敵のモンスターは厄介な相手ながらも、集められた戦士たちは強く、見方に大きな被害もなく殲滅することができた。
 けれど勝利を味わう余裕もなく、進化軍兵士たちが襲ってくる。
 勝った勢いで周平たちは、態勢を立て直しながら、敵を追い詰めていった。
 進化軍の本営地まであとわずか、気勢が上がったその時、空気を圧迫するような、嫌な気配が辺りを包み始めた。
「なんだ……?」
 剣を引いて、何箇所かに集まる。
 何か強い気配が近づいている。それはわかった。
 進化軍兵士は、今まで劣勢だったのに、顔に喜色をのぼらせる。
 雪煙をあげて何かがやってくる。
 進化軍が快哉をあげてそれを出迎えた。
 たてがみのような黒髪に、鉄(くろがね)に光る瞳。黒い毛皮を身にまとっているが、逞しい腕はむき出しのままだ。
 太身の剣をむき出しのまま持ち、唇の両端を吊り上げて笑うその姿は、まるで鬼だ。
「エンディミオン……! エボリュータントの鬼神」
 噂でしか聞いたことがない。
 その男が現れれば、連合軍は全滅しているから。
 SOSの悲鳴の中で、かすかにつなぎ合わされた姿を想像しただけだ。
 けれど、目の前にしたらわかる。
 この迫力、この戦慄。この男以外に鬼神と言われる戦士がいるのなら、連合軍には勝ち目などない。
 周平の呟きに、仲間たちは慄き、武器を持つ手が震える。
 逃げ出したい。
 一度は誰もが思っただろう。それを責められるはずもない。
 けれど……。
「嫌だ……。俺は、日本を……地球を守るんだ」
 周平は刀を両手で握りなおした。
「ほう……」
 黒く妖しく光る瞳が、面白そうに周平を見た。
 エンディミオンは狼から降りた。
 ざくっと一歩を踏み出すだけで、地面の氷がピシッと音をたてる。
 隙などどこにもない。
 こちらも隙を作るわけにはいかない。
 周平の闘気を見てとって、連合軍の勇士たちも闘志を上げる。
 ジリジリとにじり寄り、周平は敵目掛けて飛んだ。
 ガチッと刀と剣が交わって火花が散る。
 その衝撃を反動にして、周平は飛び退った。
 着地と同時に地面を蹴る。
 身体に回転を加えて、自身の体重をかけてエンディミオンに切りかかる。
 渾身の一撃もかわされたが、周平は体勢を立て直して飛んだ。
 エンディミオンは今度は剣を弾くことなく、周平の刀を受け止めた。
 ミシミシと音が鳴るほどに白刃を合わせる。
「その闘い方、誰に教わった?」
 余裕の笑みで周平に問う。
「お前に……っ、関係ない!」
 足を振り払うように回して蹴りを入れる。相手は悠々と後ろに飛んで、笑みさえ浮かべて周平を見つめる。
「まぁいい。どうせお前たちは、ここで死ぬのだから」
 冷酷な笑みに、周平はギリリと歯が鳴るほどに噛み締めた。