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ヒメスズメバチ  Vespa ducalis pulchra Buysson,1905


体長は女王バチ,オスバチ,働きバチとも24〜37mmで大きさの差はあまりありません.オオスズメバチに次いで大型の種で,腹部は黄色と黒の縞模様をしています.本種のみ腹端が黒色なので他の4種(腹端は黄色)とは容易に区別ができます.ただし,対馬亜種は腹端が黄色をしています.わが国には以下の3亜種が生息し,平地から低山地にかけて普通に見られます.

 日本本土亜種 Vespa ducalis pulchra Buysson,1905:本州,四国,九州の広範囲に生息
  対馬亜種 Vespa ducalis esakii Sonan,1935:長崎県対馬島に生息
  琉球亜種 Vespa ducalis loochooensis Bequaert,1936:沖縄本島を除く南西諸島(奄美大島〜西表島)に生息

営巣場所は屋根裏や物置の中,土中などの閉鎖的な場所です.巣は釣り鐘状または電灯の傘のような形をしており,下端は開放していて巣盤が見えます.巣盤数は3〜4層,育房数は210〜400房で,スズメバチの中では最も小型の巣を作ります.

幼虫の餌は他種とは大きく異なっており,アシナガバチの幼虫と蛹を噛み砕いてその体液のみを利用します.そのためアシナガバチの発生消長に合わせた生活をしており,営巣期間は約5ヶ月と最も短く,女王バチは5月中旬頃から営巣を開始します.働きバチは7月より羽化し,8〜10月には50頭を越えます.オスバチと新女王バチは8〜9月に羽化します.新女王バチの羽化数は営巣規模により異なりますが,20〜40頭と少数です.

体長がオオスズメバチに次いで大きなことや,威嚇性が強く体の周囲にまとわりつくように飛び回るので恐怖感を与えますが,攻撃性は最も弱く毒性もあまり強くありません.

最近,高層ビルの最上階や屋上付近を,本種のオスバチが多数飛び回り,住民に恐怖感を与える事例が市内各地で発生しています.発生時期は8月下旬〜9月下旬にかけてで,時間は午前9時30分頃〜10時半頃の間です.飛来したオスバチは,建物に沿って活発に飛び回り,時々屋上へ飛来します.これは本種の交尾行動に伴うもので,飛び回っている個体は全てオスバチのため,刺傷被害が発生する心配はありませんが,特に有効な対策もありません.本来の交尾場所は小高い山の頂などで,沖縄県石垣島のバンナ岳の展望台付近で,同様な行動を1998年9月と2002年9月に確認しています.

薄暗い小屋の天井に作られた巣(外皮は電灯の傘状) 家具の中に作られた巣(育房からい繭 が大きく突出する) 床下にある風抜き穴のすぐ奥に作られた巣 (隅に目張りが見られる) 駆除後枯れ草の下から掘りだした巣(外皮が一部破損)
フタモンアシナガバチの巣を襲う女王バチ アベマキの樹液に飛来した 女王バチ イチジクを囓る働きバチ ヤブガラシの花で吸蜜する働きバチ