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ハチの巣の暑さ対策


スズメバチやアシナガバチにとって,夏の暑さは子育ての大敵です.巣の内部が高温になると幼虫は弱って死んでしまいます.そこで”空冷”と”水冷”という2つの方法を駆使して巣内を冷やします.巣内の温度が33℃を超えると,働きバチ(女王バチ)は巣に止まって素早く翅を震わせて送風して巣を冷やし、巣内の温度を28〜32℃に保ちます.

スズメバチやニホンミツバチの場合は,お尻を巣穴の方に向けて止まり翅を震わせ,巣の内部に風を送り込みます.一方,セイヨウミツバチは頭を巣箱の入り口に向けて翅を震わせ,換気扇のように内部の空気を掻き出します。

最近,都市のヒートアイランド現象を解消する手段として,昔からよく行われてきた”打ち水”が注目されていますが,ハチも巣を冷やすために巣に水を運び,表面にかけてその気化熱を利用して巣を冷やします.水瓶や池などにアシナガバチが頻繁に通ってきて吸水しているのを見たことはありませんか.これは巣を冷やすために水を運んでいるのです.アシナガバチは身近に巣を作ることが多いため,こうした光景をよく見かけます.

スズメバチも同じように吸水にやってきますが,見かける機会はそれ程多くありません.スズメバチの巣は外皮があるため,巣の内部と外皮上で同じようにして巣を冷やします.気化熱を利用することにより,巣内の温度を3〜7℃も下げることができます.

こうして懸命に働く姿を見ると,怖そうに見えるハチ達にも少し親しみが湧いてきませんか?


羽を振るわせて巣内に送風するコガタスズメバチの働きバチ 樹洞の巣の入り口で,集団で送風するモンスズメバチの働きバチ サクラの根元にある巣の内部に送風するオオスズメバチの働きバチ 羽を振るわせて巣内の熱を換気するセイヨウミツバチの働きバチ


吸水するコガタスズメバチの働きバチ 吸水するフタモンアシナガバチの働きバチ 吸水するセイヨウミツバチの働きバチ
羽を振るわせて送風するセグロアシナガバチの女王バチ 吸水するセグロアシナガバチの働きバチ 巣盤の上にたくさんの水が撒かれ,あちこちに水滴も見えている 巣盤の表面に水滴が見えるヤマトアシナガバチの巣 

成虫も夏の暑さは苦手です.下の写真はいずれも8月16日撮影したものです.左の写真は直射日光が巣に当たっているため,ほとんどのハチは巣の下面に隠れていて姿が見えません.翅を震わせて風を送り巣を冷やしている働きバチが1頭見えるだけです.そこで巣に直射日光が当たらないよう上部に板を置いて陰を作ってやると,たくさんのハチが巣の上面に出てきました.