飛行性能アップに挑戦

 何本かのトンボを作り、作り方・飛ばし方に慣れたなら、より高く・より遠くに・より長い時間 飛行するために飛行性能アップや飛ばし方の工夫に挑戦してみましょう。
新たな楽しみが生まれてくること請け合い。高度30メートルを超える記録があるとのこと。

性能アップのポイント

☆ 機体の軽量化
 ・羽根の厚さを薄くして軽量化する
   羽根の厚みを可能な限り薄くする。
   強度の限界まで薄くする。1o程の厚さは比較的容易に実現できる。
 ・羽根の無駄な部分を削り取る
   軸の近くの部分は揚力を得る働きは無く、慣性モーメントとしても働かず荷物となるだけ。
   中心部分を出来るだけ削り取る
拡大した
花型軸の断面
 ・軸の軽量化
   軸の長さを少し短めにする
   四角な軸の4つの面をV字型に掘って軽量化をする
     ・・・・・・ 私はこれを“花型軸”と呼んでいる。

 

☆ 慣性モーメントを大きく
 ・軽くしただけでは飛ばない
   ホールを投げるとき、重いボールは遠くに投げられないが、
   軽いピンポン玉も遠くに投げられない。
   適度の重さ(慣性力=質量)が必要なことは経験済み。
 ・飛び続ける力、慣性モーメントを高める
   竹とんぼは回転力で飛行するので、直線に飛ぶボールと異なり慣性モーメントを大きく
   大切なのは慣性モーメントと重さとの比を大きくする事である。
   中心部の重さを出来るだけ減らし、その重さを羽根の先端に付ければ良い
 ・羽根の先端部分を重くする
   羽根の先端を厚くしたり、鉛などの重りを貼り付ければ慣性モーメントは大きくなる

一 口 解説 “慣性モーメントとは”

 ・回転するものが同じ早さで回り続けようとする性質
 ・回転の中心にある重さからは慣性モーメントは生じない
 ・中心から1pの所にある1g(グラム)の重さの慣性モーメントは
   1p×1g=1p・g である
 ・翼の先端部分(中心から5pとする)にある1g(グラム)の重さの慣性モーメントは
   5p×1g=5p・g となり、同じ重さでも5倍も慣性モーメントが大きくなる

☆ 慣性モーメント/重量比の大きい竹とんぼ
 ・持ち上げたときには軽く感じ ・・・・・・ 重量が小さい
 ・回転させようとすると重さを感ずる ・・・・・・ 慣性モーメントが大きい

☆ 上昇する力・揚力の向上
 ・沢山の空気を押し下げる
 ・適切な仰角
 ・翼の面積を大きく

☆ ブレーキとなる力、抗力を減らす
 ・仰角を適切に
 ・鋭角な部分をなくす
 ・翼の形の工夫

☆ 軸や羽根の中央部分のしなりで力を貯める
  ゴルフクラブのシャフトはスイングする時しなり、スイングし易くし(軽く感ずる)て、
  ヘッドのスピードを上げる様に工夫されている。竹とんぼにも応用する
 ・軸のねじれ
   掌で支える部分と羽根に接合する部分の5〜6pをより細く
   花型軸はねじれを増す効果もある
 ・羽根の中央部のたわみ
   「ひねり・ひねり竹とんぼ」はこの目的も実現する形として考案した。

☆ 精度良く作る
 ・軸を中心とした回転方向のモーメントのバランス
 ・左右の重さのバランス
 ・左右の揚力や抗力のバランス
   翼のひねりや面積を可能な限り左右同じに作る
 ・軸の取り付け角度を直角に
   羽根の長さ方向との直角度
   羽根の幅の方向との直角度

☆ 体力に合った竹とんぼ
 ・エンジンは自分の体
   竹とんぼを飛ばす力は自分の体です。
   自分の力に合った竹とんぼの慣性モーメントのトンボが最も良く飛びます。
 ・飛ばすときに十分な回転速度を与えられる重さ(慣性モーメント)が限度
 ・慣れるとより大きな慣性モーメントの竹とんぼを飛ばせる
   練習しましょう。

☆ 高く飛ぶ竹とんぼ
 ・先ず自分の体力にあった慣性モーメントの大きさを
   出来るだけ無駄な部分の重さを減らして、この重さを羽根の端に移します。
   具体的には鉛を先端へ付ける。
 ・重さと揚力とのバランス
   揚力は仰角の大きさと羽根の面積に比例します。
   仰角は25度程度が限度でこれ以上にすると姿勢が保ち難くなります。
   従って揚力を左右するものは羽根の面積です。
   翼の面積は竹とんぼが落ち始めて、途中で回転が止まり、地面に接するときには
   逆回転を始めるほどの面積が高く飛ぶ条件のようです。
 ・地面に接するときもまだ回転し続けるならば、もっと羽根の面積を大きくします。

☆ 遠くに飛ぶ竹とんぼ、風に強い竹とんぼ
 ・高く飛ぶ竹とんぼに比較して迎角すなわち揚力を小さくし、抗力を小さくすることで実現します。

 

基本型(ベーシックタイプ)の性能アップ

☆ やや厚い素材から作った基本型トンボの性能アップ
 ・ウェイトを付けずに慣性モーメントを大きくするために厚い素材を用いる
   素材の厚さを2.8ミリのものを使った。
 ・この重さでは小学生には飛ばし難い
 ・羽根の中心に近い部分だけを削り取り、先端部分はそのままにする
 ・軽量化の作業と効果
 
性 能 アップ 作 業重 さ軽 量 化 効 果
基本型としての完成品5.04 g 
軸の軽量化4.48 g0.56 g
中心部の羽根の幅を狭く
 7.0o → 4.6o
4.23 g0.25g
中心部の厚みを薄く
 2.8o → 1.0o
3.57 g0.66 g
軽量化の合計3.57 g1.47g

  少し厚めの素材を使ったので 5.04 gと鈍重な竹とんぼとなってしまった。
  これに性能アップの加工を施した。
  この結果 1.47gと 29.1% もの軽量化が実現し、重量 3.57 gとなり
  かなり軽快な竹とんぼ
に変身し、飛行性能のアップが実現した。


 

☆ 羽根を薄く削り鉛のウェイトを付ける
 ・羽根の厚さを薄く
   前縁と後縁の厚さが08oになるまで薄く削る、皮付きのままで
 ・花型軸化

性 能 アップ 作 業重 さ 
薄くした羽根と花型軸を組み立て2.88 g 
鉛のウェイトを羽根の両端へ0.75 g 
完 成 品3.63 g 

 

☆ 構造を変えて軽量化する
 ・大きさとデザインは基本型と同じで
   羽根の寸法  110o × 16o
 ・翼の厚さは薄くする
   1〜1.2o程度、これ以上薄くすると強度上の問題が生ずる
 ・変更点は素材を取る竹の部分
   基本型は皮付きのものを使用 ・・・・・・ 強度、比重とも高い
   ここで使用するのは今まで捨てていた内側の部分 ・・・・・・ 強度、比重も低い
   強度は弱いが比重が小さいので軽くできる
 
 重 さ特 徴 点
羽根の素材1.45 g均一な厚さの板に仕上げるのがポイント
寸法は 110 × 16 × 1.2o
羽根として加工1.06 g厚さ以外は基本型と同じデザイン
0.75 gこちらも皮の部分を0.5o取り除き
花型軸に加工
寸法は 3 × 3 × 150o
ウェイト1.22 g釣り用の鉛板をエポキシ系の接着剤で固定
出来るだけ先端に配置するように二つに折り曲げ
表と裏に貼る
完成品3.03 g狙い通り高い慣性モーメントが得られたが
羽根の面積をもう少し大きくし、
揚力を増せばもっと高く飛びそう

 ・基本型では捨てていた部材で高性能な竹とんぼ作り
 ・ハイパー竹とんぼ(Hyper Taketonbo)への入り口となる作品
   もっと自由な発想と工作技術で、更に高性能な竹とんぼを求める

☆ 工作の精度を高める
 ・バランス
 ・軸を真っ直ぐに
 ・軸の直角度
   基本型の作製手順では羽根にひねりを加えてから軸を取り付けていた。
   この方法では羽根と軸との直角度を出しにくい欠点があった。
 
 作製方法の変更
  今までの作り方では羽根にひねりを加えた後で軸を取り付けていた。直角度を出し難い原因は、羽根に付けられたひねりのため直角を出す基準線が分かり難くなった為である。
  これを改善するため、ひねりを加える前に羽根と軸を組み立て接着してしまうことにした。この方法ならば三角定規を当てて直角度が簡単に出せるようになる。
  この後、羽根にひねりを加えて完成させるのである。

  基本型の作製でこの方法を採用しなかったのは、別に問題があったからである。
☆ 第一に、軸が付いているのでひねりを付ける作業がやり難いのである。
☆ 第二に、ひねりを加えるための加熱に接着剤が持たずに軸が離れたり、動いてしまうのである。
 これでは先に組み立てた意味が失われてしまう。

☆ 解決策 ・・・・・ 加熱の温度を下げる
  接着剤が駄目にならずかつ竹が曲がる温度を探した結果、摂氏100度ならば可能なことが分かった。ローソクの火であぶったならば急速に温度が上昇し、100度付近の温度にするのは大変難しい。

  そこで、熱湯に浸して加熱する方法を採用した。
  小鍋を火に掛け沸騰した熱湯の中に軸を持って羽根の部分を入れ、20秒程度で引き上げ素早くひねります。両手には炊事用の手袋等を着け、火傷を防ぐ処置が必要です。
  ローソクの火であぶった時より温度が低いので、曲がりにくいので少し力を入れる必要があります。また、冷め乾燥してくる時にひねりが少し戻りますので少し大きくひねりを加える必要があります。

☆ 欠 点   温度が低いのでひねり難く、元に戻り易いことを述べましたが、竹を熱湯で煮ることになるので、表面から竹の成分が溶けだします。
  このため出来上がった竹とんぼが白っぽくなる欠点があります。長く熱湯に浸けているとこの現象が進みますので手早く処置する必要があります。

☆ 注意点 ・・・・・ 火傷に注意
  普段使い慣れないので、小さなローソクの火を危険と感ずる人が多い。危険と感ずるから種々な注意をして扱うので事故は起きにくいと思います。
  客観的にも周囲に可燃物さえ置かなければ、ローソクの火の方が熱湯より遙かに安全です。誤って倒しても、火に触れても火事や火傷にはなり難いのです。
  熱湯の方が遙かに危険が大きく、誤って鍋をひっくり返すと大やけどの危険があります。

  子供さん相手の竹とんぼ教室ではこの方法を使わない方が良いと思います。


性能アップで使用する道具

道 具・消 耗 品 
彫 刻 刀軸の四面をV字型に削り、花型軸を作る
0.1 gの精度で量れるもの
私は30pの竹製の物差しを割って棹とし
1円硬貨(1 g)で分銅を作った
  

☆ 簡便な秤の作り方
  市販されている秤はかなり高価である。学術論文を書くのでなく、売買する物の重さを量るのでもないので絶対値の正確さを必要としない。すなわち、計量の精度は必要とするが絶対的な正確さは必要ないのである。
  加工前に0.95グラムあり、軽量化のため余分と思われる部分を削った結果、0.76グラムとなり、0.19グラム軽くなったことを知りたいのである。

  世界で私しか持っていない、安価に出来るなど、ここでもこだわりたかった。
試行錯誤の末、竹製の30pの物差しを幅5o程度に割り、目盛りの刻んである部分をはかりの棹(さお)に使うことにした。
中央部(15pの所)に糸を結んで支点とする。
秤も竹が使えたのが嬉しい。

  分銅には1円のアルミ硬貨を使う。アルミ硬貨は約1グラムである。アルミ硬貨に糸の輪を接着剤で貼り付ければ出来上がりである。
1枚ならば1グラム、2枚貼れば2グラムの分銅となる。
  使い古した物差しを使ったのでコストがゼロで出来た。
 物差しを買っても300円ほど。

秤で完成したトンボを計量中



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