コナラ <小楢>

ブナ科 コナラ属 (Quercus serrata)

ドングリから発芽した双葉
根は15p以上地下に伸びている
 

コナラの新芽
 

堂々としたコナラの幹
絡んでいるのはカラスウリのつる

  <落葉高木>

 日当たりの良い山地に生え、高さ普通15〜20メートル、大きいものでは30メートルに達する。樹皮は灰黒色で縦に不規則な裂け目がある。
雌雄異花(しゆういか)・・・・同一個体に雄花と雌花が咲く・・・・であり、雄花序は長さ6〜9センチ黄褐色。花被は5〜7裂し、雄しべは4〜8個ある。
雌花序は本年枝の上部の葉の脇から出る。若葉を広げると同時に花を咲かせる。花期は4〜5月。
 秋には細長いドングリとなり殻斗(かくと)から離れて落下する。
雑木林の代表的な樹種を成している。所によってはクヌギ(まるいドングリを付ける)が多い雑木林があるが、狭山緑地ではほとんどがコナラである。子供づれでドングリを拾いに来て、「丸いドングリ」が見つからないと言っている場面によく出会う。
ポケットに入れておき進呈すると喜ばれる。こんなことから将来、もう少しクヌギを増やしたいと考えている。

 秋の木漏れ日に当たりながら、枯れ草の上に寝ころんで枝の間を踊りながら落ちてくる枯れ葉を見ているのは楽しく、時の経つのも忘れる。 冬、すっかり葉を落とした梢がセピア色に染まり淋しさ、悲しさを感ずる景色となり、何故かお袋を思い出す。
 この時期、大地にしっかりと根を張り、逞しい幹が目立つ。 幹は色合い、皮の裂け目が一本ずつ異なっている。太さも種々有り、曲がったり、虫に食われたりしたものもある。でも枝や梢、春になると伸び出す葉をしっかり支えている。良き父親像ではないかと思う。

 新緑の季節は、ほぐれかけた芽の色が銀色から淡い黄緑へと変化し、林全体が春霞を背景にパステルカラーの彩りを見せる。近づいて観察するといっぽん一本、葉のほぐれる早さ、色、形が微妙に異なっている。『命の多様性・個性』の現れを体感することが出来る。
 この季節、地面にも多くの光が射し込み、林床の植物は急いで葉を伸ばし花を咲かせ、コナラの葉が茂って日が射さなくなる前に実を付けたり、エネルギーを蓄える。

 根元では秋に落ちたドングリが体に似合わないほどの長い根を張り、発芽を始めている。しかし、この小さな命は親木の影のため十分なエネルギーを得られず、冬越しが出来ずに枯れてしまう。可哀想だと思う人がいるだろうが、親木が何らかの原因で枯れた時、直ぐに交替できる仕組みを備えてあるのだろう。
これが自然界・生物の命のあり方、欲しがるものは何でも与え、子供を甘やかすだけが愛情とされる、昨今の人間界には疑問を感じる。『生きる力』が萎え、『社会の秩序』が乱れるのは当然の帰着であろう。

 コナラはここに棲む多くの動物にとって、大切な食糧。葉や幹から出る樹液は多くの昆虫のエサとなり、落ち葉や枯れ枝はキノコなどの菌類、更に菌に分解された腐葉土はカブトムシ・クワガタなどのエサとなっている。

 用途としては材の堅さを活かして、建築・器具材、薪炭、椎茸の原木、良い堆肥として有機農法を支えている。


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