周平は徐々に力をつけていき、日本軍の攻撃部隊の中でも重要な任務を任されるようになっていった。
進化軍と何度も戦闘していくうちに、周平はある違和感を持つようになっていく。
進化軍は地球全体を征服しようと目論んでいて、隕石落下地点である北極を中心に、じわじわと植民地を広げている。
日本は半分近くを水没させてしまっているが、島国と多くの山脈があるという地の利をいかし、未だどこも進化軍に侵略されていない。
けれども、すぐ近くまで進化軍の脅威が押し寄せているのもまた事実だった。
進化軍にとってはこのまま勢力を広げていくのが、もっとも世界征服に近いはずなのに、その攻撃力が弱まっているように感じられるのだ。
同時に植民地からの難民が増えている。
周平は難民を何度か救助していた。彼らは概ね、見張りの手薄になった隙をついて逃げ出したというが、そんなことがこう度々あるだろうか。
そもそも、隕石の力を使えば、彼らを『進化』させることも可能なはずだ。兵は一人でも多いほうが良いはずだ。
周平は何度かその疑問を上司にぶつけてはみたが、考え過ぎ、臆病者、見当違いなどと相手にされなかった。
事実、進化軍はその規模を縮めているようにも見えた。
各戦地では進化軍を追い詰め、要塞を取り戻したという報告が相次いで来て、周平が不安を口にしても笑い飛ばされることばかりになった。
おかしい。変だ。
焦っても何か確定的なものを掴まない限り、いくら言ってもそれこそ臆病風に吹かれたと冷たい目で見られるのがオチだろう。
けれど周平には自由になる時間があるはずもない。
ここぞとばかりに進化軍を追い詰め始めた連合軍は、壊滅させるべく、かなりの強行体制を敷いている。
周平も日本の最北端の砦から、更に北上せよという命令が下り、その準備に忙しい。
進化軍の動向を探る余地もなければ、その方法も知らない。
「サリアスは今頃どうしているんだろう」
独り戦う戦士。それだけの実力を持つ男。
彼なら周平のこの違和感も理解してくれるのではないだろうか。そんな期待があった。
今も尚、連合軍は彼を捜し求めている。けれど説得に成功した者はいない……。