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高層ビルの上部を集団飛行するヒメスズメバチの交尾行動


2000年頃から,スズメバチが高層マンション等の最上階周辺を集団で飛び回り,住民に恐怖心を与えるという事例が目立つようになりました.時には網戸やガラス戸に当たったり,壁に止まったりする他,窓が開いていると室内に侵入してくることもあり問題となっています.

ヒメスズメバチが多発した1999年には,名古屋市内で9月3日〜29日までの約1ヶ月間に20件の相談が寄せられました.2000年,2001年にも少数ですが相談が寄せられています.相談は最上階の住民からが大部分を占めています.また,メールでも全国から同じような相談や情報の提供がありました.これはヒメスズメバチの交尾行動によるもので,オスバチが集団で飛び回っているところへ新女王が飛来し,交尾することが明らかになりました(新女王の飛来と交尾が目撃されています).

飛来したオスバチは,建物の中程から最上階にかけて,建物に沿って飛び回り,時々屋上に上がってきては,また下に下りて周辺を飛び回るという行動を繰り返します.そのため”屋上に巣があるのではないか”という苦情が寄せられることが多く,管理会社や保健所の職員が屋上を調査したものの巣が見つからなかったケースも少なくありません.また同一方向から飛来するため,”近くの雑木林に巣があるのではないか”などと住民から指摘されたケースもあります.



飛来時期は,8月末〜10月上旬にかけてで,9月中旬頃にピークがあります.飛来する時間は,午前中の9時頃〜11時頃の問に限られ,ピークは 9時半〜10時半頃のようです.それ以外の時間にはほとんど姿を見せません.

該当する建物の高さは4階から25階までと幅がありますが,大部分は10階建以上です.いずれも地形的に高い場所か,周辺に大きな建物が少ない場所にあり,周囲からよく目立つという共通点があります.



集団の数は,現場調査をした時点ではピークを過ぎていて不明ですが,”ウジャウジャ飛んでいる”,”怖くてベランダへ出られない”などという発言もあることから,ピーク時には相当多数の個体(最大規模で数十頭程度か?)が飛来すると思われます.飛び回っている個体はオスバチばかりであること,時折飛来する新女王バチには攻撃性が無いことなどから,刺傷被害が発生することはありません.

自然環境下では,小高い山の頂上付近を目標にオスバチが集まり,そこへ飛来する新女王バチと交尾をするという本種の交尾行動が,都市環境下では,目標を高層建築物に変えるという適応能力に感心させられます.

ヒメスズメバチの他に,キイロスズメバチも同様の行動をとることが分かってきましたが,活動時間帯が異なるようです.また、オオスズメバチは,巣の入り口付近でオスバチが中ら出てくる新女王を待ち受け交尾することが知られていますが,2003年に11階建てのマンションの屋上付近を,多数のオスバチがヒメスズメバチと同じような行動をとる事例が2件観察されました.他にもオオスズメバチと思われる集団飛行の情報があり,今後の調査が必要です.


ヒメスズメバチの集団飛行が見られたマンションの
屋上から見た周辺の様子(2000)
ヒメスズメバチの集団飛行が見られた
14階建てマンションの様子(2013)


マンションの最上階付近を飛び回オスバチ(2013)



相談が寄せられた建物の場所 (1999-2003)