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スズメバチネジレバネ Xenos moutoni


ネジレバネという,あまり聞き慣れない名前の小さな昆虫を知っていますか?ネジレバネの仲間(ネジレバネ目に属する昆虫)は,スズメバチ以外にもさまざまな昆虫に寄生しています.

スズメバチネジレバネ Xenos moutoni は各種のスズメバチに寄生し,幼虫の間は雄もメスも寄主の体内で過ごします.メスの成虫は翅も脚も無く,幼虫のような形をしており,一生をスズメバチの体内で過ごします.栄養は全てスズメバチに依存している真の寄生者(prasite)です.

コガタスズメバチでは,一般に第5腹節と第6腹節の間からキチン化した頭部を覗かせています.雄は蛹の頭部を第4腹節と第5腹節の間から覗かせています.羽化した成虫は2枚の後翅で飛ぶことができますが,口は退化していて全く餌を採りません.前翅は退化して棍棒状になっています.

ネジレバネに寄生された働きバチは,巣の中でジッと静止していることが多く,餌集めや巣材集めに外へ出かけることはありません.また,巣内の作業にもほとんど従事しません.そのため,ネジレバネの寄生率が高くなった巣では,コロニーの発達が阻害されます.

また,新女王や雄がネジレバネに寄生された場合も繁殖には寄与できないと考えられています.ネジレバネに寄生された女王バチは巣作りをすることはなく,翌年7月頃まで樹液を訪れます.ネジレバネは寄生率が極めて低く,人目にも触れにくいため生態等についても未知の点が多い昆虫です.


越冬中のコガタスズメバチの働きバチに寄生する♀ (頭部が見えている) ネジレバネの♂が多数寄生したコガタスズメバチの働きバチ ネジレバネの♂が多数寄生したコガタスズメバチの働きバチ

名古屋市で駆除したコガタスズメバチの巣からは,多数のネジレバネに寄生された個体(被寄生個体)が見つかります.その他に,キイロスズメバチ,ヒメスズメバチ,オオスズメバチからも被寄生個体が見つかっていますが,コガタスズメバチほど多くはありません.

コガタスズメバチの成虫39,258頭のうち,被寄生個体は1,145頭,平均寄生率は2.9%とこれまでに知られていないほど高率でした.被寄生個体は全て7月以降に駆除した巣から見つかっており,9月には58.6%と半数以上の巣で寄生が見られました.月別の平均寄生率も,9月が3.9%と最も高い割合を示しました.

ネジレバネに寄生された働きバチは,冬になっても死亡せず,そのまま越冬することが知られています.越冬調査の際,新女王バチと一緒に越冬している働きバチをしばしば見かけます.そのため,越冬個体の平均寄生率は7.4%と,新女王の寄生率(1.4%)よりも随分高くなっています.


   


コガタスズメバチの体内から取り出したネジレバネのメス成虫 コガタスズメバチの体内から取り出したネジレバネの雄蛹  ネジレバネの雄成虫