過ぎた街







     以前、住んでいた街は
     大して変わりもせずにいる。

     立ち寄った俺を見て
     懐かしむわけでもなく
     責めるわけでもなく
     日常の風景として
     さして興味もなさそうに、ほかりっぱなしだ。

     近くに住んでいたあいつのアパートも
     大して変わりもせずに建ったままでいる。
     もともとこんな感じだったんだよな。


    八事の森は
    名城大学薬学部


     今でもあいつとは会うけど
     どっかが変わってしまって
     ここにいたあいつじゃなくなった。

     今はあいつの住んでいないアパートの前で
     ここに住んでいたあいつに会いたくなって
     ちょっと足を止めてみたんだ。



     今も俺とあいつは、まだ生きている
     だけどこの街にいた俺らは
     今はどこにもいやしない

     間違いなく俺なのに
     間違いなくあいつなのに



    冬が過ぎた日の午後に。


    俺らはこうして生きていく

    俺らはこうして過ぎていく








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