「声」


 この頃おかしな夢に、天夜は悩まされていた。
 見覚えの無い竹林の中、月の光に照らし出される自分の体は一糸纏わぬ姿で、顔の見えない男に組み敷かれていた。
「あっ・・・ああ・・っはぁ・・・」 
 抵抗しないのかできないのか、夢の中の自分は男に好い様に玩ばれていた。
 胸に這う手の感触も、口付けられる唇の熱さも、何もかもが現実と変わらなく感じられて、天夜は甘い声を止めることができなかった。
「もっと、感じな」
 耳元で囁かれる声に一層天夜の感覚が研ぎ澄まされ、男の愛撫に身をくねらせた。
「あっ・・んんんっ・・・はぁ・・」 
 首筋を舐め上げられ、背中をそらせて天夜が悶えると、男は嬉しそうに笑いを漏らした。
「いい声だ。ほら、、ここも好きだろう?」
そう言って男は、天夜の下肢に手を伸ばした。
「ああっ・・・」
揶揄ような物言いとは裏腹に、酷く優しい指の動きに天夜のモノは、躊躇うことなく形を変えていった。 
包み込むように擦られるその感触に、天夜の瞼からは涙がこぼれ頬を濡らしていた。
「イ・・あんっ・・はぁ・・」 
巧みな男の愛撫に天夜のモノからは透明な滴が溢れだし、指が動くたびにくちゅ、くちゅ、と卑猥な音が天夜の耳に聞こえてきた。
「随分と良さそうだな。けど、まだまだこんなもんじゃ終わらねぇぜ」
そう言った男の言葉が終わらないうちに天夜の両足は、見えない糸に操られたかの様に左右に大きく開かれた。
「なっ・・やっ、やだ・・やめっ・・」
「良い眺めだ」 
天夜の羞恥を煽るかのように言葉を漏らすと、男は楽しそうに開かれた足の間のモノに唇を寄せた。
「あっ・・やめっ!んん・・はぁぁ・・」
すっぽりと男の口の中に含まれた天夜のソレは、与えられる快楽に激しく震えた。
「やだぁ・・あんんっ・・いっ・・」
時折戯れで触れる自分の手に比べたら何倍もの質量で襲いくる快楽に、天夜のソレは絶える術を知らず、今にも弾けそうな程に感じていた。
「やっ・・だめっ・・もう・・」
「良いぜ、イッちまいな。全部飲んでやるよ」 
その言葉に煽られた天夜は、男の口腔に精の全てを吐き出した。




「よう、イッちゃん。なんだぁ?元気ねぇなぁ、腹でも壊したか?」 
「京一、天夜くんを君と一緒にしないの。まったく、元気が無ければ腹壊したなんて短絡的すぎだよ」
いつもの日常、気遣ってくれる仲間の声に、天夜は無理にでも笑顔を見せた。
「天夜、本当に大丈夫か?具合が悪いようなら保健室に行ったほうが良いぞ」
「ありがとう、大丈夫だよ」
そうは言ったものの、体はずしりと重く、意識もぼんやりとしていた。
夜毎繰り返される淫卑で甘美な夢の中の体験に、現実の体までが犯されているような錯覚に、神経がまいってしまいそうだった。
今も目を閉じれば男の待つ夢と現実の狭間に吸い込まれていきそうで、意識を保つことだけで精一杯だった。
なんとか意識を保とうとするが、こんなときに限って念仏でも唱えているような国語の教師の声が天夜を眠りへと誘って行く。
だめだ、眠ったらダメだ。
必死の思いで、意識を現実へと繋ぎ止め様と、考えを巡らせてみる。
視界がボンヤリと霞み始め、四肢の感覚もはっきりしないものに感じられ、すがるような思いで天夜は握っていたシャープペンシルを、手の甲へ突き刺した。
「っ・・・」
声を出すことは堪えたが、溢れてくる血を隠すことはできそうもなく、程なく近くの席の生徒に見つかってしまった。
「おい、大丈夫かよ!血が出てるぜ」
「イッちゃん、ナニしてんだ。早く保健室へ」
居眠りをしていたはずの京一までが目を覚ましてしまうほどの大騒ぎになった教室で、天夜は誰かに見られているような感覚に襲われた。
全身に鳥肌が立つような寒気を感じる視線に、なぜか天夜は覚えがあるような気がしていた。
「とにかく、保健室へ行きなさい」
教師に押し出されるようにして教室を出ると、取り敢えず保健室に向かおうと階段を降りた。
授業中で人気の無い廊下を歩いていると、誰かに呼ばれたような気がした。
幾度と無く背後を振り返って見るが、当然そこに人の姿は無かった。
誰もいない。
保健室の扉を開けようと手を伸ばした天夜は、手に着いた血の紅さに眩暈を感じた。
血に対してと言うより、その紅さに天夜の意識が吸いこまれる。
ぼんやりと霞む意識の中天夜は、なにかに導かれるように学校を抜け出すと、どこかに向かって歩き始めた。
血が流れるのも気にならない様子で、ひたすらに歩いていく。
どれだけ歩いただろう。いつの間にか天夜は古びた屋敷の前に立っていた。
竹林に覆われるようにして立っているその屋敷は、毎夜の如く天夜を責めさいなむ男の住む家に似ていた。
まさか、現実にいるわけが・・・。
サワサワと竹の葉の擦れる音が、天夜の中に眠っていた官能の火を呼び覚まそうとする。
男に抱かれて甘い声を上げさせられている時に聞こえる葉擦れの音が、天夜の全身を包み込むように響いてる。
−−−来な!−−−
頭の中に響き渡るような声が聞こえた。
それは空気を通して、耳に聞こえた声ではなかった。直接脳に聞こえたような声に、天夜の体は抗うことが出来ずに、屋敷の中へと歩を進めた。
長い年月を隔ててきたらしい建物は、古びてはいるものの手入れは十分施されているようだった。
やっぱり、見たことがある。
向かっている場所に心当たりなど無い筈なのに、躊躇いも無く天夜の足は奥へ向かって進んでいく。
導かれるようにして屋内に入った天夜は、長い廊下を進みいくつもの襖を開けて更に奥へと進んだ。
あの男に抱かれるのは、決まって竹林の中でだった。この屋敷の中に入ったことなんか、一度も無いのに…。
勝手など分からないはずの家の中を、まるで行くべき場所が分かっているかのように天夜は進んでいく。
あの男がいる。
襖の取っ手にかけた手が、電流に触れたかのように痺れた。
ココを開けちゃイケナイ。もう、戻れなくなる。
言いようの無い危機感に押しつぶされそうになりながら、天夜の手は男と自分を隔てている襖を開け放った。
床の間の前に胡座を組んで座っていた男の目が、前髪に隠れた天夜の瞳を真っ向から射抜いた。
「あっ…」
あの目を知ってる。
毎夜の夢に現れる、あの男の目だ。
見たことなど無いはずなのに、天夜は確信していた。目の前にいる男は、夢の中で自分を抱いた男だと。
「来な」
「…っ…」
始めて耳にした男の声に引き寄せられるかのように、天夜の体は男の腕の中に倒れこんだ。
「ようやく、手に入れたぜ」
「あ…っ…」
まっすぐに見据えるその瞳に、吸い込まれるようにして天夜の意識は薄れていった。



ギシギシという聴きなれない音と手首の痛みに、天夜の意識は現実に呼び戻された。
「なっ…」
目覚めた天夜は、自分の置かれている状況に唖然とした。
自分がいる場所はさっきの部屋、なのに両手は頭上で一つにまとめられて縛られている上に、天井に通った梁に立った姿勢で吊るされていた。
自分の体を見下ろしてみれば、体に纏わりついているのは、どう見ても女物の振袖だった。きちんと着せられているわけでは無いそれは、帯が結んであるものの迂闊に動けば、なにも履いていない局部が見えてしまいそうな程にはだけていた。
「ようやくお目覚めか?」
自分の置かれている現状に唖然としていた天夜は、声のする方に目を向けた。
そこには、妖艶な美女を何人も侍らせて、酒を飲んでいる男がいた。
「まぁ、綺麗な子」
始めて天夜の顔を見た女の口から、嫉妬にも似た声が洩れた。
主人の寵を奪われてはなるものかと、一層着崩した着物の裾から、真っ白な太腿を艶かしく覗かせて、男の体にしな垂れかかる。
「なんの真似だ!」
不法侵入に対してだとしてもこれはやりすぎだと、女性がいるにも関わらず天夜は怒鳴った。
「おまえは俺に呼ばれてやってきた筈だ。聞こえただろう?俺の声が」
そう言って笑う口元がやけに扇情的で、カッと下肢に熱が集まるのを感じた天夜は、慌て男の口元から視線を反らした。
頬に血が昇るのが自分でも分かった。
夢の中とはいえ自分の全身を愛撫したあの唇を見ていると、それだけで体中が熱くなるのを感じた。
「お前は知っているはずだ。俺のことを、夜毎の享楽を」
「……」
男の問に天夜は答えることが出来なかった。認めてしまえば、悦楽に耽っていた自分をも、認めなければならなくなる。
探るような男の視線を痛いほど感じながら、ぐっと唇を噛み締めた。
「まぁいい、すぐに分かる。さてと、お前らは下がってろ」
傍に侍らせていた女たちに男は、出て行けと手を振った。
「あん、お屋形さまったら」
口では抵抗して見せるものの、男に逆らうことは出来ないようで、女たちは名残惜しそうに男の傍を離れた。
部屋を出て行き様に女たちは、一様に天夜に向けて羨望と嫉妬の眼差しを向けた。
相手が男であろうとも、主人の寵を奪う相手は憎い。まして天夜は、男で有ることすら何の障害にもならないほどに美しかった。
「……」
女たちが全て消えると、ようやく男は天夜の元に向かってきた。
「待っていたぜ、お前とこうして目見える日をな」
反らしたままの顎を指先で上げさせると、驚きに開かれた天夜の唇を奪った。
「んっ!…んんん…んー…んっ…」
突然の事に抵抗を試みるが、両手を縛られて吊るされている状態では満足に力が入らない。良いように唇を貪られた天夜の目尻からは、屈辱の涙が一筋零れ落ちた。
ピチャッ
舌を絡めて吸い上げられる口付けの合間に洩れた濡れた音に、天夜の体からはぐったりと力が抜けた。
「あふっ…」
くちゅくちゅと音を立てながらかわされる口付けは、抵抗しようとする天夜の意識を、淫らな夢の中に誘うかのように全身を痺れさせていく。
「ああ…」
着物の合わせから滑り込んだ男の手が、胸の飾りに触れた。
「んっ…」
夢の中でなら何度も感じた男の手が、今現実に天夜の肌に触れていた。
始めて触れられた筈なのに天夜の体は、男の与える愛撫に確実に反応していた。
「ああっ…んっ…」
耳の裏側から首筋にかけて天夜の弱い所を知り尽くしているように、男の舌が肌の上を滑っていく。
「んっ…いたっ…」
細い首筋に触れていた唇がきつく肌を吸い上げて、鎖骨の上に紅い所有の印が刻んだ。
満足そうにピチャりと音を立てて舐めた舌は、指によって玩ばれていたピンク色の乳首に絡まった。
「ああんっ…」
ぷっくりと立ちあがった乳首の先を、掠めるようにして舌が触れる。
むず痒いような、痺れるような感覚に、天夜の体は嫌々をするように左右に揺れた。
「感じてるみてーだな」
「んっ…」
耳を噛む男の唇に、ゾクリと背中が粟立つ。
クチュ、クチュ。
耳の中に入り込んだ舌の濡れた音が、感覚までも犯していく。
「はあっ…んっ…んんっ…ああっ…」
耳の中を這い回る舌の感触と、胸の飾りを弄る指の刺激に、天夜の声が段々と艶を帯び始めた。
「もっと、感じて見せな。何時ものようにな」
あれは夢の筈。
男の腕に抱かれて悶えていたのは、夢の中の自分。現実にはありえないはずの快楽。それなのに、男の言葉に天夜の体は熱くなっていく。
「ああんっ…やっ…」
開いていた方の手が、天夜の足の間に入り込んできた。
「フン、こっちの方が素直だな」
「あっ…や…めっ…んんっ…」
享受している快楽を示すように、頭をもたげた自身の形をなぞるかのように、男の指が滑っていく。
形を確かめるように手の中に握りこまれ、ゆっくりと上下に扱かれると、それだけで天夜の体は快感に打ち震えた。
「ああっ…んっ…はあっ…んーっ…」
敏感な先端を指の腹でグリグリと擦られると、強い刺激に淫らに腰が揺れた。
「いっ…あっ…んっ…」
仰け反って晒された首筋に男の唇が吸い付いて、そこにも紅い所有の印を刻む。
「あっ…ああ…ん…」
触れられていない方の乳首に、舌が絡まった。
軽く歯で扱くと、舌先でチロチロと舐めてやる。
与えられる刺激に素直に反応を示す天夜の体を、男の指と舌は更に煽るように弱い場所を攻め立てた。
「んふっ……ああ…あっ…」
天夜の自身に触れていた手が、動くたびに濡れた音を立てた。
「んっ…もっ…や……」
欲望の証を滴らせたソレは、開放を促す男の手の動きに、耐えることも出来ずに精を吐き出した。
「あああ…」
くったりと全身から力が抜ける。立っていることすら出来そうに無いのに、両腕を吊るされているためにへたり込む事も出来ない。
ギシリと吊るされた両腕に体重が掛かる。
「たっぷり出したな」
手の平に零れた蜜を、見せつけるように男の舌がピチャリと音を立てて舐め取った。
「立ってられねぇ程感じたのか?」
噛みつくように頬に舌を這わせながら男の手は、天夜を吊るしていた紐を解いた。
「あっ…」
支えを失った天夜の体は、崩れるように畳の上に倒れこんだ。
「尻を上げな」
快楽の余韻に震える体を楽しそうに見つめながら、男は天夜に更なる羞恥を命じた。
「やっ…い…やっ……」
自分からねだるように腰を上げるのはどうしても出来ないと、初めて天夜は男に対して抵抗して見せた。
「嫌じゃねぇだろ、何時もみたいに腰振っておねだりしてみせな」
揶揄を含んだ男の声が、忘れていた淫らな自分を思い出させる。
夢の中の己は娼婦のように男を求め、その熱い肉に酔ったように腰を振っていた。
「ちが…」
あれは夢だと、自分に言い聞かせるのに、天夜の体は男を求めて熱くなっていく。
「はぁっ…」
放ったばかりの自身が、男の視線に再び形を変えていく。熱くなっていくソコに男の手が欲しくて、天夜はゆっくりと腰を上げた。
「もっと頭を下げるんだ」
床に四肢を突っ張る形で腰を上げた天夜に、男はもっと恥ずかしい姿を要求する。
羞恥に震えながらヒジを折ると、その中に天夜は顔を埋めた。
「んっ……」
尻だけを高く上げたその浅ましい姿を男の目に晒していると思うと、それだけで天夜の自身からは透明な蜜が滴り落ちた。
「ココが欲しがってヒクついてるぜ」
「あっ!…ああ…はっん……」
柔らかな双丘の間に男の手が押し当てられた。
天夜が吐き出した欲望の残滓を塗りこみながら、固く閉ざされた蕾みに指を押し入れていく。
「んんっ…はぁ…」
後部に異物を感じるより先に天夜の内壁は、男の指の進入に歓喜するかのように淫らに絡みついた。
「もっと足を広げな。奥まで探ってやるぜ」
「んっ…」
出し入れされる指の動きに促されて、天夜は言われた通り足を広げた。
「良い眺めだぜ」
ピチャリと指を咥えこんだソコを男の舌が舐め上げる度に、天夜の口からは甘い吐息が洩れた。
「ふうっ…」
クチュクチュと音を立てながら、増やされた指が天夜の中を掻き回す。
「やあっ…」
「生身で繋がるのは始めて…だったな」
すっかり蕩けきっている後ろの口に男のモノが押し当てられた。
「あああっ……」
後ろに当たる男のモノの大きさに、ブルッと天夜の体が震えた。
「今、入れてやるぜ」
弄られ玩ばれた蕾みは、蜜を溢れさせるほどにほぐされ、男を誘うかのように淫らにヒクついていた。
「んっ!んん…はぁっ…」
指とは比べ物にならない質量が、天夜の中に埋没していく。
「あああ…はっ…」
いっぱいに開いて肉棒を受け入れている結合部分に、男の指が触れた。
「んっ…」
切れそうなくらいに広げられたソコは敏感になっていて、指でなぞられるたびに天夜の内襞は、咥えこんだ男のモノをきつく締め上げることになった。
「良い具合だ」
「はあっ…んっ…んん…」
伏せた天夜に覆い被さるようにして、細い首筋に男の舌が這い回る。男が動いたことによって更に深く穿たれた肉は、内側から天夜を溶かしてしまうほどに熱かった。
「やあっ…はっ…んんんっ…」
零れる甘い声を必死で堪える天夜の姿を楽しそうに見下ろした男は、折れそうに細い腰を掴むとゆっくりと抜き差しを始めた。
「ああっ…」
直腸を擦られる違和感が、ゾクゾクと背中を這い上がっていく。
男を受け入れたソコは、ぐちゅぐちゅと淫らな音を立てて太腿を蜜が伝っていった。
「こっちも良いみてぇだな」
「ひっ…ああっ…」
腰を掴んでいた手が、前に廻って天夜の竿を握り締めた。強く握られたわけでもないのに、方って置かれたソコは、些細な刺激で達してしまいそうなほどに昂ぶっていた。
「んっ…んんん…」
前と後ろ同時に与えられる快感があまりにも強くて、天夜はきつく唇を噛み締めた。
「もっと、声を出しな」
「あぐっ…はぁ…あああ…」
伏せていた天夜を、膝に抱く形で下から突き上げてやる。
更に噛み締める唇を、指を挿し込んで開かせると、逃げる舌を追って深く口付けた。
「んっんんん…はぁん…」
飲みきれない唾液が、口の端から溢れて顎を伝っていく。
ぷっくりと膨らんだ胸の紅を、押しつぶすように捏ね回す。
「はあっ…んんっ…いっ…いい…」
指の腹で潰すように摘んでやると、それがイイのか背中を反らせて喘ぎ声を上げた。
「もっ…やあっ…いっ…はぁ…」
開放を望んで震えるソレの根元を、輪を作った男の指がきつく締め上げた。
「少し我慢しな」
「えっ…あっ…ああああ…」
激しく突き上げられる動きに、縋る場所を求めて天夜の腕がさまよった。
「あああ…はぁ…やっ…イっ…」
奥を突く男の動きに天夜もまた、絶頂を迎えようとしていた。きつく握られて、欲望を吐き出せない天夜のオスが、快楽を与えてくれる手を求めて滴を零していた。
「イッちまいな」
ぐちゅぐちゅと濡れた音を立てながら、竿を擦る手の動きが明らかに開放を促してやると、天夜のソレはあっさりと男の手に白い液体を迸らせていた。
「はあっ!…ああああ…」
体内に埋められた性器から欲望の証がトクトクと注がれると、、その熱さに天夜の口からは、歓のため息が洩れた。
「ううっ…んっ…はあっ」
ズルリと男のモノが抜かれる感触に、ぐったりと弛緩した天夜の体がピクリと震えた。
意識を飛ばした天夜をそのままに、男は酒盃を手に胡座を掻いた。
「まだまだこんなもんじゃねェぜ。お前を、底無しの快楽に溺れさせてやる、ソレなしでは生きていけないほどにな」
そう言って男は杯を傾けた。
なにも知らない天夜をあざ笑うかのように杯を重ねる男を、月だけがじっと見つめていた。
そのなかにある真意を探るかのように。


一部 完
12月31日 脱原