TOPメニュースズメバチの生物誌オオスズメバチの不思議な行動 > ムクゲに集団で止まる働きバチ

ムクゲに集団で止まるオオスズメバチの働きバチ


2004年9月に,”ムクゲの木にオオスズメバチが50頭位止まっている”という情報が保健所経由で寄せられました.9月30日の午後,現場へ出かけてみると,50頭どころではなくザッと数えて200頭もの働きバチが枝のあちこちに止まっていました.長いスズメバチとの付き合いの中で初めて見る光景に思わず大興奮!

ハチは樹皮を囓って樹液を舐めているように見えますが,大部分は枝に止まったままで,1頭,2頭と時々どこかへ飛んでいくハチの姿が見られます.近所の人の話では,2週間ほど前から急にハチの数が増えてきたので驚いて保健所に相談したとのことです.

雨となった10月5日にも,ハチはどこかへ飛び去ることもなく,枝に止まって樹液を舐めていました.これほどのハチが集まっている理由としては,”何らかの原因(大雨で巣が埋没した,人為的に巣だけが持ち去られたなどが考えられる)で巣が利用できなくなり,行き場を失った働きバチが集まってきたのではないか”と考えています.営巣活動をしている様子もありませんから,そのまま放置しても特に危険はないと思われます.

それにしてもなぜ一本の木に200頭も集まったのでしょう?.なぜムクゲの木なのでしょう?.ハチはいつまでこの木に留まっているのでしょう ・ ・・ .疑問は尽きません.

大型の台風23号が通り過ぎた10月22日にまた現地へ出かけました.さすがにハチの数は少なくなり20頭ほどが確認されただけでした.

その他には1頭のウラギンシジミと2頭のコガタスズメバチが確認されました.やはりムクゲの木にも樹液を求めて昆虫たちが集まってくるようです.このことは,10月24日に守山区内で見かけたムクゲの幹の切り口に多数のアリが集まっていたことからも確認できました.

同じ2004年に市外の方からカリンにも集まっているという情報がありました.また,2005年8月には市内でハナノキに集まっているという情報が寄せられた他,コナラに大規模な集団が見られたようです.2006年にも同じように集団で樹液に集まっているという情報が何件か寄せられており,2ヶ所で現場を確認をしています.

2009年10月に,市内の公園でオオスズメバチの巣を駆除したところ,150mほど離れたハルニレにオオスズメバチの働きバチが止まっているという事例がありました.現場を確認した際には,オオスズメバチの姿は無く,枝や幹に無数の囓り跡と,薬剤を噴霧され死亡した個体を8頭確認したのみでしたが,”巣がなくなり,残った働きバチが行き場を失ったため特定の木に集まった”という推定を裏付ける結果となりました.

2014年9月にも,愛知県稲沢市内の公園で,それまでスズメバチが飛来することがなかったシラカシに突然多数のオオスズメバチが集まってくるという事例がありました.この事例も大雨が降ったしばらく後であり,巣が埋没した可能性があります.


オオスズメバチが多数集まっている高さ5m程のムクゲの木
赤丸の場所にハチが止まっている
(画像をクリックすると拡大写真を表示)
枝に止まって樹皮を囓る働きバチ
(画像をクリックすると拡大写真を表示)

止まっているハチの数も少なくなった(10/22) 樹液を吸うウラギンシジミ 切り口に集まるアリの群れ
(小幡緑地)