放置された竹林

☆竹が里山を襲う
  全国各地で竹が暴れている。人里近くの山で樹木を圧倒し、畑や宅地にまで入り込み出した。竹林自体や、侵入されている山林、原野が放置されているからだ。
タケノコの輸入が増大しているほか、竹材もプラスチックなど代替品が普及し、竹の利用が激減したことが響いている。
竹林の異常拡大によってヒノキやスギの若本が枯れ、山林価格の下落を招いている。奥富清東京農工大名誉教授は「日本の自然景観が変わってきた」と指摘する。

  静岡県のほぼ中央部にある藤枝市。内陸部の山すそや山腹のあちこちで、竹が突っ立ち、茂っている。高さ3〜4メートルのヒノキの若木が竹に取り囲まれている。10年ぐらい前から目立ってきたという。「このままでは、山全体が竹林になってしまう」と、同市森林組合の渡辺恭男組合長は深刻な表情だ。
もともとタケノコの産地で、同組合の森林簿の上でも竹林が約3百ヘクタールにのぼる。ところが、最近は手入れされずに竹が激増し、領域を拡大している。

☆ 若木枯らし、住宅地にも
  たとえば、同市瀬戸ノ谷、瀬戸尾淳一さんは標高250メートル前後のところに約70アールの竹林をもっている。
「かっては、お茶の始まる4月上旬までにタケノコを掘り、100万円ぐらい稼いだ!この20年ぐらいは、3分の1ぐらいに値がりし採算に合わずやめている」その間、竹は隣接のスギを植林した30アールも覆い尽くし、スギは枯れて竹林になってしまった。

  東京多摩地方の南部、八王子、町日、稲城、多摩の4市にまたがる約3千4百ヘクタールの地域。奥富名誉教授によると、竹林は1961年には地域の1%程度だったが、現在は住宅地などを侵食し、3倍近くに増えているという。
1角の八王子市宮下町にある杏林大学八王子校舎は敷地内に竹が密生しコナラなどの樹木を枯らした。「もっときれいに」と市から要請され、道路から見える丘の上を約200平方メートルを伐採した。
しかし、竹の地下茎に下水管を持ち上げられた。侵入を防ぐだめ30万円かけブロックで固めなければならなかった。

☆ 竹の需要は激減
  竹細工の特産地である大分県はかつて材料の竹も供給していた。いまは竹林の大半が放置されている。同県山香町では植林が枯らされた所がある。古い竹は硬く、チェンソーの刃がこぼれ、農薬でも枯らしにくい。山の価格は、広葉樹やスギ、ヒノキの伐採跡の山は道路に近ければ1ヘクタール当たり60〜70万円なのに、「竹があると3、4割は安くなる」と森林組合。
  林野庁の調べでは、65年に比べ、タケノコの消費量は4倍近く増えたが国産は15%。竹材の使用は4分の1に減少している。


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