コガタスズメバチとは
和名:コガタスズメバチ,学名: Vespa analis Fabricius,1775,英名:yellow-vented hornet,中国名:擬大胡蜂,擬大虎頭蜂
海外では,インド,東南アジア各国,中国,シベリア南東部,台湾など、アジア各地に広く分布します.
わが国に生息するスズメバチ亜科17種(ツマアカスズメバチを含む)の中で最も広範囲に分布し,以下の3亜種が北海道から沖縄県八重山諸島まで生息しています.本州の西南暖地では平地から低山地にかけて普通で,市街地でも見る機会の多い種です.
日本本土亜種 Vespa analis insularis :北海道から大隅諸島まで広範囲に生息
沖縄亜種 Vespa analis eisa
:奄美大島から沖縄本島に生息
八重山亜種 Vespa analis nagatomii :石垣島,西表島に生息
コガタスズメバチの生態
コガタスズメバチは,キイロスズメバチとともに,都市部を中心に各地で多発しています.その理由として,(1) 営巣規模が比較的小さい,(2) 営巣場所に柔軟性がある,(3) 餌としてさまざまな昆虫やクモを狩ることなどが挙げられ,市街地の環境に最も適応能力の高い種であるといえます.
名古屋では市内全域で最も普通に見られ,駆除件数の90%を占めて圧倒的な優占種となってます.体長は女王バチ25〜30mm,働きバチ22〜28mmで,名古屋市内に生息するスズメバチ属5種の(コガタスズメバチ,キイロスズメバチ,ヒメスズメバチ,モンスズメバチおよびオオスズメバチ)のなかでは中位の大きさです.
オオスズメバチとよく似ていますが,一般に小型であることや頭楯(とうじゅん)の形で区別することができます.成虫はヤブガラシ,キヅタなどの花蜜をなめによくやってきますが,樹液ではあまり見かけません.
巣は外皮に覆われたボール状をしていますが,女王バチが単独で巣作りをしている時期にはトックリを逆さにしたような形をしています.営巣規模は比較的小さく,最盛期でも巣の大きさはタテ30cm×ヨコ25cm位,巣盤数は2〜5層,育房数は1,000房位に過ぎません.営巣場所は樹の枝や家屋の軒下などの開放的な場所で,約80%が樹木に,残り20%が家屋に巣を作ります.
越冬を終えた女王バチが5月中旬頃に単独で営巣を開始します.働きバチの羽化は6月中旬で,活動が最も活発となる9月〜10月には100頭を越えます.オスと新女王は9月〜11月に羽化します.幼虫の餌としてハエ,アブ,小型の甲虫類やハチなどさまざまな昆虫を狩ります.
攻撃性,威嚇性は5種の中では弱い方ですが,巣を刺激すると激しく攻撃するため,剪定作業中などにしばしば刺傷被害が発生しています.
よく似た種(オオスズメバチ)との判別点
コガタスズメバチ | オオスズメバチ | |
女王バチの大きさ | 25-30mm | 40〜45mm |
働きバチの大きさ | 22-28mm | 27〜40mm |
頭楯の形 | 下の突起は3つ |
下の突起は2つ |
営巣場所 | 樹木の枝や建物の軒下 などの開放空間 |
樹洞や地中などの 閉鎖空間 |