約第9条にもとづいてこの種の労働者を除外することを正当化するような性質のものではない」と断定して以降、くり返し日本政府に対して消防職員の団結権を保障するよう勧告を続けているのです。 |
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消防職員の団結権問題について、最近の動向とこれからの展望は? |
日本政府はこれまで一貫として、消防職員の団結権問題に真正面から対応することなく推移してきました。 そうしたなかで、1989年のILO条約勧告適用専門家委員会において「代表的労働組合との協議が強化され、条約に従って速やかにこれらの労働者への団結権承認へと導かれるよう、強い期待を表明する」という議長集約が行われたことにより、国内でも自治省と自治労の本格的協議が始まりました。 1990年11月からは「消防職員団結権問題定期協議」が発足し、10回以上の協議が行われましたが、結論を見出せず、1991年6月の自治大臣と連合会長・自治労委員長との政労会議で「2年間を目標に解決策を見出す」ことで合意しました。 1993年のILO総会で条約勧告適用委員会は「非常に短い期間に法規全体を条約に適合させるよう強く希望を表明する」という議長集約を行いました。 そして、1994年のILO総会では、日本とともに消防職員の団結権否認の数少ない国として引例されてきたガボン・スーダンが、1993年までに団結権保障の措置をとったことが報告され、いまや団結権否認を続ける国は日本のほかに存在しない状況となっており、時代遅れである法制の早急な是正が迫られています。 1994年1月には、日本政府の招へいにより、ILO事務局次長・「結社の自由」部長が来日し、政府・消防関係者・労働側(連合・自治労・全消協)と会見しました。その席上、ILO事務局次長は「全消協は自治労・連合と協力し、団結権を勝ち取ってほしい」と激励のコメントを述べられました。 こうした動きを背景に、'94春闘時の政労会談で、当時の総理大臣は「定期協議に消防庁も参加させて、早期解決に向けて協議態勢の強化を図る」と回答し、消防庁も参加した定期協議が再開されました。しかし、団結権付与を主張する自治労と、現状維持に固執する消防庁の開きは大きく、解決への内容上の合意には至りませんでした。 '95春闘時の政労会談では、総理大臣は「6月ILO総会を十分念頭において解決策を見出したい」と回答しました。何の解決策も打ち出せずにILO総会に臨めば、悪質な条約違反としてスペシャルパラグラフに記録され、強い国際的指弾を浴びることは容易に予測されました。 そこで、「労働基本権の制約に関する国民のコンセンサスの推移に応じ、さらに将来において関係者間で論議されることまで否定するものではない」ことを前提に、自治大臣と自治労委員長は団結権付与のために地方公務員法の改正を見送り、消防組織法を改正し、「消防職員委員会」の設置を盛り込むことで合意しました。 この合意について、1995年6月のILO総会条約勧告適用委員会の議長は「@条約の適用にむけて重要な措置が取られたことを歓迎し、合意内容を実施すること、A87号条約に合致するような方法で法制度を改正すること、B政府が進展状況を専門家委員会に報告することを求める」とのまとめを行いました。 団結権の確立は全消協の長年にわたる重要な運動課題であり、自治労との連携を強めながら、団結権付与の要求を堅持し、引き続きその実現に向け、国民のコンセンサスを得られるよう積極的に取り組んでいく必要があります。「消防職員委員会」の設置は、団結権付与に向けた新たな第一歩なのです。 ※スペシャルパラグラフとは重大な違反等があったことを示すために、総会の最終報告書に特記すること。 |
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「消防職員委員会」とはなんですか、また制度の概要は? |
消防職員委員会の設置は、従来、職員の勤務条件について訓令や内規などで一方的に決定してきた消防の現場に、話し合い・協議の場として、消防長に個人装備、福利厚生、労働条件について意見を述べる機関として導入するものです。消防組織法を改正して、消防組織機構(システム)の一部として全国931の消防本部に設置し、委員は10人程度(半数は職員の推薦)とすることになっています。 消防職員委員会が、誠実に運用されれば、消防職員にとっては大きな意義を持つものといえます。この「委員会」が機能するのか、あるいは「絵に描いた餅」になるのかは、消防職員の意思を集約しうる自主組織(消防職員協議会)がその職場に存在し、そして、その代表が「委員会」の職員側委員になれるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。 消防職員委員会の定着と民主的運営、団結権要求の実現化のためには、全国の消防職場に自主組織が結成されることがなによりも必要であり、全消協の組織拡大が焦眉の課題となっています。全消協は、自治労の協力と支援を得ながら消防職員協議会の組織拡大に全力で取り組んでいきます。 |
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全消協には特別賛助会員制度というものがあるそうですが、どのような制度ですか? |
全消協の組織拡大の一環として、未組織消防職場への情報提供・意識改革・組織化に向けた活動の展開を期待し、未組織職場にける仲間の協力・助成をすることを目的に「全消協特別賛助会員」の募集を行い、小規模単位の全消協加盟を認める制度です。 特別賛助会員加盟要綱 加盟条件 未組織職場で、自主組織結成の意思のあること、かつ複数の仲間(3人以上を単位として)で全消協に登録できること。 特別賛助会員の義務 定期的に学習会等の活動を行うこと。 全消協特別賛助会員会費(年額1人、3,000円)の納入を行うこと。 特別賛助会員の権利 特別賛助会員の所属・氏名等は、原則として公表されない。 全消協が発行する刊行物の提供を受ける。 全消協が主催する各種集会・行事等への参加ができる。 その他、情報の提供、組織化に向けての援助が得られる。 加盟の方法 近隣の全消協加盟協議会又は自治労県本部あるいは単組の推薦による。 その他 特別賛助会員の登録は1年ごとに更新する。 |
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全消協はどのような取り組みをしていますか? |
全消協の組織化をすすめるため、具体的な活動として次のようなことを行っています。 @ 年1回の定期総会の開催 自治労定期大会に併せて実施し、全消協加盟単協、未組織職場代表、自治労関係者が一堂に集い、年間事業報告、決算報告、次年度の活動方針と予算の決定を行っています。 A 年1回の全国懇談会の開催 組織会員や未組織職場代表、賛助会員が参加し、講演を聞いたり全消協が問題を提起して討論会を行い、情報の交換や研修を積み重ね交流を深めています。 B 労働講座の開催 全消協労働講座を12月に開催し、豊富な講師陣により、内容の濃い労働講座として大変人気があります。消防協活動のための基礎知識を身につけ、全国の仲間と交流を深めています。 C 労働安全衛生講座の開催 消防職場の労働安全衛生について幅広い講座が開催され好評です。全消協活動の中心的な役割を果たす会員が多数誕生しています。 D 全国幹事とブロック内オルグ活動 全消協は全国を9ブロックに分けてそれぞれ代表幹事を選出しています。全国幹事はブロック内の組織拡大のためのオルグを担当したり、ブロック内での公務災害等による事故調査や相談にのっています。 E 全消協は自治労、連合と密接な関係をもち、とくに自治労と政府(自治省)との交渉の場において、全国の消防のかかえる多くの問題について全消協が情報提供を行い、自治労が全消協に代わって政労交渉を行っています。また、消防職員の団結権問題については、自治省と自治労、連合とによる定期協議の場において前進的に会議がすすめられています。 F 全消協は全国加盟組織や未組織職場を対象に各種調査・アンケートを実施しています。そして、消防がかかえている問題点を明らかにし、全消協の活動の骨子を立てたり、問題点の解決策を見出す努力をしています。 G ニュース、パンフの発行、書籍の発刊 全消協はニュースなどを通して、全国的な動きなど必要な情報を常に提供しています。また、書籍を発刊し、豊富な情報を会員に提供しています。 今まで述べたこうした活動が組織化へのエネルギーとなっています。 |
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消防行政をとりまく情勢は? |
地方分権の声の高まりとともに、地域中核都市構想や広域連合制度の導入など、地方分権の受け皿としての地方公共団体事務の執行体制の見直しの動きが活発化しています。既に、地方自治法の一部が改正され、中核都市・広域連合制度が導入(1996年4月施行)されています。消防組織においては、地方分権の声を背景に、消防事務の広域再編の方向で推し進められようとしています。 全国消防長会は、1991年に「組合消防の充実強化に関する報告書」をまとめ、規模の小さい組合消防を、管内人口10万人規模を単位とした消防組織に再編し、組合消防をできる限り「広域行政圏に合致する規模」に拡大する方向を打ち出しています。 自治省消防庁は、1993年に「小規模消防問題検討委員会」、1994年には「消防の対応力強化方策検討委員会」を設置し、1995年3月には報告書をまとめました。そのなかで、「小規模消防本部の広域再編への誘導、組合消防の広域連合の消防への導入、中長期的な消防組織のあり方としても広域的な見地から方策を検討する必要がある」としています。このような国の動きと並行して、富山県や佐賀県、長野県では既に検討員会が設置され、広域再編にむけて検討がすすめられています。 また、1994年9月には、自治省消防庁が各都道府県知事に対して「広域再編に関する基本計画の策定方針」を示し、毎年その進ちょく状況について報告するよう求めました。広域再編の基本計画策定やモデル広域消防推進要綱が示されたことから、全国的に消防組織の広域再編の動きが具体化し、より一段と加速することが予想されます。 これらの動きは、私たち消防職員が好むと好まざるとにかかわらず、推し進められていく状況にあります。私たちは、不必要な大規模化・広域化は図るべきでないと考えています。これらの動きに対して、全消協・自治労は、自治省消防庁に次の6項目について留意するよう申し入れています。 @ 住民のニーズと信頼に応えるものとするために、いたずらに大規模化しないこと。 A 人口のみを基準とするのではなく、地域的な条件、面積的な条件も加味して、消防組織規模を検討すること。 B 総合的な行政サービスが確立できるものとすること。 C 一部住民が不利益を被らないものとすること。 D 財政基盤の充実強化を図ること。 E 職員の削減や賃金、労働条件の悪化を伴わないこと。 消防行政の確立は、住民主権という原点に立った地方自治にあります。地域住民がより高い水準のサービスの提供を受け、安全が確保され、安心した生活が保障されなければなりません。そして、消防行政を担う消防職員自身もその社会的使命を実感でき、働きがいのある民主的な消防職場の実現に結びつける方向で取り組んでいく必要があります。 超高齢化社会の到来が近づくにつれ、消防行政に対する住民からの期待がますます質・量・範囲とともに変化し、拡大していくことは明らかです。それぞれの地域において、住民に最も身近にあって、24時間フル出場体制をとり、災害などに施設・人員を活用して即応できる行政機構は、「消防」以外にはありません。この特性を活かして、21世紀を展望する上で、地域住民が安心して暮らせるよう、その役割を果たすべく、具体的に取り組んでいかなければなりません。 |
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消防職員には労働基準法が適用されますか? |
消防職員も一般職に該当する地方公務員であり、地方公務員法第58条第3項によって一部の適用除外がありますが、基本的には適用になります。労働基準法第2条(労使対等の原則)、第24条第1項(賃金の支払い)、第32条の3(フレックスタイム制)、第32条の4(1年以内の変形労働時間制)、第32条の5(1週単位の非定型変形労働時間制)、第75条から第93条まで(災害補償に関する規定及び就業規則に関する規定)、第102条(労働基準監督官の職務)の規定が適用除外になり、これらを除いた他の規定は適用になります。 しかし、労働基準監督機関の職権が、人事委員会またはその委任を受けた人事委員会の委員(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長)が行うものとされていることが問題になります。労働基準監督官の権限を消防職員の雇用者たる市町村長に委ねていることは、労働者の最も基本的な権利である団結権をも否認(地方公務員法第52条第5項)され、労働基準法第2条(労使対等の原則)も適用が除外されている消防職員にとって、使用者と労働基準監督官が同じという矛盾した結果になっています。消防職員は、労働基準監督署の監督すら受けられず、自らの勤務条件について解決する手段を何も持たないのです。 労働時間、休憩、休日、時間外労働等については労働基準法が定める基準を下回ることは許されず、また、労働基準法を盾に勤務条件を切り下げることも許されません(憲法第25条)。労働条件の最低基準を定めた「労働基準法」を有効に活かしていくためにも、消防職員の自主組織を結成して、仲間同士で調査、研究して当局に問題解決を迫っていくことが必要なのです。 |
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消防職員には労働安全衛生法が適用されますか? |
消防職員も一般職に該当する地方公務員であり、地方公務員法第58条によって一部(労働安全衛生法第2章「労災防止計画」、労働安全衛生法第92条「司法警察権」)の適用除外がありますが、基本的には適用になります。 労働安全衛生法は、安全衛生管理体制、労働者の危害防止措置及び就業時の措置並びに健康管理などの基準を定めています。労働安全衛生法を一つの手段として活用し、公務災害多発職場で働く私たち消防職員の安全を確保していく運動を進めていく必要があります。 単に、違反の是正を求めるだけであれば人事委員会(人事委員会がない場合には市町村長宛に行う)に対して、労働安全衛生法第97条第1項にもとづいた「申告」を行えばよいのです。また、処罰を求める場合の告訴や告発は、警察官又は検察官に対して行うことになります。ただ、これらの行動を起こす際に留意すべきことは、消防当局のサボタージュを、私たちは黙って見過ごすのではなく、労働安全衛生法を盾にして、その是正を求めながら職場の労働安全対策の強化を図ることが目的であって、告発や、告訴をすることが目的ではありません。告発や告訴を行う場合でも、たった一人で行うのではなく、消防職員の共通の問題ですから、同じ職場の中の仲間が一丸となって運動していけるようなたたかい方をしないと要求を勝ち取ることはむずかしいといえます。 |
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もし、公務災害にあったら…… |
公務災害の認定請求手続きについては図Aに示したとおりです。 消防職員の公務災害発生状況は、毎年2,000件前後です。これはあくまでも認定された数でしかなく、公務中の災害がすべて認定されるという状況にはありません。1984年3月29日、北海道の○○市○○消防署に勤務する消防職員が救助訓練でのランニング終了後に倒れ、約3時間後に急性心不全で死亡しました。ご遺族は5月7日に公務災害認定請求を行い、11月2日地方公災基金支部は「本人に内在するなんらかの素因」が原因として公務外と決定しました。その決定を不服として、自治労の支援を受けながら、全消協の組織を挙げての公務災害認定闘争を展開しました。1987年10月29日、3年8ヵ月の長きにわたる闘争を経て、消防職場の特殊性を認めたうえで「疲労の蓄積等に過度の精神的・肉体的負担があった」とし、公務に起因して発症したものと認定されました。 消防といういずれにしても危険な職業において、いざ発症したときには、安全・健康確保の第一義的責任を個々の職員に押しつけ、何の対策も講じないまま、その管理責任を逃れようとする消防当局の実態も明らかになりました。 公務災害であるか否かを判断する権限は、消防当局にはなく、任命権者として被災職員が行う認定請求手続きに援助を行うことが求められているだけなのです。日本の公務災害補償制度は自己申告制をとっていますから、業務中や業務に起因すると思われる死傷病・事故などについては、諦めることなく、全消協に相談して下さい。 |
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週休日の取り扱いはどうなっていますか? |
消防職員の週休日は、多くの場合、特定した曜日が「勤務を要しない日」となるのではなく、カレンダーに自分のサイクルを落としてみなければわからないものとなっています。 公務員職場で労働時間の短縮に向け4週5休制が試行された際、自治省消防庁が「4週で4時間の労働時間減」を指導したことにより、消防職場については4週5休日ではなく、8週で9休日しかなかったところが数多くありました。そのことが完全週休二日制が施行されている現在においても尾を引き、1週あたりの労働時間は40時間をクリアーしているけれども、8週で14休日しかない消防職場も存在しているのです。決まったサイクルで「勤務を要しない日」を割り振っているところはまだ良い方で、年間の休日日数に見合う当務分を随時取得し、年休的な取り扱いをしているところも多く見受けられます。 週休日は、蓄積した疲労の回復を図る上でとくに重要であり、まとめてどこかの週で取るといったことでは代償されない性格のものです。労働時間の長さの問題とともに、週休日がどのように確保されているかは、重要な問題です。 労働基準法は、週40時間労働制となっても、1週2休日とは規定せず、1週1休日を原則としています。そして、その運用も交替制勤務を考慮して、4週間に4日以上の弾力的な運用を認めています。その結果、消防職員の週休日は労働基準法上の休日数は上回っていますが、公務員職場でいう「週休日」の数が一般職に比べて少ないというところに影響が出ているのです。 4週6休制の施行に伴い土曜閉庁方式が導入されています。この土曜閉庁方式の意義は、消防職場を含む交替制職場における労働時間短縮の結果として「勤務を要しない日(週休日)」を「4週に6日」確保しなければならなくなったことにあります。また、各市町村の勤務時間に関する条例では「4週間で8日」の週休日の割り振りを基本として定めています。消防職場の場合も、労働基準法上の「休日」は4週間で4日以上あれば適法といえますが、完全週休二日制が実施されている今日では、「週休日」が1週平均にして2日以上確保されていなければ、他の公務員との均衡を失することになり、不利益な取り扱いがなされているといえます。 |
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2部制、3部制というのはどのような勤務体制ですか? |
消防職員は、その職務の性格上、一定の人員で昼夜の別なく常時出動できる体制でなければならないために、特殊な勤務体制が強いられています。 現在、一部の自治体を除いて2部制の勤務体制が採用されています。2部制とは、職員を2部に分け、当務・非番の順で隔日ごとに勤務する体制のことです。当務の職員は朝出勤して24時間の勤務につき、翌日の職員に交替して非番となります。実際の勤務につく職員は、若干の休暇要員をおくために各部の職員数より少なくなります。 2部制で週休二日制が実施されている場合の勤務のローテーションは、「3・2」勤務体制が一般的です。 3・2勤務体制というのは、3回当務(1回の24時間拘束を1当務という)して1当務分の週休(連続して2日)、2回当務して1当務分の週休が与えられる2週間を1サイクルとした勤務体制のことです。この場合、職場に拘束される時間は1週平均で60時間になり、自治省消防庁が指導している1当務の労働時間を16時間とすると週平均の労働時間は40時間になり、この差の20時間は無賃金で職場に拘束される時間になります。 3部制とは、職員を3部に分け、当務・非番・日勤の繰り返しで勤務する体制です。2部制よりも拘束時間が短くなり、それだけ多くの人員を必要とします。現在、東京消防庁や東大阪市、越谷市など全国で十数ヵ所の自治体に過ぎません。 ちなみに、アメリカの場合は、拘束時間をすべて実働時間とみなしても週平均時間は40〜56時間にしかならず、日本とはずいぶん違うことが分かります。日本の現行の勤務体制の下では、どうしても職員の負担が重くなり、健康が脅かされます。 私たち全消協は、「拘束時間=実働時間」とした勤務体制の実現を求めています。当面の課題として、現在実施されている勤務体制が3部制であるか2部制であるか問わず、無賃金拘束時間をより多く短縮させる運動に取り組んできました。その結果、多くの自治体で改善されてきています。 私たちは、1当務拘束24時間中の実働時間が16時間で良しとするものではありません。しかし、全国ではこの水準にも達していない消防職員が数多く存在しており、まずはこの水準にまで引き上げることが先決です。全消協は、「拘束=実働」を基本目標に、当面、現在実施されている勤務体制が3部制であるか2部制であるかを問わず、拘束される時間を短縮させる運動に取り組みます。2部制を継続せざるをえない職場でも、日勤日の導入や休日増、時間短縮を図るよう求めていきます。 |
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「振替」という制度とはなんですか? |
公務員職場には、土曜閉庁の導入とともに、「週休日の振替」という制度も持ち込まれています。各市町村の勤務時間条例には「日曜日及び土曜日」を「週休日」とし、月曜日から金曜日までの5日間において、勤務時間の割り振りが行われることになっています(交替勤務職場を除く)。 振替制度は、日曜日等に勤務を命じる場合に「週休日」を「勤務を割り振る日」とし、勤務を割り振られていた他の日(月曜日から金曜日まで)のいずれかを「週休日」に振り替えるという制度です。週休日の振り替えは、休日の確保を名目に、休日労働としての割増賃金の支払いを避けようとするものなのです。 消防職場のような交替勤務職場では、地方公務員法によって1ヶ月以内の変形労働時間しか採れないことになっています。この変形労働時間制の採用によって、はじめて変形時間内のある週において週40時間、ある日において8時間を超えて勤務させることが可能となるのです。その採用要件は、あらかじめ始業・終業等について条例等で定めます。または、あらかじめ勤務ダイヤ等で定めておくことが必要です。 したがって、変形労働時間制の期間内に入ってからの変更は、あらかじめ定めておくという要件を欠くことになります。週休日の振替は、1ヶ月単位の変形労働時間制にはなじまない制度であるといえます。変形労働時間の期間内に入ってから「振替」が行われているような職場では、その是正を求めるとともに、計画的な業務の執行を図るべきでしょう。 |
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祝日が勤務日のときの取り扱いはどうなりますか? |
労働基準法は、4週間に4日以上の休日があれば、祝祭日等に勤務させてもよいことになっています。しかし、多くの自治体では「国民の祝日に関する法律」に定められている休日については、条例によって行政機関の休日として勤務することを免除される日になっています。消防職員の場合は1年365日、常に住民の生命、財産等を守ることを目的に24時間フルタイムに出場する態勢をとっており、1日たりとも怠ることはできません。 そこで、次の3点が問題になります。 (1) 週休日と祝日が重なった場合の取り扱い (2) 当務日が祝日となる場合の取り扱い (3) 非番日が祝日となる場合の取り扱い 原則的には、これらの祝日は、日本国民がこぞって祝い又は感謝すべき日であるのに、消防という業務の必要性から勤務しなければならないのですから、祝日等に勤務が割り振られて勤務すれば、その代償として休日勤務手当を支給するというかたちで措置されます。祝日等は本来、勤務することが免除されている日なのですから、祝日等に勤務が割り振られて休まなければならないような場合でも、年休処理という問題は生じてこないはずです。全国では、週休体制を確立しているところは少なく、週休日が特定されていないところ、年間の休日日数に祝日等も含めて勤務サイクルを組んでいるところ、当務日にのみ休日勤務手当を支給しているところなど、さまざまな取り扱いが行われており、祝日等の取り扱い方についても一概に論じられません。 もっとも、祝祭日等の問題以前に、1週間を基本とする長くても4週間(1ヵ月)以内の労働サイクルの確立を図ることが必要です。消防職員自身が自分たちの労働条件について考え、仲間とよく話し合っていくことが大切です。 |
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休憩時間や仮眠時間の取り扱いは? |
消防はその業務の性格上、24時間の待機を不可欠とするものですから、労働基準法施行規則第33条によって、休憩時間の自由利用の原則(労働基準法第34条第3項)が適用されません。休憩時間は、一般に労働者が権利として労働から離れる時間をいいます。 消防職員は休憩時間といえども、定められた施設内にとどまり(休憩中に業務命令が出ることを前提として)、火災などが発生すれば出動することが強制されます。このような時間は、本質的には休憩時間とはいわず、消防以外の職場では「手待時間」といっています。 「手待時間」とは、使用者の指揮監督の下にあるが、現実に精神又は肉体を活動させていない時間をいいますが、この「手待時間」は、当然労働時間に入るものです。 労働基準法施行規則附則の第2条第3項に、一昼夜交替勤務に就くものについては、夜間継続4時間以上の睡眠時間を与えるべきであると定められていますが、この規定は労働基準法第8条第4号の事業の労働者(駅員等)に適用されるものであって、消防職員は直接的には適用されません。しかし、ほとんどの消防職場で6時間から9時間の仮眠時間が設定されています。この規定が想定した仮眠時間は、4時間以上継続した睡眠時間であって、この場合は休憩時間として扱ってもよいことになっています。消防職員の場合、仮眠時間が4時間以上継続することが保障されているでしょうか。緊急の出動に備え作業服のまま睡眠をとっているような時間は、手待時間(労働時間)と変るものではありません。 消防当局が休憩、仮眠時間を多くとっていることは、拘束時間中の「実働時間」を減少させ、無賃金で働かせ、より少ない人員で多くの時間をカバーしようとするものです。 1987年の労働基準法改正にあたって、労働基準法研究会(労働大臣の私的諮問機関)は「休憩時間の位置及び長さについては、労使の間で決定すべき事項」とし、休憩時間について上限規制を設ける必要はないものとしました(中央労働基準審議会も同様の結論を示している)。しかし、消防職員は団結権が否認され、職場で労使の間で決定する権利を持ち得ていません。 私たちは長時間拘束の矛盾を明らかにし、勤務体制を改善し、消防職場から無賃金拘束時間をなくすことを目標にして活動しています。 |
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超過勤務手当の支給対象時間は? |
超過(時間外)勤務手当は、正規の勤務時間を超えて勤務することを命じられた場合に、その時間外の勤務時間数に応じて支給される手当のことをいいます。 「正規の勤務時間」とは、あらかじめ勤務が割り振られた1日の勤務時間のことです。「時間外」とは、その日の勤務時間が始まる前と勤務終了後も含まれるし、休憩時間中に勤務が命じられた場合も時間外勤務として取り扱われます。 消防職場の場合、1勤務が2暦日にわたっています。現状としては、継続して拘束される24時間中の休憩・仮眠時間が労働時間とみなされておりません。しかし、本来、これらの時間に火災出動等の勤務に従事したときには時間外勤務手当が支払われなくてはなりません。ところが、多くの消防職場で超過勤務として取り扱われていない現状があります。 また、補充勤務として時間外勤務が命ぜられた場合、時間外勤務として職場に拘束され、一定の指揮命令下にある状態にもかかわらず、なぜか時間外勤務の途中に仮眠時間・休憩時間と称する時間帯が設定され、これらの時間を労働時間と認めず、時間外勤務手当の支給対象時間から除外している消防職場がほとんどです。 労働基準法は、労働時間を「休憩時間を除き1日8時間を超えて労働させてはならない」(第32条)と規定し、就労時間が6時間を超える場合には45分、8時間の場合には1時間以上の休憩時間を与えなければならないと規定しています。第32条で規定する労働時間を超えて勤務を命じる場合は、第33条(災害等による臨時の必要性がある場合)と第36条(時間外及び休日の労働に関する協定)にもとづいて行われます。 しかし、消防職場に限らず地方自治体における職場の場合、「公務のための臨時の必要がある場合」の規定(第33条)を限りなく緩やかに解釈され、「36協定」を結んでいるところで皆無に近い状態です。 正規の勤務時間を超える時間外労働に対して、「休憩時間を設けなさい」という規定は労働基準法のどこにもありません。逆にいえば、労働基準法の精神は、時間外労働の途中に休憩時間を設けなければならないような長時間勤務を許容してはいないのです。正規に勤務が割り振られた時間については、拘束時間内への休憩時間の設定は労働基準法上やむをえないものといえますが、時間外勤務については、拘束した全時間を時間外勤務手当の支給対象時間として当然取り扱うべきです。 |
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無賃金拘束時間とは、何を意味するのですか? |
消防職員の労働時間は、各消防本部ごとにまちまちの取り扱いがなされています。一昼夜24時間、継続して拘束を受けながら、そのうち労働時間として取り扱われているのは、ひどいところで13時間、良いところでも16時間となっています。 拘束時間とは、労働者が事務所内に入ってから退出するまで、使用者の施設管理権や秩序維持権にもとづく拘束を受けている時間であり、必ずしも使用者の指揮監督下にある労働時間に限られません。拘束時間をさらに区分けすると、労働時間(作業のための使用者の指揮監督にある時間。労働基準法は原則として1週間の労働時間を40時間、1日の労働時間の割り振りの基準として8時間を定めている)、休憩時間(労働時間の途中に権利として労働から離れることを保障されている時間)に分けられます。 消防職員の労働時間は、1当務あるいは1週間の拘束時間のうち、何時間を労働時間とみなすかは管理者側の恣意的判断に委ねられ、そこに合理的な根拠があるわけではありません。労働基準法には、休憩時間付与についての原則(自由利用・一斉休憩)が定められ、消防職員にはその原則適用除外規定があります。その休憩時間特例をうまく利用した勤務体制が、一昼夜交替なのです。賃金の支払い対象となる労働時間を短くするため、あるいは、法定労働時間をクリアーするために、職員を職場に拘束する時間中の休憩や仮眠の時間を多く設定しておきさえすれば、24時間も継続拘束しても労働時間として扱う時間は13〜16時間という手品みたいなことが可能なのです。 このような賃金の支払い対象とならない長時間の無賃金拘束は、消防以外の職場では見られません。職場に長時間拘束されることは、余暇生活はいうまでもなく、教養、レクリエーションの時間、社会的交際や活動の時間などの社会的文化的時間を短縮させ、人間らしい生活の維持を困難にし、消防職員の生活に重大な影響を及ぼしています。 1990年に開催された「ILO消防職員の雇用と労働条件に関する合同会議」では、「消防職員は、非社会的な時間に勤務することが要求されているが、これに対する然るべき補償を受け取るべきである。消防職員が勤務のために待機する時間についても、すべて賃金が支払われるべきである」との結論が、日本政府代表を含めて全会一致で採択されています。 全消協は、「拘束時間=実働時間」を基本的な運動課題に掲げ、ILO合同会議での結論の実現に向け、運動を続けていきます。 |