わだつみの歌

 国守れ 命令の下 若者が 命散らした 
 わだつみの 空に硝煙 たなびくよ 魂の虹
 最後には 天皇陛下 万歳と 言えとの令 
 若者は 従わざるを 得なかった そんな時代に したのは誰か?

 少年一人 年は十八 令状が それでも来た
 両親は 慌てて彼を 幼馴染と 結婚させた。
 ささやかに 式を挙げて 一夜のみ 契りを結び 
 国のため 働きなさいと 両親は 涙を呑んで 送り出した

 飛行機に 積まれたのは 片道の 燃料だけだ
 少年は 敵の艦船を 沈ませた 命を持って。
 最後には 新妻の名を 叫びつつ 真理、真理、と二度……
 その死の時 命令を破った 彼を誰が 咎められるか?誰にも出来ぬ

 わだつみに 消えた若武者 むなしけり 人の命は 重からざるを

注 長歌と反歌の形式です。作られたのは26世紀の設定ですが、あえて万葉の形式を
使いました。

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