周平は日本最北端の砦から海路を取り、北極を目指すようにと命じられた。
 海路とは言っても、北の大地より向こうは既に氷河に覆われているので、近くまでを船で進み、氷上を寒冷地用ジープで進むことになる。
 隕石によるガスと吹雪などの影響で、視界はすこぶる悪く、難航すると予測される行軍だ。
 しかし、進化軍を滅ぼすためにはいずれ取らなければならない進路である。
 アメリカ大陸、北欧地方、ロシアの2ヶ所からも同時に進行を始める重要な作戦となれば、嫌だといえるはずもない。
 むしろ戦功を上げて強くなれるチャンスでもあるのだ。
 集められたメンバーはめきめきと名を上げている戦士も多く、最近の進化軍の後退もあって、それぞれが余裕の表情を浮かべてさえいた。
 周平はサリアスの剣技に見惚れ、それを真似するようになって、強くなったと評判だったようで、自分で意識していたよりもずっと彼らに名前を知られていて驚いた。
 船での北上は何の問題もなく済み、氷河を踏みしめたときも、彼らはまだ余裕があった。
 本部と連絡を取りながら、ジープで北上する。
 他の連合軍と調整しながらなので、押せ押せムードだった一軍も、幾度か足止めを食うたびに気持ちが緩んでいく。
 それでも周平は一人、訓練を怠ることはなかった。
 サリアスの舞うような剣さばきを一度でも見れば、自分の実力などどれほど頼りないものか、実感として残るのだ。
 そんな周平を最初はからかったり、馬鹿にしていた軍の連中も、次第にその自主トレーニングに付き合うようになってきた。
 訓練に入ってくるものほど、実は実力のあるものだとわかるようになると、周平は頼み込んで1対1の取り組みをしてもらった。
 強い相手なら、周平がどんな剣を使おうとしているのかわかってくれるのではないかという目論みは当たったようで、相手も周平の太刀筋を真剣に見るようになった。
 ゆるゆるとした行軍も、遠く霞むように隕石の影が見えてきたときには、身体が震えるほどの緊張が走った。
 隕石の影響を受けるのは半径10キロ以内といわれている。
 周平たちは隕石から30キロの地点まで迫っていた。