第7話 またまた替え玉説登場 和宮・明治天皇替え玉説

 近代になっても、とんでもないミステリーがある。幕末、徳川家に嫁した悲劇の姫宮、和宮・明治天皇替え玉説である。え?当時すでに、写真が発明されて、出回っていた?明治天皇は少なくとも肖像写真があるじゃないかって?
 いやいやいや、明治天皇、写真が随分お嫌いだったらしい。あの一見「ご真影」に見える写真らしきもの、じつは精緻な肖像画だったという。同じ例が西郷隆盛さんにもある。実は西郷どんも写真が苦手で、肖像画は残っているが、外国人によるモンタージュみたいな肖像画。それを元にして上野の有名な銅像が立ったが、あろうことか、除幕式でそれを見た奥さん「うちの人はこげん人じゃなか」と叫んだとか、叫ばなかったとか。確かに、あんな鼻の高い、外国人力士みたいな日本人は存在しない。それなら、奥さんに像を作った彫刻家さん、「貴方のご主人はどんな顔をしていましたか?」と聞かなかっただろうか?隠密説もあるし、迷信を信じていたという説もあるが、謎である。
 私も明治天皇については、ご真影は写真と信じていた。だから肖像画と聞いて、文字通り「えーっ」と驚いた。シャレではない。真面目な話である。しかし、おかしな点があった。「黒子がないし、男性は化粧していないはずなのに、まつ毛が長い」。それに昭和天皇や大正天皇のご真影とは似ても似つかないハンサム。確かに写真ではない。替え玉説か出ても無理もない。
 それに、明治天皇は幼少の時、「疱瘡(天然痘)」を罹患されていたという記録があるそうな。当時、種痘が一般的になる少し前の話で、それにかかると痘痕が出来てしまう。それを恥じてかもしれないが、それにしても、男性だから、コンプレックスにはあまりならないだろう。女性の春日局なら解るが、当時は誰にでもなる病。写真を嫌う理由になるだろうか?
 和宮も、写真は残っていない。残った遺骨からは「反っ歯」だったとか左手が手首からないとかいう奇怪な事も伝わっているが、当時、近親結婚を繰り返してきた天皇家なら、ありうる事かもしれないが……。信濃の宿に残っていた写真には普通の美人で左手はあったらしい。そこから替え玉説もある。(写真に残っていた人は、宮様だと思ったら高位の侍女だったりして……)
 まさか、とは思うが、天皇家に関わることだから、強くは言えないが、ありうる事と仮定しよう。ならば、本物の宮、または明治天皇になる親王は何処に行ってしまったのか。一つの可能性として示されるのは京都に多くある「寺」である。
 当時、「寺」に出家して入ることは別世界に入る事。名前も変われば、実の親兄弟とも生き別れ状態になる。親や兄の葬式にも参列する事は建前上、不可能である。(天皇家もそうだったが……。実の親でも母親は親と呼べなかった。大正天皇のように、母は皇后と信じていたという逸話が残っており、実母に会えたのは生涯でも数度っきりだったという例も……。庶民の我々から見るとなんという不自由なと思う話である)普通、そうまでするかという事もあるが、出家の可能性もある。しかし、替え玉を仕立てあげるのは困難だったろう。
 替え玉を仕立てあげるのは困難というのは、第一に、文字である。当時、文字は祐筆も代筆しただろうが、その人の手になる物しか公式では通用しなかった。その字の特徴は、今でいうパスワードの役割をした。(今のサインと同じである)いくら見かけが似ている人でも文字やしぐさまで完璧にその人を演じるのは困難である。身分ごとに髪型や言葉まで決まっていた庶民や良くて武士・公家出身の人が、いきなり、皇族になれるわけがない。当時の俳優でも無理であり、俳優は大げさに演じるから、かえってばれてしまう。(当時の俳優は舞台俳優。舞台俳優は遠くから観劇する人の為に身ぶりは大きく演じなければならない)
 和宮の場合、歌風が変わったと言うが、変わった歌風は、万葉や新古今の武家風。嫁いだ家によって変わるのでは?和歌はかなり勉強しないと詠めない。皇族なら、万葉や新古今もマスターしていないと、勤めるのは無理だろう。現に、庶民出身で先祖は誰だか解らない、私の作品をみて欲しい。まだまだ勉強足らずで下手くそだ。歌風の変化は、彼女の覚悟の表れとみた方が良い。歌風が変わっていても、実に趣深く、上手いと思う。
 結論としては、近代で記録が残っている事実だ。まさか、戦国時代の影武者じゃあるまいし、偽物を派遣したとは考えられない。二人とも、本物。和宮を派遣して、明治に即位した天皇も本物と見て良いだろう。飛んでも説も面白いが、筆跡や、性格まで変えられない。天皇家のことゆえ、強くは言えないが、まさかと思う。近代史でも幕末は資料が散逸していて、解らないことが多いが、天皇まで影武者とは思いたくもないし、また、日本国全体の信用に関わるのではないだろうか?ただ、そう言う説もあると言う事にしたい。(無責任とか、ご都合主義と突っ込まないで下さい。解らないものは解らないし、第一、事実が解っても、もみ消されそうなのは百も承知ではないか?)
参考文献等
「ウィキペティア」
書籍 小説「和宮様御留」
その他多数。

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