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日没後も数時間巣外で活動するモンスズメバチ


東南アジアに生息するヤミスズメバチ属 Provespa 3種のみが夜行性の種として知られており,夜間灯火に飛来して刺傷被害の原因となっていますが,日本には生息していません.

日本に生息する3属16種のスズメバチは,いずれも昼間活動しますが,モンスズメバチのみが日没後も数時間,巣外で活動することが知られています.そのため巣が近くにあると,街灯に群がったり,あるいは室内に侵入して相談が寄せられることがあります.筆者も,夜間のイベント中に,テント内に働きバチが飛来した事例を経験しています.

2010年9月3日の夜間に,本種による刺傷被害の情報が得られたので,その顛末を紹介したいと思います.現場は市内にある大規模な緑地で,モンスズメバチの営巣が多いところです.公園の昆虫相をを明らかにする目的で,夜間灯火採集を実施していたところ,”100頭以上ものモンスズメバチが灯火に集まってきて,2人が刺された”とのことでした.時間は午後10時30分頃で,この日の日没は18時18分ですから,日没後約4時間経過しています.

緑地内は他に照明が無く,灯火採集の明かりに集中的に引き寄せられたものと考えられます.極めて多数の個体が灯火に集まったことから,比較的近くに巣があると思われました.

その後9月27日に,現場から北に75m程離れた高台で本種の営巣を確認し,巣を駆除しました.巣は放置されたミツバチの巣箱内に作られており,巣盤数7層,育房数4368房とかなり規模の大きな巣でした.(:営巣場所,:被害発生場所)



刺傷被害の原因となった巣 駆除後の巣の内部の様子 営巣場所付近から刺傷被害発生現場()を望む