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古文書に記されたスズメバチ


平安時代に作られた辞書である「和名類従抄」には,蜂(和名:波知)の項目に土蜂(和名:由須留波知)と木蜂(和名:美加波知),蜜蜂(和名・美知波知)の記載があり,明治時代になって刊行された校注本「箋注和名類聚抄」狩谷棭斎校訂には詳しく解説されています.

土蜂は「大きな蜂で地中に巣を作る」とあることからオオスズメバチだと考えられます。木蜂は「土蜂に似るが小型で木に巣を作る」とあることから,コガタスズメバチだと思われます.


和名類聚抄 国立国会図書館デジタルコレクションより転載

箋注和名類聚抄 国立国会図書館デジタルコレクションより転載

江戸時代に出版された「本草綱目啓蒙」という書物の「大黄蜂(キイロスズメバチ)」の項に,「一種,形最大ニシテ色黒ク腰ノ色黄赤ナル者ハ胡蜂ナリ.俗名クマバチ,スズメバチ,オホカミバチ,アンドンバチ」という記述があります.「本草綱目啓蒙」は,江戸時代の本草学者「小野蘭山」が,中国「明」時代に李時珍が著した「本草綱目」を訳し,解釈や補注をつけたものです.動物,植物,鉱物などについて書かれた博物誌で,日本各地の呼称についても触れています.スズメバチに関しても詳しい記述があります.


本草綱目啓蒙 
国立国会図書館デジタルコレクションより転載

同じ江戸時代に貝原益軒が著した「大和本草」にも土蜂,大黄蜂(クマハチ,ヤマハチ)等の記述があります.また,「和漢三才図会」にも,土蜂(ゆするはち),木蜂(みかばち),大黄蜂(やまばち),赤翅蜂(あかばち)等の記述が見られます.


大和本草 国立国会図書館デジタルコレクションより転載


和漢三才図絵 国立国会図書館デジタルコレクションより転載