「え? まだ帰ってこない?」
「ええ、一体どうしちゃたんでしょう。何かあったんでしょうか。先生、一度連絡してみたらどうですか?」
 奈美絵さんに言われて、俺は呆然と突っ立っていた。
「先生?」
「知らない」
「え?」
「あいつの連絡先、俺知らないぞ」
「えー!」
 俺は奈美絵さんと顔を見合わせた。
「先生、冗談は止してくださいよ」
 奈美絵さんだって俺の様子を見れば、決して冗談を言っているわけじゃないことくらいわかっているはずなのに、信じたくないばかりにそんな事を言う。笑おうとしている顔が引きつっている。
「どうしようかな……」
「そんな悠長な」
「だけど、とにかく待ってみるしかないだろう? 大丈夫だって。いざとなったらあいつを拾ったところの区役所で調べてもらおう。それにさ、あいつがそのガキを捨てていけると思うか?」
「でも、発作的にということも……」
「奈美絵さん、心配性だなあ。大丈夫。大丈夫」
 まるで俺は自分に言い聞かせるように、大丈夫という言葉を繰り返した。そうでもしていないと不安でしようがない。
「それにほら、父親が入院しているっていう北海道の病院をしらみつぶしにあたるという方法もあるぜ? いろんな方法があるんだからさ、そう心配するなって」
 相手を安心させるには気の遠くなるような言葉に、自分でクラクラきてしまう。
「でもね、先生。もしかして、どこかで倒れているというようなことも考えられません? だって、熱が下がったばかりなんですよ。お金なんて待ってあげれば良かったんですよ。そうすればこんなことに……」
「そんな人を悪徳医師みたいに……。俺だってそんなに取り立てるつもりはなかったよ? だけど、あいつが取りにいくと言うものを、無理に引き止めることもないじゃないか。熱は下がっていたんだし……」
 そこまで言って、俺たちは不毛な会話で疲れるのを避けることを選んで、互いに目で確認し合った。奈美絵さんの胸であんじゅは大人しくしている。
 その顔を見ていると、昨日の静麻との会話が思い浮かんだ。
『あんじゅを育てるのは僕の役目ですから』
 言葉の裏に隠された疲れ。逃げ出したくなったとして、誰が彼を責められるのだろう。
 昼はずっと子どもの世話をして、ようやく息吐くと、生活のために働く。どんな仕事か言いたくないという顔をしていた。俺の頭の中に浮かんだのは、部屋でチマチマとマッチ箱なんかを組み立てている静麻の背中だったりした。
 きっと、よほど疲れていたのだ。帰すんじゃなかった。帰したりしないで、疲れがとれて、英気を養うまで無理にでも置いておくのだった。
 そんな繰り言を考えているうちに、午後の診察の時間になってしまった。取り敢えず、今日一杯は様子を見るしかないと思って、奈美絵さんにあんじゅを頼んで、医院へ出た。
「先生。何かあったんですか?」
 顔には出していないつもりが、毎日一緒に仕事をしている彼女たちにはわかってしまうのだろう、心配気な顔を向けられてしまった。
「何もないよ。昼寝をし損ねただけ」
 山口さんが「あんじゅちゃんじゃあるまいし」と笑って、患者が入ってくる。
 
 
「どうされました」
「熱があるんですよ」
 それはわかっている。医院に来てから測った熱は、39度2分になっている。
「いつからですか?」
「昼頃にちょっと熱いなーと思って、念のために連れてきたら、9度を超えているんでびっくりしました」
「で? 昼には何度だったんです?」
「測ってません」
 ………! 馬鹿ばっかりで嫌になる!
「熱の他には?」
「何も」
 母親の膝をおりようと、二才の男の子は暴れている。
「元気そうですね」
「はい。だからたいしたことないと思ったんですよ」
 嫌味にくらい気がつけよ!
「じゃあ薬を出しておきますから、一日に三回、食後に飲ませてください」
「はーい。あ、先生、熱冷まし下さい」
「うちでは出しませんよ」
「えー」
「あんなものは、なるべく使わない方がいいんですよ」
「でも、9度を超えているんですもん、今晩眠れなかったら可哀相じゃないですか」
 ……ったく! 誰が可哀相なのか聞きたいね。きっと、自分が嫌なんだぞ。
「熱が酷いようだったら、服を脱がせて冷たいタオルで拭いてやればいいよ」
「えー……、熱があるのにそんなことー。それより解熱剤だったら、すぐに効くのに」
「そんなに子どもを殺したけりゃ、座薬くらい百個でも二百個でもくれてやるよ。使わない方がいいって言ってるんだから、医者の言うことを聞け!」
 人がイライラしている時に、馬鹿なことをクドクド言いやがって。
 とたんに母親は目に涙を一杯蓄めて立ち上がった。
「僚先生。泣かせるまで言ったのは久しぶりですねー。うちの評判聞いてこなかったのかしら」
 ふん!
「あんまり泣かせないで下さいよ。これ以上患者さんが増えたら困っちゃうもの」
「どうして、泣かせたのに患者が増えるんだよ」
「それが不思議なんですけどね。他のあんまりしゃべらないお医者さんより、先生の毒舌を聞いているほうが、安心できるって言うんですよ。子どもが病気になると、母親って不安じゃないですか。そこにあれだけ言われれば、これくらいたいした病気じゃないって、勇気づけられるみたいですよ」
「じゃあ。これからは無口になるよ。これ以上忙しくなったら、さぼれない」
「無理無理」
 結局、俺は周りの者にいいように操られているんじゃないだろうか。まぬけだなー。
 次の患者が入ってこないで、待合室が騒ついているのが聞こえてくる。
「山口さん、何かあったのか?」
「さあ?」
 気になって待合室に出てみると、人の輪ができていた。その中心にいる人物に、俺は驚くのを忘れて呆れてしまった。
「次はね、ぞうさん!」
 子どもの声がして、静麻は膝の上に置いた紙に鉛筆で象を描き始めた。
 遠目に見ても、その絵は子どもが喜びそうな、愛敬のある象だった。
 静麻はその象を描き上げると、リクエストした子どもにその紙をあげた。
「僕はゴジラ!」
 すぐに次のリクエストが出る。それでも静麻は嫌な顔をするわけでもなく、ゴジラを描き始める。何も見ないで描いているのに、それは立派にゴジラと分かった。
 サラサラと鉛筆の走る音。子どもたちの歓声と、親達の嘆息の声。
 一匹のゴジラが出来上がり、それをもらった子どもが嬉しそうに紙を見せびらかすように頭の上にかざす。
「ねえ、僚先生。あの人、もしかして、絵本作家の静馬さんじゃありません?」
「え? 誰? それ」
「ほら、うちにも一冊ありましたよ。よく天馬のお話なんかを描く人なんですよ。絵がね、そっくり」
 山口さんが持ってきた絵本は、なるほど、『絵 作 静馬』となっている。絵本の題名は、『ペガサスのさんかく月』
 そう言われてみれば、絵の感じはよく似ているし、漢字の綴りが違うだけで、「しずま」という名前は一緒だ。
 一人一枚ずつ描いてもらって満足したのか、ようやく人の輪が崩れた。
 そして立ち上がった静麻と俺の目が合う。
「あ……」
 何か言いかけた静麻を無視して、俺は診察室に入った。
「次の患者さん、呼んでくれ」
 俺の不機嫌を通り越した声に、山口さんは肩を竦めると、患者の名前を呼んだ。
 それからはさっき建てた『無口』という目標を実行するのかと山口さんが心配するほど、そっけない診療になってしまった。
 人生、毎日が修業なら、俺はとっくに落ちこぼれだろう。
 
 
 家に戻ると奈美絵さんはあんじゅを寝かし就けにいくと言って、奥に消えてしまった。
「どうして医院の方へ来たんだ」
「すいません。保険証を届けに行ったんです。そうしたら、子どもがお母さんにうさぎを描いてくれって泣いてて、つい僕が描いてあげるからってなって……、騒いでしまって、ごめんなさい」
「それはもういいんだけどさ。どうして保険証を取りに戻るだけで、あんなに時間がかかったんだ」
 俺の問いに、静麻は黙ったまま俯いてしまった。顔を上げる様子もなく、俺は遅い夕食を食べることにした。
「あの……、明日は帰ってもいいでしょうか」
 新聞を読みながら食べていると、静麻が怖ず怖ずと聞いてくる。
「自分で大丈夫と思うなら、帰ってもいいよ。もともと俺は小児科医なんだし、他人の生活に口を出すのも本意じゃない」
 ちょっときつかっただろうかと思ったが、言ってしまったものは口の中に戻せない。
「入院費としては少ないかも知れませんが、これを……」
 静麻が差し出したのは、白い封筒だった。中にはきっと現金が入っているのだろう。
「お前、俺のこと馬鹿にしてんのか?」
 静麻は言われた意味が分からず、俺を見ている。あの濡れた瞳は熱に浮かされているんじゃなく、こいつ本来の瞳なんだと分かる。
「誰がいつ入院費用を出せと言ったよ。そりゃ、診察代と薬代はきちんと貰うさ。だがそれ以上はこれっぽっちも貰うつもりなんかない。人の親切を金で踏み躙るな」
「でも、それじゃ、僕の気持ちがすみません」
「誰がお前の気持ちをすませたいと言った。金で解決する気持ちがあるなら、どうしてすぐに帰ってこなかった。奈美絵さんがどれだけ心配したか、ちょっと考えりゃわかるだろ!」
 俺の心配はこの際言わぬが花というものだろう。そんな気持ちはこの馬鹿の前には曝したくなかった。
「………」
「何か言い訳してみろよ。今言っとかなきゃ、きっと一生、お前は抱え込むぞ」
 俺もたいがい人がいいなと、自分を讃めてやりたくなった。ここまでくりゃ誰にも文句も言えないだろう。
「何してた? 一人でさ。……どんなこと考えてた?」
「うまく言えないと思います」
「お前が日本語に不自由しているのはよく知ってる」
 子どもの診察にきて、自分の名前や生年月日を答えた奴は、いまだかつて、静麻だけだ。
 そう言って笑ってやると、ようやく静麻はポツリ、ポツリと話し始めた。
「一人でマンションに帰って、初めてだったんです。あんじゅがいないなんて。
 それで、僕はあんじゅがいなければ、大学にも戻れるし、以前の生活に戻れるなって、思ったんです。どうしても、大学には行きたかったから。でも、でも。あんじゅが邪魔だなんて、今まで一度も思ったことなんてないんですよ。本当です。あんじゅは僕の天使だし、あんじゅがいるから頑張れるんです。けれど、一人になって、このまま自由になれたらって、ふと思ったんです。そしたら、ここに戻るのが恐くなって。あんじゅを連れ戻せば、また二人だけの生活で、勉強も、仕事も、思うままにならなくて……。あんじゅがいた時には、そんな事なんか思いもしなかったのに、そう思い始めたら、足が震えて。立てなくなって」
 静麻は流れる涙を拭いもせずに、子どものように泣きながら、しゃくりあげながら告白している。
 静麻にとっては拷問にも等しい葛藤だっただろう。けれど彼はあんじゅを捨てることは出来なかった。
 本人は懺悔をしているつもりでも、俺から見れば、罪人のために泣いている、天使のように美しかった。
 俺は天使に地上に堕ちてもらうために、フラフラと静麻に歩み寄った。
 抱きしめた彼の肩は、これから子どもを育てていけるのかと心配なほど細く、震えている。
 静麻は俺に抱かれても、告白を続けた。
「しばらく、ぼーっとしてたんです。マンションは静かで、物音もしなくて。なのに、あんじゅの泣き声が聞こえたんです。空耳なんかじゃありません。あれはあんじゅの声なんです。僕があんじゅの泣き声を聞き間違えるわけないんです。もういてもたってもいられなくなって、ここまで走ってきました。でも、玄関に立つと、突然恐くなったんです。きっと僕の顔はあんじゅには鬼のように映るんじゃないかって。ほんの一時でも、子どもを捨てようとした僕には、きっとあんじゅはもう笑ってくれないって、そう思ったんです。それで医院の方に入りました。子どもが一杯いて、母親に抱かれている子や、床に座って絵本をみている子がいて。絵を描いてって泣いてる子がいて、それで絵を描きたくなって。うさぎを描いてあげると、その子がニコニコ笑って、僕にありがとうって言ったんです。それが嬉しくて……。先生に睨まれちゃって、きっと、僕の無責任さを怒っているんだってわかって、こっちに入ってきたんです。そしたらあんじゅがね。僕があんじゅを抱くとニコッて笑ったんです。嬉しくって、申し訳なくって、戻って良かったって、思ったんです。もうあんじゅのこと、二度と手放したりしないって、誓いました」
 静麻はそこまで言うと、俺の腕の中でこちらを見上げて、にっこり笑った。
 顔中を涙で濡らせて、真っ赤な目で。その笑顔に、俺の背中を駆け昇ってきたものが、頭の中心まで辿り着く前に、俺は本能のまま抱いた手に力をこめて……。
 触れた静麻の唇はやはり涙の味がした。
 その唇の本当の味を知りたくて、より深く重ねようとしたとき、静麻に胸を押し返された。
「ど……、ど……、どうして……、こんな……。ど……、ど……」
 ますます日本語が混乱していく静麻に、俺は真剣な目で訴えるしかなかった。
「どうしてって聞かれても、キスしたかったからしただけだよ。悪いかよ」
「ぼ……、ぼ……、ぼ……」
「あー、もう! ちゃんとしゃべれないかなー。お前が男だっていうことくらい、知ってるって。だけど、したかったんだから、しようがないじゃないか。お前がノーマルだっていうことはわかってるよ。ガキまでいるんだもんな。言っとくけど、俺だってノーマルだぞ。お前を拾わなきゃ、今年中には結婚してたかもしれないんだから。まあ、それを責任取れとはいわないけどさ。だって、俺もうどうでも良くなったもん。お前を拾ったこと、全然後悔してない。それどころか天使に感謝してる。お前のこと、抱きたいって思う。キスしたいって思う。それは多分………、いいや絶対、お前のこと好きだからだ」
 静麻は震える唇を噛んだり、手で押さえたりしながら、俺の気持ちを聞いていた。
「お前に答えてもらおうとは思わないからさ。このまま忘れてくれてもいいし」
「僕は……、分からない」
「分からなくていいよ。ただ、これからもさ、あんじゅの主治医でいさせてくれれば」
 俺は未練を振り切って、腕の中から静麻を解放した。
「それで? 大学はどうする?」
「辞めます。休学になんかしているのが悪かったんです。大学なら、あんじゅが大きくなってからでも行くことはできますから」
 迷いのない瞳が俺を見ている。きれいな黒い瞳が輝いている。
「じゃあ、俺からの提案だけれどさ。あんじゅを安心して預けられる人がいて、お前が大学に行ってる間見ててくれるなら、お前、大学に行くか?」
「でも……」
「せっかくの覚悟に水を差すようで悪いんだけれどさ、どう思う?」
「そんな人が出来た時に考えます」
「じゃあ、今考えろよ」
「え?」
 静麻がまさかという顔をした。
「そうですね。後二年でしょう? 僚さんのお子さんが出来たときの予行演習として、ぜひお願いしたいですね」
 あんじゅを寝かし就けた奈美絵さんが、楽しそうに声をかけてきた。
「でも、そこまで甘えるわけにはいきません」
 頼りない奴だと思っていたけれど、結構頭は固いのかもしれない。
「そりゃそうだな。俺が言われたとして、素直には受け取れないと思う。だからさ、奈美絵さんの仕事が増える分として、保育料は払ってもらうよ。それなら、変に恩を感じる必要はないし、気が楽だろ?」
 静麻は考え込んでいた。ようやく出した答えを、今また考え直さなくちゃならないのだから、酷なことだろう。けれど、一度諦めたものだからこそ、尚更手に入れたいと思うものだろう。男なら、特に。
「あんじゅは可愛いいし。俺はぬくぬくと大学に行ったんで、お前みたいな奴がいるって言うのは結構ショックなことなんだ。二年間、やってみないか? どちらかを諦める必要なんてないさ。どちらも手に入れてみろよ。あんじゅが嫁にいくまで二人とも面倒見てやるから」
 もしかしてプロポーズみたいかな?
「あんじゅは嫁にはいきませんよ」
「お前本当に親馬鹿だねー。いき遅れてあわてるのはお前だぞ」
「違いますよ。あんじゅは男ですから、嫁にいくんじゃなくて、可愛いお嫁さんを貰うんです」
 なんだってー? 今、なんかすごいことを聞いたような……。
「先生、あんじゅちゃんのおむつ替えたことありませんでした? 立派なおちんちんがついていましたよー。私も最初は女子だと思ったんで、びっくりしましたけどね」
 奈美絵さんが吹き出しつつ、俺に説明してくれる。
「男ー?」
「そうです。あんじゅは長男ですよ。ほら、保険証にもそう書いてありますよ」
 俺はあんじゅが女の子だとばっかり思っていたから、そんなもの見てなかったぞ。
「じゃあ、僚さん。片岡さんも今日は大丈夫のようですから、私は帰りますね。片岡さんのお布団はあんじゅちゃんの横に敷いてありますから」
「あ……、ああ。ありがとう」
 奈美絵さんが帰ってしまって、俺は静麻と二人きりになったことを意識してしまう。
「お前……」
 俺が声をかけると静麻がビクンと反応した。そんな露骨な態度は結構傷ついてしまう。 
「何もしねーよ。まだ本調子じゃないんだから早く寝ろよ」
「すいません……」
 静麻はショボンと謝って、けれど奥へ行く様子もなく、上目遣いに俺を見ている。
「絵本作家なんだってな。お前」
「どうしてそれを?」
「医院にお前の本が一冊あった。看護婦がお前の絵を見て気がついたんだよ」
「そうですか……」
「どうして隠してたんだ? 俺が仕事のことを聞いたとき」
「出版社の編集長さんが、子どもがいることは隠してくれって言ったんです。静馬のイメージダウンになるからって」
「ふうん……。大変なんだな。まあ、大学に行きながらでもできるんだろ?」
「本当にいいんですか?」
「いいよ。ちゃんと卒業しろよ。あんじゅのためにもさ」
「あんじゅのため?」
「ああ。あいつが大きくなって、父親が自分のために大学を中退したなんてわかって、負い目を感じたら可哀相だろ? だから行ってこい」
 静麻は涙をためた目を俺に向けた。それが再び俺の身体に火をつけて……。
 静麻も逃げようとはしてなくて、唇が触れようとしたとき・・・・・
「あ! あんじゅが泣いてる!」
 確かに、あんじゅの泣き声は聞こえるけれど……。お前、それはないだろう?
 静麻はここっていうときの馬鹿力を出して俺の腕の中から出ていき、奥へと走っていく。
 あんじゅー、てめー、覚えてろよ。お前の恋路は、俺がきっちり邪魔させてもらうからな。
 
 
 


 だって、ボクが大きくなるまで、

パパを守れるのは、この人しかいないって思ったんだ。

 だから、ちゃんと泣くときには泣いたし、

協力するときには泣き止んだでしょう?

 僚先生。

口は悪いけれど、とってもいい人だって、

一目でわかったよ。

 ボクが大きくなって、

パパを守れるようになるまで、

お願いね。

 だけど、雰囲気に流してパパのことものにしようとしたら、

今日みたいに邪魔をしちゃうからね。

 覚悟して頑張ってください

 
 
 
 

めでたし、めでたし?