でたらめな方向に生長していた菌糸が、どうして一定の方向に向かって生長を始め、多数集まって原基になり、キノコに生育してくるかという研究がヒトヨタケやスエヒロタケを使ってなされてきている。同じキノコの仲間であるシイタケにも、これら研究成果はある程度あてはまるはずである。
① 温 度
キノコは一般に低温が刺激になって原基を作るといわれている。これはシイタケにも当てはまり、品種によってかなり長い期間低い温度にさらされる必要のあるもの、高温時に短い時間低温処理されれば良いもの、ある期間高温と低温の変動の繰り返しによってキノコが出るものなどがある。
暖冬の年は不作だとか、日照りの夏は収量が少ないなどと言われて来たが、これは低温刺激が適当に与えられないためと考えられる。
キノコが発生してから生長する時の温度は、低温の方が充実した品質の良いキノコになるが、採取できるまでの時間がかかる。高温ではキノコの質が柔らかくなり、小さいうちに笠が開き柄も長くなって品質の劣った物になる。
②水 分
キノコの発生にはホダ木に含まれる水分と、ホダ木を取り巻く空気湿度が関係するが、キノコが生長する時はより多くの水分が必要である。
ホダ木の水分が多くなると菌糸の生長は妨げられ、逆にキノコは発生し易くなるが、乾燥し過ぎて含水率が25%以下になると発生は著しく悪くなる。
キノコが生育するには80、90%の空気湿度が適当で、これより少ないと発生したキノコは生長を止めてしまう。また湿度が多すぎると、キノコが水分を含みすぎて商品価値が落ちる。
③ 光 線
菌糸の発育には、光は必要としないが、キノコの原基ができ、それが生長するには光が必要である。暗黒状態ではキノコは全く出来ない。
寒天培地でシイタケ菌糸を光をあてて培養したときは、20、25日目くらいからキノコの原基が出来はじめるが、光を全くあてないと何日おいてもキノコを作らない。また、最初光をあてて、あとは暗黒の状態にしておくと、キノコの原基は出来るが、キノコに生長しないで、また菌糸にもどってしま。
ホダ木の場合も光線の無いとキノコが発生しないし、発生しても光が少ないと笠の色が薄くなったり、柄が長くなったりして形が崩れ易い。品質の良いシイタケをたくさん発生させるには、ホダ場を明るくすることが必要である。
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